「人形」「ラブドール」「宝塚」コスプレの進化系「なりきり」がもたらす効果とは

 「なりきる人」といえば、アニメやゲームのキャラに扮したコスプレイヤーが定番だったが、そんな「なりきり業界」に変化が起こっているという。美少女ドールモデルに日本を代表する歌劇団のヒロイン、さらには男性用の愛玩グッズまで、その対象が多種多様に広がってきているというのだ。21日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、その現場を取材した。


■原宿でも話題!人形になりきる女性

 ポップカルチャーの中心地・原宿で話題を呼んでいるのが、ドールモデルの橋本ルルさんだ。顔にはプラスチック製の仮面、全身は球体関節が描かれたボディースーツで覆われており、まさに人形そのものだ。2年前からこの格好でファッションイベントなどに出演してきたが、"中の人"については"身長170cmの細身の女性"ということ以外は非公表だ。

 今月4日、ルルさんは早稲田大学の学園祭で行われた模擬授業「人形メディア学」にゲスト出演した。事前に募集した質問にルルさんが答えていく形式で進められたが、声を出すことが出来ないルルさんに代わって話をするのは、プロデューサーでファッションデザイナーのmillnaさん。「影響を受けた本や映画を教えて」との質問に、millnaさんは「お母さんが元々お人形が好きで、気付いたら人形たちと一緒に暮らしていたので、この活動をするにおいて影響を受けた作品とか本とかという感じではないみたい」とルルさん思いを代弁した。

 終業後はとフォトセッションタイム。ばっちりポーズを決めるルルさんだが、millnaさんによれば「普段は顔やスタイルにコンプレックスがある人間。ルルちゃんをやることによってコンプレックスと向き合える感じがして、所作が美しくなったり、自信を持ってふるまえたりするようになった」という。

 参加者たちも「なりきり心」を刺激されたようで、「自分とは全然違う存在になるのは面白そう。やってみたい」「顔にコンプレックスがあるので違う自分になりたいっていう気持ちはある」という声が次々と上がっていた。


■宝塚になりきることで気持ちが前向きに

 次に訪れたのは、目黒にあるダンススタジオ。レッスン前、生徒たちは入念にメイクし、きらびやかな飾りの付いた衣装を身にまとう。彼女たちが「なりきる」のは宝塚歌劇団だ。ダンスを教えているのは、なんと元タカラジェンヌ。雪組と宙組で活躍した男役スターの初嶺麿代さんだ。

 「2年前、お客様に宝塚のキラキラしたワンシーンをやってみたいとリクエストだれたのがきっかけ」。「なりきりタカラヅカ」は評判を呼び、今やスタジオの看板レッスンになっている。

 生徒たちは「前向きな気持ちになって、なんでも挑戦してみようかなっていう気持ちになった」「職場の同僚から"元気になったね"って」「気持ちが入ると自分が変わるんだなって分かった」「照れ屋で引っ込み思案だったが、人前に出るのも楽しくなってきて、むしろ出たい!」と口を揃える。


 初嶺さんは「楽しむことを最優先にしてほしいと伝えている。楽しいと本当に続くし、張り合いとか生きがいとかキラキラとか、心の健康に繋がっていく。結果的に体の健康にも繋がってるのが、なりきりの一番のポイントかなって思う」と話していた。


■"ラブドールとしての時間"が大人気に

 最後に訪れたのは都内某所にある怪しげな雰囲気が漂う部屋。看護師をしているAさんがなりきるのは、なんとラブドールだ。ここ「人間ラブドール製造所」では、生身の人間にメイクを施し、リアルなラブドールに変身させてしまうのだ。

 「女性の理想の形。おっぱい、くびれ、お尻だったり。顔もはやりの芸能人に似ている。なりたい人が多いだろうなと思って」と話すのは、所長でフォトグラファーの新レイヤさん。去年12月に地元・大阪でオープンすると、たちまち話題になり、今では東京でも開催するほどの人気ぶりだ。レイヤさんによると、客の4割は男性なのだという。

 カラーコンタクトを入れるなど、メイクにこだわるだけでなく、写真加工の際には肌はシリコンのような仕上がりにするさらにラブドールになりきってもらうため、様々な儀式を行う。

 それが「製品お披露目・命名の儀式」「梱包・開封の儀式」だ。あくまでも商品という設定なので、名前を付けられ、梱包されるという一連のプロセスを体験してもらう。そして最後の儀式が「ひとり遊び」だ。撮影後、さらに余韻に浸ってもらうため、1人だけの"自撮りタイム"を設ける。「一瞬だけ人間に戻っていただいて、完全に締め切って遊んでもらう。自分の好きな顔になって好きなポーズで撮っていただく、これが大人気」とレイヤさんは話した。


■過去の体験やイメージからの解放が新しい行動の第一歩に

 「なりきり」の事例に触れた女装パフォーマーのブルボンヌさんは「女性風になることで、女性って男性からこういう扱いを受けるのかというような目線が持てる」と話す。

 また、臨床心理士の藤井靖・明星大学准教授は「お風呂に入ってボーっとしたり、移動中に外の景色を見ていたり、人にとって"ただいる"という時間が大事。その究極の形ではないか。また、人は自分の過去の体験やイメージに常に縛られて生活していると思う。そこから解放されることで、自分自身ではできないと思っていたことや、新しい行動ができるという感覚になると思う」と説明した。


 今年6月に発表されたバルセロナ大学の研究チームの報告によれば、VRを用いて男性15人にアインシュタインと平均的な成人男性になりきってもらったところアインシュタインになりきった男性たちの認知機能は向上、自尊心も高くなり、高齢者に対する偏見は減少したのだという。


 藤井氏は「カウンセリングをする時にも、他の誰かだったらその悩みをどう考えるか、という具合に"他者視点"を持ってもらう。自分の経験や理性によるストッパーを解放し、本来の能力が出されるということが起こるのではないか」と指摘した。


 コスプレの"進化系"は、私たちにとって様々な効果をもたらしてくれるものなのかもしれない。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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