「トランプ氏と文氏、理想のコンビがいる今しかチャンスはない」 非核化プロセス、第2回米朝会談はいつ?

 26日、韓国と北朝鮮を鉄道でつなげる、鉄道・道路連結事業の着工式が北朝鮮の開城で行われた。韓国からは趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相、北朝鮮からは李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員長が出席。その他に中国やロシアの政府高官らも招かれ、レール連結や道路標識の除幕のセレモニーが行われた。


 4月27日に行われた南北首脳会談の「板門店宣言」に盛り込まれていたこの連結事業。着工式によって南北融和が加速するかと思いきや、現時点で着工時期は未定。工事には北朝鮮への資材搬入が必要だが、これが国連安保理による経済制裁に抵触するため、クリアされなければ工事自体が始められない。着工式はあくまでも南北融和のムードづくり。カギを握るのは、やはり朝鮮半島の非核化をめぐる米朝関係なのか。

 5月25日、北朝鮮は豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破し、非核化への意欲をアピールした。6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談では、アメリカのトランプ大統領も北朝鮮の金正恩委員長も友好ムード一色で、米朝関係の進展が期待された。しかし、それ以降大きな動きはなく、北朝鮮をめぐるニュースも先細りになった印象だ。


 今月24日、トランプ大統領は「クリスマス・イブに我が北朝鮮担当チームから事態は順調だという報告を受けた。金正恩委員長との次の首脳会談を楽しみにしている」とツイート。米朝関係が順調であることを強調したが、実際のところはどうなっているのか。

 9月25日、ニューヨークの国連本部でトランプ大統領は「もうミサイルもロケットもあちこちに飛ばされることはなくなったし、核実験も停止している。一部の軍事施設は解体もされている」と北朝鮮の姿勢を評価。11月8日には、金委員長との会談時期についての質問に「来年のどこかだ。来年の早い時期になる」と示唆していた。


 しかし、11月に予定されていたアメリカのポンペオ国務長官と北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長との会談は延期。米朝首脳会談後も、アメリカの研究グループ「38ノース」が、衛星画像などから北朝鮮の核施設でのインフラ整備がまだ続いていると発表。反対にミサイル発射場の解体が進んでいるとの報道もあり、核・ミサイル問題の進捗は不透明な状態が続いている。

 さらに、今月に入って朝鮮中央通信は「アメリカが朝鮮半島の非核化を北朝鮮の非核化にすり替えている」と、米朝関係がこう着状態にあると明言。その原因が敵視政策を続けるアメリカにあると批判した。


 また、アメリカ国内でも北朝鮮の非核化などの問題を巡り、トランプ大統領と対立していたマティス国防長官の退任が決定した。2016年に北朝鮮で拘束され、2017年に昏睡状態で死亡したアメリカ人大学生のオットー・ワームビアさんの遺族が起こした裁判では、ワシントンの連邦地裁が北朝鮮に対して約550億円の支払いを命じるなど、米朝関係に影を落とす事態も起こっている。


 こう着の米朝関係…最悪のシナリオとは? 26日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、共同通信社で客員論説委員を務める平井久志氏と笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄氏を交え議論した。


 開城で行われた着工式について、平井氏は「単なるセレモニー。鉄道や道路が連結するためには北朝鮮側の線路の整備が必要で、国連の制裁がある以上それはできない。合意をした時から、実際の連結や運航が目的ではなくて、南北の意思を内外に示すセレモニーという位置づけだった」との見方を示す。

 平井氏は10月に韓国を訪れた際に驚くことがあったといい、「南北の首脳夫妻が手を取り合っている写真がソウル市庁舎の壁面に大きく掲げられていて、それに『ソウル市も共にあります』という標語がかかっていた。韓国には国家保安法という北朝鮮を敵地とする法律が残っているのに、ソウルの目抜き通りで敵同士が手を取り合っている写真がこんなに大きく掲げられているのは驚いた。それほど韓国が変わっているということだろう」と説明。

 また、着工式に物理的な進展はないものの無意味ではないとし、「軍事的な緊張緩和は相当進んでいる。非武装地帯沿いにある哨所を11カ所爆破したり、共同警備区域の中を被武装化させたりしている。これまで観光客は38度線の向こう側に行けなかったが、おそらく来年から共同警備区域の中では観光客も超えることができるようになる。ジーンズの着用も、北朝鮮国内では政治宣伝に利用されるということで禁止されていたが、できるようになるだろう。そういう変化は出ている」と述べた。


■金委員長のソウル訪問、第2回米朝首脳会談も実現せず

 去年、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験や核実験を進めて緊張感が高まっていたが、今年1月から一転して対話ムードになった。1月には金委員長が平昌オリンピックへの参加を表明し、2月には金与正氏らがオリンピック開会式に出席。3月は中朝首脳会談で金委員長が初外遊、4月は南北首脳会談で「板門店宣言」、5月には中朝首脳会談、北朝鮮が豊渓里実験場を爆破し、南北首脳会談が行われた。6月には米朝首脳会談、中朝首脳会談が開催。9月には南北首脳会談の「平壌共同宣言」で金委員長が近くソウルを訪問する予定となっていたが、これはまだ実現していない。


 金委員長のソウル訪問が実現していない理由について、平井氏は「ある意味当然だと思う。金正恩氏がソウルに行くこと自体に意味はあるが、韓国側はその際にお土産を渡さないといけない。南北の経済協力はアメリカが経済制裁を緩和しない限りできないことで、米朝間の交渉の進展がないと金委員長は韓国に行くメリットが少ない。第2回米朝会議を踏まえてソウル訪問を考えたと思うので、会談が先延ばしになっている状態で訪問しても意味がないということだろう」との見方を示す。

