「たくさんの反対があると思う。しかしアクションが必要だ」危機に陥る仏教界の改革を目指す若き僧侶

 来月上旬、世界各国から300人以上の僧侶が一堂に会する大イベント「世界仏教徒会議」が10年ぶりに日本で開催されることをご存知だろうか。


 18日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、仏教の未来を憂い、会議に向けて奔走する若き僧侶の姿を追った。


■「人々との新しい接点を求めるアクションが必要だ」

 「世界仏教徒会議」は、その名の通り、眉間にシワを寄せながら、活動報告などを行う真面目なプログラムばかり。当然ながら、一般の人が楽しめる要素は一切ない。そこに風穴を開けようと奮闘するのが、三重県の四天王寺で第54世住職を務める倉島隆行さん(41)だ。各地の宗派が加盟する「日本仏教青年会」の理事長を務め、11年前には伊勢で開かれた「国際宗教フォーラム」の世話人として、あのダライ・ラマ14世を招聘。まさに将来の仏教界を背負って立つ"若きニューリーダー"だ。一方、愛用のノートPCには「チームラボ」のステッカーを貼るなど、感覚はまるでIT企業の社員のよう。

 しかし、仏教界の現状は非常に厳しい。全国約7万のお寺のうち、住職不在の"空き寺"は4分の1に上り、今後25年以内に4割の寺が閉鎖するという予測も出ている。さらに宗教を信じない人が7割という時代、檀家も減り、半数の寺が年収は300万円以下だという。また、そんな状況下にあってもアクションを起こそうとしない僧侶たちの存在もあるようだ。


 倉島さんは「お布施についても、お寺を維持していくための修繕費に充てるため、昔は"お気持ち"でと言っていたが、今は"お気持ちで、と言われてもいくらか分からない"と皆さんがおっしゃる。戒名も、もともとは生前のお寺への貢献に対して仏名を授けていたのが、普段の交流がなく、お葬式だけとなっているので、どうしてもお金のやり取りばかりになってしまっている。地方では"墓じまい"であったり、これから後継者がいないというところで、収入が減っているのが現状」と話す。


 「お寺には様々な価値がある。昔は寺子屋として子どもたちが集まっていたし、障がいを持った人が集う場所でもあった。災害時には避難場所としての機能を果たすなど、いざというときに役立つ場所になれる気がする。檀家が日本人の約半分になったと言われている中、人々との新しい接点を求めるアクションが必要だ」。そんな危機感から、倉島さんは具体的なアクションを起こしてきた。


■「決して特別な世界ではない」

 テクノ・ミュージックに乗せた「テクノ法要」。お寺でラップバトルをする「テ・ラ・ランド」など、番組ではこれまでも現状を打破しようと取り組む若き僧侶を取材してきた。倉島さんも今、「世界仏教徒会議」を前例のない一大イベントにしようと計画中だ。

 その一つが、期間中に上映するために製作した映画『典座-TENZO-』だ。監督は『サウダーヂ』でナント三大陸映画祭・グランプリを受賞、『バンコクナイツ』でロカルノ国際映画祭・若手審査員賞を受賞している富田克也氏がつとめ、「禅」をテーマにリアルな僧侶の姿を描き、仏教の本来の役割とは何なのかを問いかける。

 映画には全て本物の僧侶が出演、倉島さんも登場する。「震災で寺を失って酒におぼれるお坊さんの役ですね。酒を飲むシーンがありまして、まあ一発OKだったんですけども、実際に全部リアリティを込めて演技させていただいた(笑)」と、マイクの前で必死でえずく。役作りにも全力投球だ。


 「どうしても修行というと、丁寧に精進料理を…っていう風に思われがち。もちろん私たちの修行はそうだが、どのような家庭生活を送っているかを皆さんにご覧頂いて、決して特別な世界ではなく、日常の中にも当たり前のように根付いているということを感じていただけたら」。


■「おそらくたくさんの反対があると思う」

 会場である、約15万坪の敷地を持つ總持寺(横浜市)をフルに使い、"インスタ映え"スポットとして巨大な看板を設置する。全世界の仏教徒の方がこれを目にすることになる。「"なんじゃこりゃ"と"観音様、こんなのありえないじゃん"って」と、倉島さんは笑う。さらに藤本美貴さんのヨガ教室や、もとTHE BLUE HEARTSのドラムである梶原徹也さんと和太鼓のコラボ、1000畳敷のスペースでは早乙女太一さんやピアニストの西川悟平さんなどによる音楽コンサートを開催予定だ。

 「今、世の中って生きづらいじゃないですか。現代の人たちの辛い、苦しんでいるという声をしっかり聞いて、それに答えていかないと。いつまでも関係者だけで平和を祈っていても何も伝わらないし、世の中は救われない」「やはり自殺者数を見ると、まだまだお寺がやるべきことはたくさんあるんじゃないかと痛感する」。前代未聞の仕掛けの裏には、"僧侶自身が変わらなければ"という倉島さんの熱い思いがある。

 「おそらくたくさんの反対があると思うし、やりすぎだって言われていると思うが、私の耳までは届いていない(笑)」。そう言って慣れないスーツ姿で100社以上の企業を回り、ブースの出店を取り付けるなど、僧侶とは思えないアグレッシブさを発揮してきた倉島さん。後輩である「全日本仏教青年の会」の内藤宏信事務局長は「一緒に何かが作り上げられるという可能性をすごく感じる。本質を変えないために変わることが必要なのかなと思っている」、「全国曹洞宗青年会」の河口智賢副会長は「いい意味でタガが外れていると思う(笑)。流れが大きく変わってきたと思う。こんなことは今までなかった」と期待を込める。


■「顔が見えるお寺でありたい」

 全国の被災地などを取材してきたジャーナリストの堀潤氏は「被災地では、必ずお寺の再建費用に悩んでいる方にお会いする。檀家さんたちも高齢化して少なくなり、地域に集まる場所もない」と話す。


 倉島さんは「昔はおじいさんおばあさんが子どもたちの手を引っ張って、お寺に来て法話を聞いたり、お墓参りするというような文化があったが、今は核家族化、住居も分かれて住むようになったので、子どもさん方がお寺に入るきっかけがまずない。普段から住職とのコミュニケーションというか、顔が見えるお寺でありたいなと言うのは常に思っている」と話す。


 そんな倉島さんのお寺では、座禅体験を行っている。グーグルやアップル社など、瞑想、座禅などを取り入れている外国企業も多く、アメリカを中心に話題の「マインドフルネス」でも座禅の効果が注目されている。座禅により、気分や感情の高ぶりを抑えるセロトニンが脳内に分泌されるとされ、研究が進んでいるというのだ。番組では司会進行の小川彩佳アナや出演者たちが体験。スタジオに倉島さんが振り下ろす警策の音が響いていた。

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