16歳「農業アイドル」自殺で遺族が提訴 大本萌景さんの実姉と代理人弁護士に聞く裁判の争点

 愛媛県松山市のご当地アイドルグループ「愛の葉Girls」のリーダー・大本萌景さん(16)の自殺について、遺族は12日、背景に事務所のパワハラなどがあったとし訴えを起こした。


 11日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に、「妹の表情など、見てきたことを伝えたい」と遺族側から可穂さんが出演。代理人であるレイ法律事務所の佐藤大和弁護士とともに、裁判の争点について説明した。


■厳しい労働環境、パワハラ

 「歌って、踊って、耕す」がコンセプトの「愛の葉Girls」のオーディションに萌景さんが合格したのは3年前、中学2年生の時だった。当時は不登校で家族と衝突することもあったという萌景さんだが、「昔からやりたかったアイドル活動に居場所を見つけた」と感じたと可穂さんは話す。

 萌景さんは研修生として週4回のレッスンを受けながら、無報酬でイベントや物販、時には農作業などの活動を行う。翌2016年春には通信制高校に進学したが、7月からはレギュラーメンバーとなり、売上がグループトップになることもあったことから学校には満足に通えなかったという。遺族側によれば平日のイベントが非常に多く、平均して1日に10時間以上拘束されていたという。


 そして今年1月にはグループのリーダーに就任。様々な重圧から、萌景さんは何度も「グループを辞めたい」と訴えたが、事務所側はことごとくはねのけたという。


 「研修生の頃は辛い時もあったようだが、楽しそうに話していたし、レギュラーになってからも同じ年代の子たちと仲良くやっていたようだった。ただ、他のメンバーが辞め、新しい小学生の子たちが入り、さらにリーダーを任されたあたりから責任が重くなったのか、家に帰ってきても表情が暗く、いつも機嫌が悪かった。食事に行っても"すぐに返さないかんのよ"と言って、ずっと携帯をいじっていた」(可穂さん)。


 詳細な理由なしには休ませてもらえず、予定がはっきりしない際には勝手に「参加」の扱いにされた。時には午前4時半に集合、翌午前2時まで仕事が続くことがあったという。この頃のものとみられる、学校への出席を希望した萌景さんに対する事務所スタッフからの返信が残されている。そこには「お前の感想はいらん。学校の判断と親御さんの判断をそれぞれ教えろ」「その理由によって、今後事務所はお前の出演計画を考えにゃならん。そこまで考えて物を言え」「返事せえや」「世の中ナメるにも程があるぜ」など、厳しい言葉が並ぶ。また、萌景さんが脱退を撤回したLINEを送った際には「次また寝ぼけた事言い出したらブン殴る」という顔文字付きの返事もあった。

 事務所側は早朝の出発、深夜の帰宅については認めているものの、仕事を優先させるように強調したことや、休みを取ろうとしても取り合わなかったことについては否定、「イベント前夜に『学校に行きます』と連絡があった場合、お客さんに迷惑がかかるのでスタッフから注意した」「パワハラを行ったという事実はなく、法的な責任があるとは思っていない」と主張している。


 また、今年5月には所属事務所「hプロジェクト」の佐々木貴浩社長がLINEのメッセージについて「管理者として大変反省している」「あの内容は、いじめようとかではなくて全国区になるために厳しくしてくださいというのが前提」「(母親からも)この子にはきつく言ってくれないといけないので今後もお願いしますと(言われていた)」と説明している。


 佐藤弁護士は「運営と萌景さんの距離が近づいたことによって、"何を言ってもいいんだ"という思いになった可能性があると思う。適切な指導の範囲を超えていたかどうかも含め、裁判で評価される」と話した。


■学費の貸付問題、そして「1億円」発言

 そして、原告側が自殺の引き金となったと主張しているのが、全日制高校への進学と、それに関係する金銭の問題だ。

 学業がおろそかになってしまっていることを懸念、グループ脱退の意向を伝えた萌景さんに対し佐々木社長は「全日のほうが日曜日もイベントに出られる」と全日制高校への進学を勧めた上、学費の貸し付けを申し出る。


 全日制進学へと心が動いた萌景さんだったが、家族は反対に遭った。「妹と母と私でカフェに行った時には"今も休みをもらってもないのに、全日制なんて絶対無理。通信だったら月に何回か行けばいいから、今のままが合ってる。今の状況だったら絶対無理"と言った。にも関わらず、妹は"いや、私は全日行くけん"と」(可穂さん)。


 そこで萌景さんは、独断で社長からの貸し付けを受けることを決め、全日制高校に合格する。「言葉は悪いかもしれないが、社長と妹が勝手にお金の貸し借りの話もしていた。親的には娘が行きたいと言っているから、最終的には渋々"あなたのやりたいようにしなさい"という感じになった」(可穂さん)。


