「ゴーン容疑者の周りの外国人はみんな逃げていく」保釈されたケリー被告はどう動くのか?

 カルロス・ゴーン容疑者とともに2015年までの5年間に有価証券報告書に虚偽の記載をした疑いで逮捕、その後起訴されたグレッグ・ケリー被告。勾留から37日目を迎えた25日、東京地裁は保釈決定を不服とする東京地検特捜部の準抗告を退けた。ケリー被告は保釈保証金7000万円を支払い、同日夜に保釈された。


 一方のゴーン容疑者は、私的な投資の損失およそ18億5000万円を含む契約を日産に付け替えたなどして21日、特別背任の疑いで再逮捕されている。その後の関係者への取材で、この付け替えはゴーン容疑者から取引先の新生銀行に提案されていたことが分かった。銀行側はこの提案を日産の取締役会で決議するよう求めたが、ゴーン容疑者は当初、これを拒否。最終的には契約の詳細を伏せて、日産の取締役会で諮ったとみられている。

 ゴーン容疑者の身柄については23日、東京地裁は検察側が求めた10日間の勾留を認める決定を下していて、勾留期間は年明けの1月1日までとなっている。


 国内外のメディアが注目する中、キーマンとなる“腹心”ケリー被告の保釈でゴーン事件はどう動くのか。25日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士と経済ジャーナリストの井上久男氏に見解を聞いた。


■ケリー被告の保釈条件のポイントは

 ケリー被告の保釈条件は、(1)定められた国内の住居に住まなければならない、(2)海外への渡航禁止、(3)3日以上の旅行の際は裁判所の事前許可が必要、(4)日産関係者に接触してはいけない、というもの。


 これらの条件のポイントとして高井弁護士は「まず(1)から(3)は逃走を防止するためのもので、(4)は罪証隠滅を防ぐためのもの。日産関係者に接触してはいけないというのが抽象的な条件だとすると、どこまでが関係者か分からないのでケリー被告側はなかなか難しい。考えようによっては、日産の株主であるルノーの社員も関係者ということになりかねない。接触というのは、当然電話もメールもダメ。ただ、弁護人を介してならばいいという場合もあり、ケリー被告が弁護人に『誰それにこういう話をしたい』と頼んで、弁護人がその範囲なら問題ないと判断すれば連絡する。そういうふうに間接的に意思の連絡が行われることがあるが、弁護人がフィルターとなって、罪証隠滅工作になるようなことは防ぐ前提になっている」と説明する。

 保釈保証金とは、裁判所が被告に対し、保釈時の条件に違反させないように納付させるお金のこと。この条件とは、「証拠隠滅をしない」「逃げ出さない」「裁判を欠席しない」といったものだ。保証金の決定基準は「事件の重大性」「被告人の経済力」などで、裁判が問題なく終われば有罪無罪に関わらず全額返還される。保釈保証金の事例としては、2005年・浅田満氏(ハンナン牛肉偽装事件)の20億円、1993年・許永中氏(イトマン事件)の6億円(逃亡のため全額没収)、2007年・堀江貴文氏(ライブドア事件)の3億円(1審判決後5億円に増額、さらに高裁判決後6億円に増額)など。一般の刑事事件では150円~300万円程度だという。

 高井弁護士は「罪証隠滅または逃走を防ぐためのものなので、7000万円を取り上げられたら痛いなと思われないといけない。当然、被告人の経済力がひとつの基準になる。事件が重大であればあるほど、罪証隠滅も逃走もしたくなるので、事件の重大性も基準になる」と述べた。


■ゴーン容疑者の“腹心”ケリー被告の人物像

 ケリー被告とは一体どのような人物なのか。現在62歳のケリー被告は、アメリカの大学を卒業後、弁護士として活動。30年前から日産の社員となり、法律の専門家、人事のプロとして活躍した。2008年にゴーン容疑者に見出され、腹心として社内で強い影響力を持っていたとされている。自宅はアメリカのテネシー州で、来日は3、4カ月に1回。脊柱管狭窄症を患っているともされている。

 ケリー被告の経歴について井上氏は「日産のアメリカ本社で法務や人事を担当していたので、アメリカでのことは隅から隅まで知っていると言っていいだろう。日産の横浜本社にはほとんど来ないので、一般の社員でケリー被告を知っている人はほとんどいない。逮捕された時も『あの人、誰だっけ』という程度。ただ、ゴーン容疑者周りのことをやっていたので、非常に力があった。2008年に日産本体の執行役員になっているが、それまではずっとアメリカの生え抜き。当時、ロサンゼルスからテネシーに本社が移る時に人が多く辞めたが、そこでの人事の対応がゴーン容疑者の目に止まって、日本に引き上げられた可能性が高い。また、よく言われるのは牧場経営をしていると。テネシー州は緑が豊かで、普段はのんびりした生活をしていたらしい」と説明する。


