まちづくりについて政治家と市民がアプリ上で対話、選挙離れを食い止め、国政レベルにまで広がるか?

 4月に統一地方選挙が実施され、夏の参院選では約30年ぶりとなる衆参ダブル選の噂まで飛び交う"選挙イヤー"の2019年。一方、日本の選挙は投票率の低下、若者の政治離れ、開票時の費用など様々な問題を抱えている。


 そんな現状に、若者の力で風穴を開けようとする大学生がいる。市民と政治家のコミュニティをつくるスマホアプリ「PoliPoli」を運営する伊藤和真氏(20)だ。

 もともとインターネットサービスが好きで、趣味で俳句のアプリを作ったり、ベンチャーキャピタルで勉強したりしていたという伊藤氏。18歳の頃、投票に行って「政治がイケてねーなと」感じ、簡単に政治に参加できるアプリを作ろうと考えたのだという。自民党の小泉進次郎衆議院議員が提唱、国会議員の間でも注目されているという、政治(Politics)と技術(Technology)を掛け合わせた造語「ポリテック」のサービスだ。

 そして伊藤氏は昨年7月、「PoliPoli」としてサービスを開始。政治的な発言が荒れやすいことを考慮、実名制にすることで議論の質と精度をあげる施策を講じた。その結果、ユーザ数は延べ1万人を突破。政治家の利用者も250人を超えているという。

 「PoliPoli」に投資した中には、家入一真氏が率いる50億円の規模のベンチャー投資ファンド「NOW」がある。ある投資家の男性は、「アプリを使って政治のシステムを変えるムーブメントを起こしたい」と話す伊藤さんに、「新しいテクノロジーの力とか、新しい風がないところで変革を起こそうとしているところにすごい可能性を感じた」と期待を込める。

 「若者向けに、デザインもポップにしている。投票に行くべきだと押し付けられると反発してしまうが、楽しく政治の課題を議論しあって、それが政治家に伝わって解決できる入り口になれば面白い。外交問題などよりも、身近なまちづくりに関する議論ならみんな関心があり、入りやすい。例えば渋谷区で喫煙所が変な位置にあるといった課題を投稿すると共感が集まる。そこにアプリに登録している政治家さんを招待し、議論に参加してもらう。そうやってゲーム感覚で楽しくまちづくりに参加してもらう。政治サービスというと誹謗中傷で荒れるといった問題があるが、PoliPoliはまちづくりという文脈で政治を捉えているので、基本的に実名制。良いことを言ったり、プロジェクトを提言したり、いいね!が集まったりとするとスコアが高まるので、ゲーム感覚で参加できる」。

 実際、「PoliPoli」での議論を見た渋谷区議が、議題として渋谷駅周辺の喫煙所の問題を取り上げたのだという。「学校の政治教育として利用するという話も来ている。PoliPoli上で擬似的に陳情や請願を提案するというアイデアもあがっている。政治は行政の透明性と効率化が大事だと思う。政治家がどういう人なのかが動画で見ることができるようになれば、ただ言われたことをやっているだけのだ、といったこともわかると思う。そうすれば政治イノベーションが起きるし、世の中に与える影響もすごく大きいと思う」。


 「PoliPoli」を使ったことがある作家の乙武洋匡氏は「僕は"政治家が有権者に何を求めているのかわからない"と問題提起した。すると、早速何名かの政治家の方が答えてくださった。自民党の平将明議員も"若くてフレッシュに見えるけれども政策がスカスカだったり、いかにも悪人顔の政治家が政策通だったりする。ポスターや第一印象で選ばずきちんと政策を基に選んでほしい"と回答してくださった」と、政治家から直接コメントがもらえることを新鮮に感じているようだ。

 自民党でネットメディア局長も務めた平将明衆議院議員は「Twitterはすごく荒れるので、議員たちも敬遠しがち。とはいえ若い層にはリーチしたい。そこで安倍総理のLINEスタンプを配布したこともあったが、分析してみると年齢層が高かった(笑)。ボロクソに言われると傷つくので、荒れてもそこそこで収まるのがありがたいし、若い層が集まっているというサービスは価値が高い」と話す。


 「こういうサービスは、私のような新しい物好きだけが最初に食いつくし、やらない人はずっとやらない。それでも社会全体がデジタル化してきた時に、やらない人の力が弱まって選挙に落ち、新陳代謝が起きていくと思う。たとえば最近では公開討論会のネット中継も当たり前になり、私の選挙区ですら5000人も視聴していた。結局、党の政策を立て板に水のように喋れたところで、議論になった時に全然答えられない候補もいるし、それは名前の連呼や写真だけは分からない。だから現職が出てこないのか、みたいな論調がマスコミにも出てくるようになったのは良いことだと思う。PoliPoliが成功するためには、ルールを変えた=立法にまで持っていった、というような成功事例をいかに作るかだと思う」。

 一方、ネット選挙や政治の情報発信について研究を行っている東京工業大学の西田亮介准教授は「政治とは生活に関係する営みだということを認識した上で関与することが重要だと思う。例えば国立大学の学費は文科省令で決まっているので、政治家が中心になり、国会で多数派を形成しなければ変えられない可能性が高い。起業で解決できる問題もあるけれども、政治でしか解決できない問題も多いということを若い世代にはもっと認識してほしい」と指摘する。


 その上で、「ポリテックで政治を変える取り組みはこれまでも定期的に現れてきたが、その度に盛り上がらないまま消えてしまっていた。若い人が政治に参画していないという意味において、問題意識を持ってサービスを作ることはとても大事だ。その一方、ユーザ数がまだ延べ1万人ということなので、国政レベルの選挙で言えばまだ小さい。PoliPoliが一気にブレークスルーすればいいと思うが、過去のサービスとの大きな違いをなかなか見出せないことが心配点ではある。ポイントがついてしまうとなると、平さんのようにネットのリテラシーのある政治家の方なら良いが、そうでない方の場合、むしろ参加しないほうがいいんじゃないかというマイナスのインセンティブも働いてしまうかもしれない」と課題も指摘した。


 伊藤氏は「投票率が下がった理由の一つに、インターネットがあると思っている。誰でもコンテンツが作れ、発信できてしまうので、政治に頼らなくてもいいと無関心になったんだと思う。でも、政治は世の中の根本だし、その政治と市民を近づけるのはインターネットだと思っている。沖縄県知事選挙のときにはデニー知事に候補者として色々答えていただいた。沖縄は面白いのでこれからも仕掛けていきたいし、参院選や統一地方選挙に向け、サービスの質を高めていきたい。コミュニティサービスなので、数年間いかに頑張るかが大事かと思う。投資家の方々もそこに注目している。セキュリティをしっかりして、政治資金規正法に引っかからないようにしっかり対策すれば、ネットの方が楽に政治献金ができる。サービス上で1回150円ほどの単位でできるようになれば、政治家にとっても参加のインセンティブになり、面白いと思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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