 しかし3月末になり、母親が「8月末をもって脱退したい」と申し出たところ、事務所側は高校の集合日の前日になって納付金12万円の貸し付けを拒否。萌景さんは進学を諦めざるを得なくなったという。これについて事務所側は「指導の意図での発言。お金は貸すべく用意していた」と主張しているが、佐藤弁護士は「"活動を継続しないのであればお金は貸さない"という主張は当たり前だという意見もあるが、この二つは繋がっていない。あくまで信頼関係で全日制を勧めていた社長が信頼を裏切った。萌景さんも条件とは思っていなかったので、大きなショックを受けたということになる」と説明、「過重労働もあり、精神的・肉体的にも疲労がある中で信じていた社長に裏切られ、1億円発言があったので、自殺という道を選ばざるをえなかった」と訴えた。


 さらに事務所側は否定しているものの、3月20日にグループ脱退を申し出た萌景さんに対し「辞めるなら1億円支払え」と発言したという。可穂さんによると、萌景さんは亡くなった日の朝、友人とその母親に車中でこのことを打ち明け、「社長に裏切られた。愛の葉を続けないのであれば違約金1億円支払えと言われた」と話、自ら命を絶った。自宅を訪ねてきた社長に母・幸栄さんが「自分にどれだけ責任があるとお思いですか」と尋ねたところ、佐々木社長は「責任を考えたことないですね」と発言したという。


 そんな佐々木社長は昨日夕方、報道陣の取材に応じ、過重労働やスタッフによるLINE上の発言について謝罪、「守ってあげられなかったことに対しても本当に不覚だと思っている。私たちも反省しなければいけないこととか改善しなければいけないこととか、その辺は反省する」とした一方、「親族の方が言われていることだとかは多々"あれ?おかしいな"というところもある」として、1億円発言について否定している。

 可穂さんは「亡くなった3月21日、私は遊びに行ってしまっていた。その日、家に誰かがいたらと思ってしまう。今はそこにしか目を向けられない。ただただ真実が知りたい」と後悔を滲ませた。


■未成年の芸能契約に残された課題は

 今回の訴訟で浮き彫りになるのは、未成年のアイドルたちを取り巻く労働環境や、契約の問題だ。萌景さんと事務所との契約書には芸能活動について口外することを禁止する条項があったが、原告側は家族に悩みを打ち明けることさえも口頭で禁じられていたのだと主張している。「"何かあった?"という母親からのLINEに対して、"言えない"と答えるやりとりが残っていた」(可穂さん)。佐藤弁護士も「もちろん一般的に守秘義務条項はある。私はおそらく日本で一番芸能契約を見ている弁護士だと思うが、相談もしちゃいけませんよと伝えるのはあまり聞いたことがない」とした。


 番組のコメンテーターからも、様々な意見が出た。

 「学校や部活に居場所を持てなかった思春期の子が、アイドルの世界にグッと入ってしまうことはよくある。それでも年頃の女の子の集団になると、メンバー同士の諍いもよく起こる。そこでリーダーになれば、運営との調整など、ものすごいストレスがかかる。その点からも、ちゃんとケアできるスタッフが必要だが、小さい事務所では体制が整っていないことも多いのではないか。本来、そういうところは未成年を預かるべきではないが、アイドルになることを夢見る子がとても多い時代なので、難しい」(慶応大学の若新雄純特任准教授)


 「昭和の時代は、芸能界なんて危ない、安易に行っちゃだめ、という感覚が親たちにあったと思う。やがてクリーンなイメージになっていったことで、誰でも気軽に足を踏み入れるようになった。我々のような大人はビジネスの世界で商品として扱われる部分があることも仕方がないと思う。ただ、未成年の場合は違うのではないか。緩衝材となるマネージャーや家族の存在が必要だし、どこかに逃げ道や救ってくれる人と出会わないと、こういうことが起きてしまう」(ふかわりょう)

 「個性や考え方、年齢、生活環境も違う子たちが集まる中で、事務所が全てをケアするのは厳しい部分があると思う。だからこそ自分の子どもがアイドルやりたい言ったときには、家族が契約も含めてしっかり見ていかないといけないと思う」(元SKE48メンバーの柴田阿弥)

 「そもそも不登校だった中学生を10時間も無報酬で活動させる、この構造そのものが非常におかしいと思う。こういうことがいろんなところで起きているとしたら、はっきり言って子どもに対する搾取だ。法制度の整備をする必要がある」(東京工業大学の柳瀬博一教授)。


 こうした意見に対し、佐藤弁護士は「一般論ではあるが、自分のお子さんが芸能界に入るとなると"明るい華やかな世界に入るんだ"となってしまって、契約書をそこまで読み込む親御さんは少ない。そもそも法律用語も多く、中身を理解するのは難しい。相談できる環境も含め、未成年、特に18歳未満のアイドル活動については見直していくことが必要だと思う」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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