 ケリー被告の保釈について、一部ではテネシー州のベテラン議員に協力を求めたということが報じられている。上智大学の前嶋和弘教授は「地元議員に協力を依頼することはよくある。依頼を受け、国務省への働きかけを行った。駐日大使館の協力が(保釈に)影響を及ぼした可能性もある」との見方を示す。一方、高井弁護士はこれを否定し、「大使館の協力が影響を及ぼした可能性はないと確信している。日本の裁判官の独立は思われているよりもしっかりしている。そこは信頼していいと思う。ケリー被告については元々、保釈になって当たり前の事件」と述べた。

 なぜケリー被告は保釈され、ゴーン容疑者は保釈されないのか。高井弁護士は、ゴーン容疑者の特別背任は「個人的な容疑」だとし、「少なくとも、ケリー被告が関与したことを立証するに足る証拠がないということ。私は単に証拠がないだけではなくて、実態的にも関与していなかったと思う」との見方を示す。


 そのゴーン容疑者の特別背任容疑が認められるかについては、「今まで裁判例のないところまで踏み込んでいるので、成立する可能性もあり、成立しない可能性もある。やってみないと分からない。いずれにしても、しっかりとした公判をやって頂いて、どういう結論であれ、将来同じような事例の先行判例になるようないい裁判をやってほしいと思う」と述べた。

 さらに、今回の事件に関して「日産のガバナンスに問題があった」と指摘。「今回は司法取引をしているのでゴーン容疑者とケリー被告しか逮捕されていないが、仮に司法取引をしていなかったら、日産の上層部は根こそぎ逮捕されていたかもしれない。ここまで企業統治が崩れている例はあまり聞いたことがない。そこを今後、どうやって立て直していくかは非常に重要なことだと思う」と話す。


 また、井上氏も「先日、社外取締役と外部の有識者を中心とするガバナンス改善特別委員会が設置された。最初にゴーン容疑者の後の会長を決めるという話だったが、その前にやるべきことがあるだろうと。はっきり言って、権力が集中して何でもできていたという部分がある。そういうことができないようにする体制を作ろうということ。ガバナンスが内部崩壊していたので起こった事件だと私も思っている」と賛同。今回の事件が西川社長のクーデターと言われることについては、「西川社長はゴーンチルドレンと言われていたうちの1人で、なかなか意見が言えない立場だった。そういう中で内部告発を受けて、社内調査をして分かって、『いつゴーン氏に突きつけるか』と思っていた矢先に事件が動いた。パズルが重なったようなイメージ。本来ガバナンスが効いているのであれば、取締役会で『あなたがやっていることはおかしい』と解任するなり告発するなりして、その後は司法の手に頼むというのがきれいなやり方だと思う。今回は検察の力に頼って、自分たちのガバナンスがダメだということを見せていて、きれいではない。日産に自浄能力がないことを世の中に示した」との見方を示した。


■ケリー被告保釈による今後のシナリオは?

 井上氏は今後のシナリオとして、ケリー被告が「ゴーン容疑者の腹心として暗躍する」「ゴーン容疑者を裏切る」という2つを示す。

 「ケリー被告はゴーン容疑者の側近中の側近と言われてきた。ゴーン容疑者の処分はこれからどうなるか分からないわけだし、ルノーのCEOはまだそのまま。ゴーン容疑者の腹心としてこれから働こうと本人が思っているとする。裁判所から誰々と会ってはいけないという制約はつけられているが、もしルノーの人が日産関係者に含まれていないとすれば、ルノー側にはムナ・セペリというイラン人の女性の副社長がいる。この人も弁護士で、日産社内では“ルノーのケリー”と呼ばれている。その人とやり取りをして、ゴーン容疑者が有利になるようなことを画策する可能性があると日産はみている。


 ゴーン容疑者を裏切る場合。ケリー被告の奥さんが言っているように『権力闘争に巻き込まれた』『関わりたくない』ということであれば、これまで知っていることをしゃべるかもしれないし、捜査に協力することもあるかもしれない。私は後者のような気がする。ゴーン容疑者の周りにいた外国人は、最後はみんな逃げていく。これまでも、あの人は近いとか次期社長ではないかと言われていた人が、突然ライバル企業のCEOになったりしている。最後は袂を分かつ人が多く、ケリー被告は珍しく最後の方までついてきていた人物。ゴーン容疑者がこういう形になって、彼がどう判断するのか。その1つのポイントとして、ルノーがCEOの地位をどうするのか。私はおそらくルノーもゴーン容疑者のCEOを解任すると思う。特別背任になったことで、経営者の資格がないのではないかと。そうなれば、ケリー被告はゴーン容疑者を支える理由がなくなる」


 一方、高井弁護士は「(ケリー被告は)否認を貫くと思う。彼自身の名誉もあるし、彼自身は適法だと信じてやったと思っているはずだ。彼は無罪を主張すると思う。弁護人もそういう人」との見方を示した。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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