藤井聡太七段「天才」から「トップ棋士」へ 勝利した久保利明九段「もうトップ棋士だと思って準備した」

 将棋の藤井聡太七段(16)を伝える上で、いよいよ「天才」という2文字を“卒業”せざるを得ない状況になってきた。3月11日、棋聖戦二次予選で藤井七段は、タイトル通算7期を誇る実力者・久保利明九段(43)に敗れ、がっくりとうなだれた。ただ、直後のインタビューで久保九段から出た言葉は「もうトップ棋士だと思って、こっちは準備してということをやっていますんで。そのつもりで今日も準備してきました」というもの。もはや扱いは新たに出てきた「天才」ではなく、「トップ棋士」だった。

 この日の対局は、藤井七段にとっても大きな一局だった。本人は「意識しない」と語る年度最高勝率。ただ、周囲は中原誠十六世名人(71)の記録を51年ぶりに更新するかもしれないだけに、大きな注目が集まった。敗れたことで、記録更新は難しくなったが、それでも42勝8敗、勝率.840というものが、驚異的なものであることに変わりはない。さらに、実質的なデビュー年度となった2017年度よりも、対戦相手がランクアップする中で、昨年度(勝率.8356)を超えているという事実、さらにトップレベルになるほど差が出るとされる先手・後手で、後手番でもほぼ勝率が変わらない事実が、さらにすさまじさを加えている。

 四段昇段を決めた若手棋士が、デビュー年度に大活躍するのは、時折起こることだ。ただ、藤井七段のように2年連続で大活躍するとなれば、話は別。さらには全棋士参加の早指し棋戦、朝日杯将棋オープン戦で連覇を飾ったとなれば、それはすでに「天才」としての偉業ではなく、紛れもなく「実力者」の出す結果だ。公式戦初対局の感想を求められた久保九段は「非公式戦で1局指して、その時は負けているんですけど、もうトップ棋士だと思って、こっちは準備してということをやっていますんで。そのつもりで今日も準備してきました」と語った。初手合いであっても「どんな将棋を指してくるのか楽しみ」といった、先輩棋士の余裕を見せることなど、少しもない。他の棋士と同じく、タイトルを目指して競い合う「ライバル」として認定され始めている。

 藤井七段は、将棋界の中でも最も対局を「見られている」棋士であることに間違いはない。実際、テレビ対局はもちろんのこと、その他の棋戦でも、その全てがニコニコ生放送、囲碁将棋チャンネル、AbemaTVなど、何かしらの放送媒体で中継されている。棋譜だけではない情報も全局で見られている棋士、という稀有な存在だ。そんな丸裸な状況でも勝ち続けているからこそ、他の棋士も全ての情報を揃えた上で、必勝を期して盤に向かう。


 2018年度も残りわずか。2019年度、目標とするタイトル挑戦、さらに獲得はあるのか。現在「七段」という肩書きが、タイトル名に変わる時、藤井七段には「天才」に変わる異名がついているかもしれない。


(C)AbemaTV


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