旅券返納命令は羽田空港でFAXを渡され…ジャーナリストの常岡浩介氏が経緯説明、政府の対応に疑問符も

 今までウクライナやイラクなどの紛争地域で多数の取材を続けてきた、フリージャーナリストの常岡浩介氏。常岡氏は今回、中東のイエメンで飢餓問題などの取材を予定していたが、政府からパスポートの返納命令を受け渡航を禁じられた。


 常岡氏は、現地で国連世界食糧計画(WFP)や国境なき医師団(MSF)で活動している日本人スタッフなどに取材をする予定で、アポイントも取れ、去年12月には現地スタッフを通してイエメンのビザも取得できていたという。


 常岡氏は今年1月、オマーンを経由して陸路でイエメン入りを計画していたところ、オマーンに到着したところで入国を拒否され強制送還された。今月2日には、改めてカタールとスーダンを経由し空路でイエメン入りを目指していたが、羽田空港の出国審査場の自動化ゲートを通れず、そこではじめてパスポートの返納命令が出ていたことを知らされた。

 去年10月、シリアで拘束されていた安田純平氏が解放された時に議論となった、命の安全と取材の自由。5日放送のAbemaTV『けやきヒルズ』では、常岡氏本人に話を聞いた。


■今回の旅券返納命令は「デタラメな運用」

 羽田空港で旅券返納命令が出されている事を知った時の状況について、常岡氏は次のように話す。


 「出国審査場に着くまでは何の問題もないと思っていたが、パスポートを機械に通そうとしたら『このパスポートは登録されていない』と表示された。その場にいた入管の人たちも機械の故障かと尽力してくれたが、問い合わせた結果パスポートが無効化され私に対して旅券返納命令が出ていることがわかった。返納命令は羽田空港で、職員から外務省からのFAXを渡される形で初めて自分に対して執行されていることを知った。事前に返納命令は受けていなくて、さらに日付のところは手書きになっており、まるで出発日に合わせて命令が出されたようだった。購入した旅券は全て無駄になってしまった」

 常岡氏は1月にオマーンに入国を拒否されており、外務省からの旅券返納命令書では「オマーンにおいて入国を拒否され、同国に施行されている法規により入国を禁止されているため」といった理由が記載されている。これに常岡氏は「確かに旅券法では、どこかの国に入国を拒否された人に対して、外務大臣はパスポートを発行しないことができると書かれている」と理解を示す一方、今回はオマーンを経由する予定ではなかったことから「入国拒否をされた国に迷惑をかけないように、日本側がパスポートを返納させる趣旨の法律。オマーンに入ろうとしていないのに返納命令が出るのは、デタラメな運用ではないか。これが当たり前だとしたら、1カ国でも入国を拒否された場合に日本国民を国内に閉じ込めるということが可能になってしまう」と主張した。


 また、オマーンで入国を拒否された際に不審に思うことがあったといい、「オマーン入管の友人に『ブラックリストに載っていないから入れる』という言質をもらってから出発している。それが実際に行ってみたら入れなかった。その友人に問い合わせたところ、パスポートが入管から警察に渡されていると。さらに、日本の大使館が情報を提供して警察が動いたという説明で、その時は本当なのかと疑っていたが、強制送還される際の飛行機に乗る時にスリランカ航空の人が『なぜ日本大使館の人がここに来ているのか』と聞いてきた。日本大使館は邦人保護のため、捕まった日本人が安全な状況であるかや健康状態を確認することはあるが、その場合は本人に聞く。しかし、私に一声もかけず遠くから見送ったということで、非常におかしな行動だった」と説明。常岡氏はイエメンに行くことをなるべく秘密にしていたというが、出発の前日に警察から電話がかかってきたり、妻にも常岡氏の所在を確認するような聞き取りがあったりしたという。


■安田純平氏の解放でも巻き起こった“自己責任論”

 過去にもパスポートの返納命令を出されたのが、フリーカメラマンの杉本祐一氏。2015年、シリア難民キャンプの取材を計画していたが、安全確保を理由に外務省から旅券返納命令を受ける。杉本氏は取材の自由を侵害されたことなどを理由に返納命令取り消しを求め提訴していたが去年、最高裁での敗訴が確定した。

 旅券返納命令書には「不服があるときは、処分の取り消しの訴えを提起することができる」と書かれており、常岡氏も弁護士に相談しているというが、「最高裁で敗訴したことで強力な判例となり、今後同じような裁判を起こしても負けることはほぼ確定している。今回、運用がおかしいという部分を訴えるべきなのか、裁判での決着は諦めて国際的な組織に助けを求めるべきなのか、検討している段階。次のことは決まっていない」と明かす。


 報道の自由や渡航の自由がある一方で、紛争地帯を取材するようなジャーナリストにつきまとうのが、身柄拘束の可能性やそれによる身代金要求などのリスク。シリアで拘束されていた安田さんが解放された際にも、“自己責任”をめぐり議論が巻き起こった。

 常岡氏はイエメン取材の背景を「確かにイエメンは退避勧告が出ていて、過去に人質事件も起こったことがある。ただ、現在も国連などが現地で活動を続けているし、国境なき医師団として日本人2人も活動している。シリアなどとは違って限られた危険な地域を避けることは可能で、ホデイダという地域では停戦が成立した。そういったこともあって取材を決意した。戦争そのものよりも、広範で起こっている飢餓・食糧不足の現状を取材させてもらう目的だった」としつつ、「国連世界食糧計画にアポを入れて、資料もどっさりもらった。私から取材依頼を出したが非常に歓迎してくれて、『いま日本のジャーナリストが全く入っていないんだ』と。『人口の半分が飢餓スレスレの状態で、国連がなんとか食い止めているが、国際社会の注目度があまりにも低く予算が足りていない。このままだと破綻する。伝える必要性が高いのだ』と国連側から説得されたような状態」と説明。


 そのうえで、“自己責任論”については「それは当然の考え方だと思う。そこで私自身が身体的な被害を受けたところで、誰かに責任は求めない。ただ、人質事件が起こって『迷惑だから行くな』という発想は日本以外の国には存在しない。それは取材の必要性、伝えることがどれだけ重要かがそれぞれの国で常識として認識されているから。日本にそれが欠如しているのは不思議な状況」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)


常岡浩介氏の取材映像&スタジオトークの模様はこちら(8:15~)

続きを見る

0コメント

  • 1000 / 1000