「言葉が出ず悔しい」「誰とでも話せるようになりたい」場面緘黙に悩む若者たちの告白

 「場面緘黙(かんもく)」という言葉をご存知だろうか。学校や会社など、特定の状況では話すことができなくなる不安障害の一つで、およそ500人に1人の割合でいるとされている。17日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、"話さない"のではなく"話せない"という人たちが抱える、知られざる苦悩を取材した。



■周囲の目が怖く、トイレにも行けなかった

 場面緘黙の当事者の一人、富山県に住む加藤諄也さん(24歳)の自宅を尋ねた。取材スタッフが加藤さんに「こんにちは、はじめまして」「この部屋に入って大丈夫ですか」「ここに座らせてもらってもいいですか」などと声をかけても返事はなく、小さく頷くだけ。人と話すことに対する緊張感から、話したくても話せなくなってしまうのだ。普段は筆談でコミュニケーションをとっており、「喉がひきしまって、力も入らない感じです」と教えてくれたが、見知らぬ人の前で文字を書くこともプレッシャーとなり、自分の思いを伝えるのに時間がかかってしまう。

 幼少期は外出先や学校でも話せていたという加藤さんだが、小学校4年生の頃から徐々に話ができなくなっていった。明確なきっかけは今も分からないままだという。母親の由加里さんは、ある日、帰宅した息子の様子を見て、初めて苦しみに気づいたという「ずっと硬い表情で通学路を歩いてきて、玄関を開けて一歩中に入るとすごくリラックスして顔も柔和になってというのを鮮明に覚えている」。

 また、加藤さんには緊張のあまり体が硬直して動けなくなってしまう「緘動」という症状も出ていた。「学校に行ったら帰りまで座りっぱなしで、トイレも行かず、給食も食べず、という状況だった」と由加里さん。周囲の目が怖く、トイレにも行けなかったという加藤さんの苦しみを、周囲はなかなか理解してはくれなかったという。その頃のことをノートに「しゃべらないことや動かないことについて甘えているだけと言われたり、むかつくと言われたことがありました」と書いて教えてくれた。

 そんな加藤さんは、技術の進歩により自分の気持ちを簡単に言葉にすることもできるようになった。タブレットの音声アプリを用いて、「少しずつ緘黙を克服し、経験値を高めながら社会スキルを身に着けて自立できるようにしていきたい」と、これからの目標について語った。


■「しゃべるまで絶交」「"あ"って言ってみて」

 筆談や音声アプリを使わず、できるだけ自分の声で思いを伝えたいという当事者が石原えりなさん(仮名:25歳)だ。石原さんもまた、小学校入学までは活発で、誰とでも話す女の子だった。しかし入学から半年が過ぎた頃から少しずつ笑顔が消え、家の外では話をしなくなったという。

 友達からは「しゃべるまで絶交」「"あ"って言ってみて」などと言われ、「答えられなくてすごく悔しい思いをした」という。「なんで話せないか自分でも分からなくて、どうしたらいいか分からなかった」。そんな経験から、さらに話せなくなり、約9年間にわたり、自分から友達や先生に話しかけることができない状況が続いた。

 そして16歳の時、場面緘黙と診断された。それでも母親は家の中での石原さんの様子から「見られることが怖い」という娘の障害について実感が湧かず、「ちょっと恥ずかしがり屋で大人しいだけかなって」と思ってしまったのだという。実際、家族と過ごす普段の様子を固定カメラで撮影させてもらうと、そこには家族と笑いながら普通に会話している石原さんの姿があった。

 大学時代には一般企業への就職を考えるも断念し、21歳から3年間、「チャレンジ雇用枠」で事務として働いた。今は家族以外の人と1日に一言でも会話をしようと、就労支援を利用している。少しずつ症状が改善されるよう、自ら苦しい道を選び、自立を目指している。


■生活環境の変化や「スモールステップ」によって克服できたケースも

 場面緘黙を抱える人たちの支援を行う長野大学社会福祉学部の高木潤野准教授は、場面緘黙について「不安を感じやすいとか、緊張しやすいことが原因と考えられている。家族と離れて集団の中で生活が始まる幼稚園や保育園に入る時に症状が顕在化してくることが多い。同居している家族としか話せない方もいれば、親戚や限られた友達とか、近所のおじちゃん・おばちゃんとなら話せるという人もいる。また中には海外に行ったり、転校したりなど、環境が変わることで普通に話すことができるようになる人もいる。刺激を与えることがかえってマイナスに働いてしまう人もいるので、どんな風にきっかけや環境を作っていくか、それぞれに合わせて丁寧に対応を考えていく必要がある」と話す。

 「言葉を話せないだけで、考えていることとか伝えたいことはいっぱい持っている。言葉だけではなくて筆談でもいいしSNSでもいいので、ちゃんとコミュニケーションをとろうという姿勢をもって関わることが大事だ。ただ、多くの人は"本当は話したい"と思っているので、"話さなくてもいいよ"という方向だけでなく、やはり話せるように持っていくことも重要だ」。


 主な治療法は、少しずつ不安に身を置き、小さな成功体験を積み重ねる「スモールステップ」だという。「少しずつ段階を踏んで、話せる場面を広げていくというやり方だ。この方法で、普通に話せる状態になる人も大勢いる」と高木氏。石原さんも高校受験の際、苦手な面接に向けて家族やクラスメートの協力のもと、1.教室でリラックス、2.声を出す、3.友達に電話、4.隣の教室にいる友達に電話、5.友達がくる、6.直接話す、という手順のスモールステップを採ったという。 

 同じ悩みを抱えた人たちの存在を知ってほしいと、石原さんは強い緊張を抱えながらも番組に出演。時間をかけながらも、「当事者としてできることをやりたいと思った」「自立して、誰とでも話せるようになりたい。(出演して)良かった」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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