日本のアニメが100周年 『鉄腕アトム』より前に作られた作品は?

日本初のアニメーション作品が制作されてから、来年で100周年。記念すべき節目を迎えることを受けて、一般社団法人 日本動画協会は3月26日(土)に「AnimeJapan 2016」のクリエイションステージにて「日本のアニメーション100周年プロジェクト」を始動すると発表した。


登壇したのは、東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員/映画室長を務める、とちぎあきら氏、株式会社アニプレックス代表取締役・植田益朗氏、株式会社サンライズ代表取締役社長・宮河恭夫氏、日本アニメーション株式会社代表取締役社長・石川和子氏、株式会社トムス・エンタテインメント上席執行役員の吉田力雄氏らプロジェクトの中核を担う代表者たち。


始めに、とちぎ氏によって日本のアニメーションの歴史が振り返られる。手塚治虫率いる虫プロダクションによって1963年に制作された『鉄腕アトム』や、宮崎駿氏にも多大な影響を与えた1958年制作の『白蛇伝』よりもはるか前に、日本のアニメーションの歴史が始まっていたと解説。


1917年に、東京・浅草で公開された幸内純一監督の『なまくら刀』は、まがい物の刀を買わされてしまった武士が試し斬りをしようとして失敗する様を描いた作品。切り紙や影絵によるアニメーションや吹き出しの表現など、さまざまな工夫が行われており、いま観ても驚きを感じられる一作となっている。


この作品のあとに台頭した切り絵アニメーションの村田安司氏、日本アニメーションの父とも呼ばれ1943年に『くもとちゅうりっぷ』を制作した政岡憲三氏、戦時中に制作された『桃太郎 海の神兵』などで高名な瀬尾光世氏といった巨匠も紹介される。現在の作品として紹介しても違和感が無い技術力の高さと、表現の豊かさが伺えるとのこと。


さらに荻野茂二氏によって1935年に制作された抽象的な実験アニメーション『AN EXPRESSION(表現)』も紹介される。日本のアニメーションは戦前からさまざまな作家によって技術や美学が醸成されてきており、原点から日本のアニメの歴史を振り返ることが、これからのアニメの100年につながるきっかけになるのでは、と語られた。

続いて、推進会議の座長である植田氏よりプロジェクト全体像のプレゼンテーションが行われた。37年前に『機動戦士ガンダム』の制作進行からキャリアをスタートさせた植田氏。アニメが100年の節目を迎えることを知り、驚いたと同時に100年間の歴史を背負っていることを感じたという。これからの100年、アニメを楽しめる世の中になるかと考えたときに危機感を覚え、業界全体が直面している問題などをオールジャパンの力で解決していく道筋を作れないかと、今回のプロジェクトの座長を引き受けたと語る。


アニメ制作の経営基盤の脆弱性や人材の問題があるも、世界的には注目されているという現状を踏まえ、アニメの可能性を広げていけるのではないかと語られる。プロジェクトには3つのコンセプトがあり、アニメの歴史を知りその系統をしっかりとしたアーカイブ・データベース化すること、宮崎駿氏のような業界を背負える人材の発掘と育成、NEXT100と題した先端技術とコラボしたイベントや、さらなる産業化のために国際的な展示をするといった活動を行うという3つのコンセプトを発表。新しい100年にアニメを楽しめるよう、痛みも覚悟して挑戦していくという決意表明がなされた。


アーカイブ・データベース化の一環として、商業アニメに限らず、さまざまなアニメ作品の歴史や価値をアカデミックにまとめ後世に残す「アニメ大全」の制作について詳細が語られる。アニメ業界のレジェンドによる100年後の未来へ向けたメッセージ、技術の継承に関しても情熱をもってまとめていくという。トークショーやイベントも実施し、子供のころからアニメを作る体験ができように教育カリキュラムにもアニメが取り上げられるようアプローチしていくことも発表された。

一連のプレゼンテーションの後、『マッハGoGoGo』、『ハクション大魔王』、『新造人間キャシャーン』、『タイムボカン』、『ヤッターマン』などの名作で監督を務めた、株式会社タツノコプロ顧問・笹川ひろし氏のゲストトークが開催。

「100年アニメが続いてきたことがビックリポンですね!」と笑顔で話す笹川氏。自らも創設にかかわったタツノコプロも55周年を迎え、手書きからPCを駆使した制作体制にかわって、作業が楽になるかと思いきやいまだにヘトヘトになりながらアニメを作っているという現場の実状を赤裸々に語られ、何とか改善していきたいと訴えていた。


また、漫画家になりたくて手塚治虫先生に原稿を送ったという笹川氏のルーツとなる中学時代のエピソードも披露。手塚先生のアシスタントになるべく上京し、漫画を描きながら東映動画でアニメを作っていたという手塚先生を間近で見ていたという、まさにアニメ史の生き字引としてのエピソードも。さらに、現在のアニメ界の巨匠・押井守監督の面接をしたという話が飛び出した。

最後にプロジェクトのロゴが披露され、記者会見は終了となった。アニメのこれまでとこれからを担うプロジェクトに注目したい。

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