“美大の最高峰”東京藝術大学に満点合格した鬼才 磯村暖が描く“ニュースのアート”

 東京藝術大学に“満点”で入学し、社会問題を独自の目線で描くアーティストがいる。AbemaTV『けやきヒルズ』では、日本から世界へ羽ばたこうとする彼の世界に迫った。

 東京・立川市の住宅街に自宅兼アトリエを構える、美術家の磯村暖さん、26歳。青い髪が印象的だ。庭には奇怪な作品が所狭しと並び、近所の人に「あんた宗教やってんの?」と言われる事もある。そんな磯村さんは日本最高峰の東京藝術大学の絵画科に満点入学した経歴を持つが、それまで美術の勉強はほとんどしてこなかったという、まさに“鬼才”だ。

 「ずっと美術家になりたいという気持ちがあって、でも小さい頃から親に反対されていた。父が医者だったということもあり、医者以外の道はずっと否定され続けていた。高校3年の12月に意を決して『こんな人生なら死んだ方がマシなんじゃないか…』くらいまでの話を(親に)して、『そこまで言うなら』と」

 親を説得し東京藝大へ入学した磯村さん。在学時の2015年には、藝大で名誉となる上野芸友賞を受賞した。そして、卒業後は油絵だけではなく彫刻や様々な美術作品を制作。なぜ今、磯村さんの作品が注目されるのか。

 「これはタイのお寺にある、地獄を表した彫刻からインスピレーションを受けている」と紹介したのは、地獄の亡者の彫刻。仏教美術が盛んなタイで出会ったものを自分流にアレンジしているといい、「地獄にいるということは罪を犯しているが、罪は時代や国によって定義が曖昧。例えば、この作品は『国籍がない罪で地獄に落ちた』とタイ語で書いているが、事実今そういう理由で弾圧を受けている人がいる。それに対し差別をやめろ、人権を侵害するなと地獄の亡者自らデモをしている様子」と説明する。

 また、「不法入国の罪で地獄に落ちた」と書いてある彫刻については「イメージとしては、ロヒンギャというミャンマーの難民の人たち。ボートに乗ってタイに逃げてきたりするが、難民条約に批准していないから、彼らが逃げてきたところで不法入国者としてしか扱われない。でも、国が違えば彼らは保護の対象であって、受け入れられてちゃんと安定した生活ができる」と国によって扱いが大きく変わってしまう難民たちを表現している。

 磯村さんはこれらの彫刻で「罪とは何なのか?」ということを、時には社会情勢を反映させながら語りかけているのだ。ではなぜ、そのようなコンセプトの作品を作り始めたのか。


 「作るようになったのは2016年から。イギリスのEU離脱の可決が決まって、最初に思い浮かんだのが日本に住んでいる移民の友達のことだった。もしかしたら悪影響を受ける人たち。だから社会的テーマを作ろうというわけでなくて、僕の頭の中の意識を閉める割合がどうしても増えてしまった」

 2016年にイギリスのEU離脱が可決され、翌年1月にはアメリカでトランプ政権が誕生。磯村さんは「世界が閉塞的になっているのではないか」と敏感に世界の動きを感じ不安になったという。そこには磯村さん自身のある体験があった。


 不登校で引きこもっていた磯村さんは、中学1年生から単身オーストラリアに留学。楽しい日々を送るも、そこで感じたのが人種差別だった。

 「アジア人というだけで容姿やいろいろなことを言われたり、人種差別的なことも学校で受けたりした。中学3年生の時に日本に帰ってきたけれど、自分が人種差別受けた後だとそういうのが敏感に受け取れるようになって、日本にも人種差別はあるなと」


 差別や迫害について「他人事ではない」と深く考えるようになった磯村さん。最近特に気になっているというのが「LGBTQ」の問題だ。昨年の個展のテーマが「LGBTQ」だったといい、アトリエの彫刻の中には「同性愛の罪で地獄に落ちた」という題材もある。

 そんななか日本では去年、杉田水脈議員が「『LGBT』には生産性がない」などと雑誌に寄稿し、社会問題となった。LGBTQを伝える理由について磯村さんは「自分自身がセクシャルマイノリティとカテゴライズされるタイプの人間。思春期のころから考えることはいっぱいあった」という。


 差別を経験するも、乗り越えようとしてきた磯村さんだからこそ社会問題と美術を融合できる。そして今制作しているのは、絵が描いてあるキャンバスの上から水を流し、絵の具を水に溶け出させ、さらにその水をもう一度上から流すことで循環させる不思議な作品。

 「絵の一部、絵の具の粒子が水によって流されて消えているが、本当は消えているのではなくただ移動しているだけ。この絵の具の粒子はもしかしたら人の移動だとか物質の移動だとか、文化の移動に通じているかもしれない。国からいなくなった人は消えたのではなくて、どこかに行っているのではないか。与える影響は我々の想像では追えない。そういうものをある種、肯定的に捉えた作品」


 絵の具の粒子を移民などに例え、「世界は様々な色が混ざり合ってまわり続けている」ことを磯村さんらしく教えている。

 そんな磯村さんの「夢」とは。


 「僕は日本で一番になりたいけど、世界で一番にもなりたい。今年は欧米とかに行ってみたいな。自分のやっているアート活動の位置感を見てみたい」

 今回、磯村さんを取材したフリーアナウンサーの柴田阿弥は「とにかく優しい男の子という感じと、すごく繊細だということを感じた。だからこそ社会問題を題材にしているのだと思う。取材している時以外にも、美術や家族について細かいところまでたくさん話して教えてくれた。まるでお友達のようで、人に愛される、憎めない印象を受けた」とコメント。続けて、「不登校だったり留学先で人種差別を受けたりという話を聞いていくなかで、繊細だからこそ生きにくいだろうなと思いながらも、それを美術で表現することができるのが磯村さんの力なんだと。美術大学に行くとなった時も家庭で大変だったそうだが、自分らしく生きることの大切さを体現している人だと思う」と述べた。


 なお、磯村さんの作品は3月7日から10日まで東京国際フォーラムで開催される「アートフェア東京2019」(一部無料で入場可能)に展示される。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)


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