 第2回米朝首脳会談は、11月のアメリカ中間選挙の前に行われるとされていたが実現しなかった。その理由として渡部氏は、「中間選挙前に会談を実現して勢いをつけたかったが、まず1つ北朝鮮側に進展がなかった。それともう1つ、トランプ大統領がそれ以外の、例えばNAFTAの見直しなどでうまく合意した。そんな中北朝鮮と会談して、マイナスになることをして批判されるくらいなら、と無理は避けたいということだろう。とはいえ、いざという時、話題を変えたい時に狙ってはいると思う」と推測した。


 トランプ大統領の独断で状況が動く中、北朝鮮はどのようなカードを切ることができるのか。渡部氏は「例えば在韓米軍の縮小や撤退。アメリカはシリア撤退を決め、在韓米軍の縮小や撤退も現実味を帯びている。北朝鮮にとっては望むことだし、それをトランプ大統領に持ちかけるということは十分にあり得る」とする。

 では、米朝の“仲介者”である韓国の文在寅大統領は今後どのような役割を担うのか。平井氏は「朝鮮半島の運転席にいて状況を動かすのは当事者の韓国だと言っているが、残念ながら本当の当事者はアメリカと北朝鮮。韓国は仲介者でしかない。ただ、北朝鮮にとってみればトランプ氏と文氏という理想のコンビがいるこの間しかチャンスはない。アメリカでトランプ氏以外の人が大統領になったらこの問題には参加できない。北朝鮮は2人の任期内に国交正常化や制裁解除実現といった星を取りたいと考えている。これを逃せば大きなチャンスはしばらくないという危機感にいると思う」との見方を示した。


■北朝鮮の“非核化プロセス”はいつ動く?

 岡崎研究所の村野将氏は、朝鮮半島非核化のロードマップとして(1)北朝鮮による核関連リストの申告、(2)情報分析・申告状況の評価、(3)核兵器国による開発済み核弾頭の確保・解体、(4)国際機関(IAEA)等による関連施設の査察・検証、の流れをあげている。


 しかし、現状は第1段階にも及んでいない。村野氏は達成に「少なくとも5~10年はかかるだろう」と推測していたが、(1)の北朝鮮による核関連リスト申告の交渉に関して「水面下でやっているかもしれないが何らかの合意に達したという情報は皆無」として、現時点での評価をゼロとした。

 一方、平井氏はこのロードマップに否定的な見方を示し、「北朝鮮の場合は普通のロードマップはあり得ないと思う。和解していない状態で核を申告することは、交渉が決裂した場合に攻撃目標を教えるのと同じこと。完全な核放棄を事前に決定している、あるいは戦争に負けた国ならばこのロードマップはあり得るが、北朝鮮のように独裁体制を維持して、保障を勝ち取るための交渉をしようとしている場合は、このロードマップのようにいくというのは甘すぎると思う」と述べる。


 また、非核化プロセスの期限がない中では「周辺国家のトップの任期がポイントになる」と指摘。「トランプ氏が退任すればこのゲームは終わる。北朝鮮は非核化するのではなくて、トランプ政権の間に星を取ろうとしている。しかし、北朝鮮もタダでは取れないと思っていて、非核化をある程度進めないと制裁解除や国交正常化はないと思っている。制裁を解除して経済発展をしたいという欲求が北朝鮮側にあるので、ある程度の対価を出す気持ちはある。しかし、それが完全な非核化かは疑問だ」とした。


 北朝鮮は人権問題でも国際的に批判を浴びているが、日本の拉致問題解決は1つのカードになりうるのか。渡部氏は「あまりならない。拉致問題を厳しく言い続けることは大切だが、北朝鮮が一番怖いと思っているのはアメリカ。そこでしか動かない。ただ、その先に経済発展に舵を切れば日本が入る余地がある。そこに近づけるように動きを見ながら協力するというのが一番だと思う。実はロシアも中国もお金はなくて、日本に期待している」と述べた。


■第2回米朝首脳会談はいつ?

 トランプ大統領は12月1日の記者会見で記者団に「2回目の米朝首脳会談を来年の1月か2月に行う見通しで、場所は3カ所を検討している」と述べ、24日のツイートでは「金委員長との次回首脳会談が楽しみだ」と発言している。2回目の米朝首脳会談があるとすればどのタイミングが考えられるのだろうか。

 平井氏は「1月か2月だと思う。3月は米韓合同軍事演習が行われる可能性が高く、さすがにその時期にはできないとなると早めに設定する必要がある。アメリカも次の議会が始まって、下院で民主党が多数派になれば内政問題も忙しくなる。だから、1月か2月までに第2回首脳会談のための実務協議がどの程度進むのか、それを象徴する言葉が1月の金委員長の新年の辞に出るかがポイント。そして、6月の米朝首脳会談1周年までに第2回首脳会談ができなければ、米朝交渉を進めるという空気が下がってくるだろう。次の大きな山場は、トランプ大統領の本選挙の際にお互いがどういうビッグディールをやるかということ。アメリカも北朝鮮もお互いの利益のために、3月の合同軍事演習の前に首脳会談を実施するという意欲はあるとは思う」と推測する。


 一方、渡部氏は“ワイルドカード”として「トランプ大統領がもっと追い詰められるケース。その時はこのスケジュールと関係なく行う可能性がある。誰もわからない」とした。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


スタジオの議論の模様は期間限定で無料配信中

続きを見る

0コメント

  • 1000 / 1000