安田純平さん解放、身代金にまつわる議論は「あくまでも”アンダーグラウンド”のもの」?

 内戦下のシリアで2015年6月に行方不明になったフリージャーナリストの安田純平さんが解放された。24日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、解放の裏に何があったのか。また、ネット上では安田さんの"自己責任論"を主張する声もあることについて議論した。

 安田さんと親交があるという、ジャーナリスト・映画監督の綿井健陽氏はまず「本人の声が聞けて、ようやくホッとした。顔はちょっとやせ細っていたが、意識も口調もはっきりしていたので、ようやく喜べるんだなと。何と言っても、ご家族や、何とか救おうと解放に向けて力を尽くした人たちに感謝したい」とコメント、「1か月くらい前に、安田さんの解放交渉が進んでいるという情報がトルコから出てきたので、非常に期待感を持って過ごしてきた」と話す。

 安田さんの解放について、菅官房長官は会見で「カタール国とトルコ国をはじめとする関係国にも協力を依頼し、様々な情報網を駆使して全力で対応してきた。総理からも両国の国王・首相に依頼をしてまいった」と説明。官邸直轄の「国際テロ情報収集ユニット」が様々な働きかけをしたと明かしているが、綿井氏は「初めて聞く名前だが、この3年半、いつから、具体的にどういう働きかけをしたのかは検証しないといけない。最初に拘束されてから3年目くらいまで、日本政府が積極的に働きかけや交渉に臨んでいるようには見えなかったし、菅官房長官や首相の言葉をそのまま受け取って"ああそうですか"とは言えない」と指摘した。


 現代イスラムセンター理事長の宮田律氏も国際テロ情報収集ユニットについては「知らない」とした上で、仲介者としてのカタールの存在、そして反政府勢力の資金問題を指摘する。

 「日本とは経済的に重要な関係もある。カタールは世界最大の液化天然ガス輸出国で、日本は最大の輸入国。昨年6月にサウジアラビア、エジプト、UAEがカタールと断交したが、日本はパイプを維持してきた。トルコのイスタンブールでサウジアラビアの記者殺害事件が起きたが、タイミング的にはサウジアラビアと対照的にカタールのイメージが上がったと思う。また、対米関係を良好に保とうとする一方、イラン核合意は支持し、イスラエルの入植地建設は非難するなど、中東外交で賢く振る舞ってきたと思う。日本政府とすれば、旧ヌスラ戦線と直接交渉することは難しかったと思うが、過去にも人質解放に尽力したカタールを介して何らかの交渉、働きかけをしていたのではないか。同国はシリアの反政府勢力、特にエジプトで強かったイスラム原理主義組織『ムスリム同胞団』に武器や資金を提供してきたし、旧ヌスラ戦線にはムスリム同胞団出身者もいた。と言われている。旧ヌスラ戦線としても追い詰められていた状況で、資金も底をついてきている。なかなか見えにくいし、ちょっと言いにくいことではあるが、お金が必要だったということはあると思う。1999年にキルギスで人質事件にあった人の話を伺うと、何らかの報奨があったという話をされていた」。


■身代金にまつわる議論は、あくまでも"アンダーグラウンド"

 イギリスに拠点を置く「シリア人権監視団」は、安田さんの解放に際し、身代金が支払われ、4日前に武装勢力から身柄を引き渡されたと発表している。しかし、菅官房長官は「身代金を支払ったという事実はない。(カタールが支払ったという話についても)そうしたことはまったくない」と否定している。しかし、安田さんと同じく2015年に同僚とともにシリア解放戦線に拘束され、翌年解放されたスペイン人ジャーナリストのアンヘル・サストレさんのケースでは、スペイン政府が3人の解放のために1人あたり約4億円の身代金を支払ったとされている。ニューヨーク・タイムズは2014年、フランスがアルカイダ系組織に約63億円の身代金が支払われたと報じているが、国際社会でも身代金を支払うことには否定的な議論が多い。

 宮田氏は「これはどこの国でも普遍的な価値観だが、イスラムの教義から見ても人を拘束したり、殺したりしてはいけないというのは当然なので、あまり共感を得てはいないと思う。公式には身代金を払ったとは言えないし、特にイスラム過激派の攻撃対象になっているアメリカは国として、イスラム過激派のテロに屈したような印象を国際社会に与えることはよくないので明かせない」と説明。

 綿井氏は「身代金を支払うか支払わないかという議論から始めるのではなくて、国民が武装グループに拘束された時に、まずは解放されるように色々なルートを使って交渉する。今回もジャーナリストたちは何とか身代金を支払わずに解放するよう、アンダーグラウンドで呼びかけていた。そういう方法は間違っていないと思う。しかし3年経ち、シリア情勢が大きな局面を迎える中で、身代金でしかその人の命を救えないと判断された場合、最後の最後には支払わざるを得ない場合もあると思う。ただ、それもアンダーグラウンドでやるべきことだし、だからどこの国の政府も身代金を支払っているとは言っていない」と話した。


■堀氏「国が自己責任論を振りかざすのはおかしい」

 そして、今回のような人質事件で巻き起こるのが、"自己責任論"だ。今回もネットでは、「シリア内戦が悪化、危険性は十分わかっていたはず。当然自己責任を問われる。都合良く日本政府に助けを求める。それって税金だよね」「好きで拉致され、その身代金でまた人が殺される。これでいいの?良い訳ないでしょうか?」など、安田さんへ批判が投稿されている。

 綿井氏は「紛争・戦争取材に限らず、取材には危険な要素がつきまとうので、そこで日本政府に頼ったり、他の人に助けてほしいということは最初から拒否しているという。手紙でそれを示唆していた安田さんも含め、フリージャーナリストは皆そう思っている。だからといって救出しなくていいというのは話が別だ」と反論。「ジャーナリストが誘拐・殺害されている背景で、多くの市民が悲惨な目に遭い、亡くなっているという事実を踏まえた上で見てほしい」とした。

 ジャーナリストの堀潤氏も「一部の声を取り上げて、そういう"論"があるかのようにしてしまうと、かえって余計な偏見や誤解、分断を生じさせかねない。議論はすればいいし、批判もすればいいが、国が自己責任論をふりかざして救助しないとか、放っておけばいい、というのは全く別の話だ。身代金の使い方の話もあったが、拘束されたジャーナリストの持っている情報が今後、中東地域における平和と安定、日本の外交戦略の中で必要になる未来もあるかもしれない。僕もガザ地区でハマスに留め置かれたことがあるが、ちゃんとSDカードも返してくれた。それは日本外交や、そうした情報の積み重ねがあったからだと思うし、邦人を守ることはどういうことかを考えるべきだ」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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