里見香奈女流四冠が藤井聡太七段に勝つ可能性 8月24日に公式戦初対決

 大騒動を巻き起こす可能性を孕む大一番が迫っている。将棋史上最年少・史上最多連勝記録保持者の藤井聡太七段(16)と女流棋界の第一人者・里見香奈女流四冠(26)が8月24日、大阪市の関西将棋会館で行われる第90期棋聖戦一次予選2回戦で激突する。

 藤井が公式戦で女流棋士と指すのは初めてだが、両者は2016年7月に棋士養成機関「奨励会」の三段リーグで対戦したことがある。三段リーグは、棋士を目指す者たちが夢に王手をかけた最終関門。30人以上の三段がわずか上位2人の昇級枠に入るため、半年間にわたって各18局を戦う難関だ。


 当時は、里見が指した中盤の緩手によってペースを握った藤井が一気の寄せで勝利している(棋譜は公開されていないが、後に振り返った2人の証言は重なっている)。里見戦の勝利で10勝3敗とした藤井は、最終的に13勝5敗でリーグに優勝。参加1期目にして四段昇段を果たした。一方の里見は、藤井戦まで6勝5敗と白星を先行させていたが、その後に崩れ、7勝11敗でリーグを終えている。


 勝負事の「たられば」は意味をなさないということを承知の上で言えば、仮に藤井が里見に敗れ、結果的に12勝6敗となっていた場合、昇段は果たせておらず「史上最年少棋士」は誕生していなかった。将棋史は変化していたことになる。


 対戦確定の一報を聞いた多くの人は「間違いなく藤井七段が勝つだろう」と思ったことだろう。藤井はデビューから史上最多の29連勝を記録し、朝日杯オープン戦では佐藤天彦名人や羽生善治竜王を破って全棋士参加棋戦の史上最年少優勝も果たした。100戦を終えての戦績は歴代1位タイの85勝15敗。棋士になってからの2年弱の月日に成し遂げたことを挙げればきりはないが、現時点で既にトップ棋士の水準に達する実力を持っていることは誰もが認めるところだ。


 一方の里見は、わずか26歳にして女流棋戦で歴代2位のタイトル31期を獲得している第一人者(36度のタイトル戦で31期は驚異的)だが、女性初の四段を目指した奨励会では三段まで上り詰めたものの、昇段は果たせず。今年3月、26歳の年齢制限を迎えて退会を余儀なくされている。


 両者を単純比較すれば「藤井の勝利が順当」とは言えるだろう。しかし「間違いなく藤井七段が勝つだろう」と断じられるほど、両者の力は離れていない。里見は四段昇段こそ果たせなかったものの、5期在籍した三段リーグで5勝13敗、7勝11敗、8勝10敗、7勝11敗、7勝11敗と一定の勝ち星を挙げている。後にデビュー後100戦85勝15敗の成績を残す藤井でも13勝5敗にとどまった過酷な戦場において、である(もちろん2年前の藤井と今の藤井では力は異なるが、日々成長しているのは里見も同じだ)。一局を挙げるなら、里見は2年前、藤井戦に敗れた直後の一局で大橋貴洸三段(当時)に勝っている。大橋は同リーグで藤井に次ぐ2位で四段昇段を果たした後、通年度のルーキーイヤーとなった2017年度に46勝12敗(勝率.793)という記録的な結果を残している。この記録は羽生善治竜王の新人時代に勝る数字だ。


 さらに、3月の奨励会退会後に参戦している男性棋戦では村田智弘六段、増田裕司六段、福崎文吾九段を連破し、女流棋士として史上最多タイとなる対男性棋士戦3連勝を飾った。平均より上か下か、といった点については別の議論を要するが、里見は間違いなく、男性棋士と遜色のない力を持っている。


 また、棋聖戦の一次予選は持ち時間各1時間で行われる。勝敗がブレやすく、逆転劇や番狂わせが生じやすい早指し棋戦が舞台として設定されたことも里見にとっては好材料だろう。


 里見は藤井戦に向け「簡単には対戦できないので。いや、今回の機会しかないかもしれません。出来る限りの勉強をして、自信を持って対局室に向かいたいと思います」と静かな闘志を感じさせる言葉を発している。藤井は「里見さんだから、と意識することはありません。いつもと変わらない気持ちで対局に臨みます」と自然体だ。普通なら重圧を感じるシチュエーションで不動心を貫けることは藤井の大きな武器でもある。


 「棋士とコンピュータ、どちらが強いか」の問いに対する一定の解答が出た今、将棋という競技が未来に対して提示する最大の命題は「男性を超える女性は現れるのか」だろう。結果はもちろん内容も含め、藤井-里見戦が持つ意味は、後世になって振り返った時、思った以上に大きくなっているのかもしれない。

(C)AbemaTV

▶8/24(木)9:30~ 第90期 棋聖戦 一次予選 藤井聡太七段 対 里見香奈女流四冠

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