溝端淳平、SNS活用しない理由は「世間よ、俺を見てくれ!」をやめたから

 “ジュノンボーイ”の肩書も今は昔。かつては甘いイケメン俳優というカテゴリーに振り分けられていた溝端淳平も、30代を目前にして硬派な自己を確立している。個人でSNSを活用しない、エゴサーチもほとんどしない、否定的なコメントを目にしても気にしない。それは「100人いたら5人だけでも自分のことを物凄く好きだ!と言ってもらえればいい」という思いがあるからだ。平成最後の年に、甘いマスクの下に隠された溝端の昭和気質な“男”の顔を覗いてみた。

 ファンクラブを対象としたブログはやっているが、個人でSNSを利用することはない。エゴサも滅多にしないし、自身にまとわりつくパブリックイメージも、もはや気にならないという。「20代前半のころは100人いたら100人全員に好かれようと思っていました。でも、いまは5人だけでも自分のことをもの凄く好きだと言ってもらえればいい。少数に向けて『届け!この思い!』とやっている感覚」。30代を目前に昭和時代の硬派な俳優のような心境にいるが、それは一朝一夕で形作られたものではないようだ。


 高校在学中に「第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」を受賞。地元・和歌山県から上京し、デビュー当時はジュノンという出自と甘いルックスでイケメン俳優として人気を得た。だから与えられる仕事もパブリックイメージ優先。溝端自身、駆け出し俳優として右も左もわからない中で、周囲の要望に応え続けた。最初はそれで成立した。だが20代後半を迎える中で息苦しさを感じるようになる。


 「10代の頃にデビューして、お芝居のこともわからないのに大きな仕事をいただき、その流れで20代も10代の頃と似たようなイメージを求められる仕事をすることが多かった。25歳くらいの頃には自分が本当にやりたいこともわからなくなり、お芝居に対する欲求も湧かなくなっていた」。そんなときに出会ったのが、故・蜷川幸雄さん。出自も肩書も見た目も関係なく、舞台上では打ちのめされ壊され、認められず「苦しいが9割」だった。しかし残りの1割が「物凄く楽しく心地よかった」。気づけば芝居に対していまだかつてないほど食らいつき、没頭する自分がいた。


 熱中できる目的が見つかると、周りの目なんか気にならなくなる。スランプも若気の至りと懐かしく振り返ることができる。「正直25歳くらいの時の自分なんて中身ゼロでした。それなのに何もない自分を認めることができず、適当に取り繕って、自分の言葉・感性じゃないことを言う。周囲の僕に対する“イケメン”“甘い”“爽やか”というイメージに自分を縛っていた」と照れ笑い。悩んで迷った20代をあと半年で卒業。30歳を迎える心境は「世間よ、俺を見てくれ!じゃなくて、俺は俺!の境地。全員から100点を貰おうなんていう考えは捨てて、世間からどう思われようが気にしない。いい作品に出合い、いい役柄を全うできればそれでいい」と心機一転の達観した面持ちだ。

 映画『輪違屋糸里 〜京女たちの幕末〜』(12月15日公開)では、これまで多くの名優が演じてきた新選組・土方歳三役。「いままでの土方像とは違い、何を考えているかわからない、冷徹で女性からするとひどい男という役どころ。そこに惹かれた」とダーティーなキャラクターに嬉々として扮した。現代劇とは違い、時代劇には所作、殺陣、着物の着こなし方など細かい制限があるが「その不便さも役者の仕事です。『現場楽しいなぁ~アハハ』でお金をいただきますじゃ仕事としてダメ。映画にしろ舞台にしろ、普通じゃないからお客さんに面白がってもらえるのだし、役者が本気でやるからこそ受け取ってもらえる感情も生まれる。演じている人間が普通だったら意味がない。殺陣も実際に当たって痛い方がいいこともあるし、負荷があればあるほどいい」とストイックな演技論を持っている。


 溝端が求める“負荷”の中に、家庭を守る一家の大黒柱になるという選択はないのか?プライベートに踏み込む質問を投げると「え?今年は結婚おめでとうと3回くらい言われましたよ?」とビックリ発言。こちらの困惑を面白がるように「しょうもない嘘をつきました。先日結婚した小池徹平君と間違えられて3回くらいおめでとうと言われたから」とジョークで切り返す余裕の笑み。結婚願望については「藤原竜也君、小栗旬君のように結婚して家庭を持ったことを仕事への活力に変換している方もいて憧れる部分はあるけれど、僕はまだ現実的に考えることはできません」と素直な思いを吐露する。


 「寒くて暗い部屋に入って飯を温めて一人暖をとるのも役者の仕事」という蜷川さんの言葉を引き合いに出して「家に毎日奥さんがいて家族がいて温かいとなると、幸せボケしてしまうような気がして怖い。そういう意味で自分は地に足がついていないのかも。地に足がついたぞ!という実感を得たら、それが適齢期かな?」。役者は孤独であれ、を実践中の29歳。見た目ほど甘くはない堅気な男は、30代という新しいフィールドとどう向き合うのか。興味は尽きない。

テキスト:石井隼人

写真:mayuko yamaguchi

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