“派手好き”中国で受ける日本の“シンプル”、消費のレベルアップで“外見”から“良品志向”に

 キャラクターの絵が描かれ、色鮮やかな遊具が立ち並ぶ――そんな従来のイメージを覆す、洗練されたデザインの保育園。この建物の“シンプルさ”が今、“派手好き”な中国人の志向に受け入れられているという。


 茨城県神栖市のある保育園。大きく張り出した木のひさしが続き、まるでデザイナーズマンション風の平屋建てのよう。おしゃれで一見保育園とは思えない建物だが、子どもが大好きなスポットを随所に散りばめ、中庭の窓枠にはベンチのように座れるスペース、壁一面の黒板はお絵かきし放題だ。また、風が強い地域の特性を利用し、庭に植えられたハーブの香りが食堂に届く仕掛けも施されている。

 この保育園を設計したデザイナー・門間直樹さんによると、建築のテーマは“風”。各教室の天井には木造の梁の間に窓があり、窓を開けると風が抜けるようになっている。さらに、子どもたちのトイレも“風が舞っている”イメージを表現しているという。


 デザインを担当した日比野設計は、幼稚園や保育園、福祉施設を専門とし、500件以上の幼児施設の建設に携わってきた。日比野設計が手がけた建物はどれも独創的なものばかり。熊本市の幼稚園は建物の一部の屋根を取っ払い、建物の中に自然の水たまりを作った。

 シンプルの中に独創的なアイデアが散りばめられた幼稚園。そんな日比野設計は、3年前に突然転機が訪れたという。


 「ある時、(中国から)突然メールで問い合わせが来始めた。我々も最初疑心暗鬼だったんですけれども、それが1件ではなく立て続けに2件、3件と続きだして、ひと月に20件くらい来た時があったんですね。その中の問い合わせで、我々のことが中国のSNS上で大変拡散されていると」(日比野拓代表取締役社長)

 中国のSNS上で幼稚園の写真が爆発的にシェアされ、「幼稚園を作ってほしい」という依頼が殺到したのだ。その後、中国人スタッフを雇用して中国展開に乗り出し、今年1月についに中国展開の第1弾となる子育て支援施設を北京中心部にオープンさせた。1~6歳までが対象の会員制の施設で、月謝は5万~6万円と日本並みの価格設定。しかし、入会希望者が殺到し、今は面接で会員数を絞っているという。

 現在中国では20件のプロジェクトが進行中で、今では日比野設計の売り上げの3分の1は中国からのものだという。日比野社長は「まだまだ我々の知らない顧客層はたくさんいるわけですね。そして、新しく幼稚園というビジネスに参加してくる方もいる。そういう意味で考えると、まだまだ大きな可能性はあると思います」と今後の展望に期待を寄せた。


■中国で“消費のレベルアップ”?

 一方、シンプルなデザインの代表格と言えば「無印良品」。天安門広場からほど近い絶好のロケーションに、無印良品のホテル「MUJI HOTEL」が新たにオープンした。客室は無印良品ならではのシンプルな造りで、一部の備品は併設された店舗で購入することが可能。富裕層から若者まで幅広い層の取り込みを狙っているこのホテルは、1泊約9000円~5万円と幅を持たせた価格設定となっている。


 開業初日、家族3人で泊まりに来たのは北京に住む任さん一家。北京に住みながらホテルに泊まる理由について、暁娜さんは「私は無印良品が大好きで、私の服、子どもの服、家の収納用品とか寝具とか、家庭用品はほとんど無印良品なんです」と話す。任さんは毎週無印良品で商品を買う“大ファン”で、ホテル開業のニュースを知るや否や予約したという。

 「日本には無印良品の食品スーパーが開店したと聞いています。レストランもあるんでしょう。北京でもオープンしてほしいの。そうしたら私の衣食住を全部無印良品で一本化できるわ」(任暁娜さん)


 シンプルを愛するようになった中国人。日本人が得意とする美しいデザインと質の高さが、これから中国マーケット進出を狙う際の重要なキーワードになっている。良品企画の松崎暁代表取締役社長は「(中国は)極めて大きなマーケットで、まだまだ事業展開を拡大できると考えております」と意欲を見せた。


 現地で取材をしたテレビ朝日中国総局の森林華子記者は、良品企画の人気はその立地にも現れていると話す。

 「天安門の辺りは国会にあたる人民大会堂もあるので、治安の問題から外国人が泊まれるホテルは少ない。今回、この場所にホテルを作れるということ自体が、日本の無印良品というシンプルなブランドが中国でいかに受け入れられているかを表している」


 中国人といえばきらびやかな物が好きなイメージが強いが、なぜシンプルなものが浸透しているのか。森林記者は中国で“消費のレベルアップ”が起きているとし、「日本に馴染みのない人も、『品質がとてもよくて、価格が合理的。SNSでよく紹介する』と話していた。関税がかかるため中国での価格は日本より割高だが、それでも支持されるというのは“消費のレベルアップ”が起きている。消費の中心を担う20代・30代の若者が、より良いものに対して出費を惜しまなくなっている」と説明。これまでの外見の派手さから、良いものを手に入れてSNSで発信する・拡散するという行動に変わりつつあるとした。

 また、中国では教育熱もすさまじく、英語などの幼児教育があるバイリンガル幼稚園は半年ごとに値段が上がっているという。親と子だけではなく、祖父母含めて詰め掛けている状況のようだ。


■中国で“保育ニーズ”が高まる理由

 中国でなぜ今“保育ニーズ”が高まっているのか。3つにまとめると、(1)若者が都市部に流入し親と別居することで子どもをみる保育園が必要になること、(2)自分の親の教育レベルよりも高い教育水準を求める流れになっていること、(3)夫妻とそれぞれの両親を含めた“6つの財布”によって教育にお金をかけられること、などがあげられる。


 特に日比野設計が受けているのは、子どもを主眼においてコンセプトがしっかりしていること。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「コンセプトに注目したのは面白い。高価なものにお金をかけるだけではなくて、風を感じられる施設に入れたいとか、子どもたち同士が交流できる建物がいいとか、ハイレベルな抽象化された消費が広まっている印象」と見解を述べる。

 一方、そういった日本の良さや文化を伝える際には「うまく翻訳する必要がある」と指摘。「例えば無印良品はハイコンセプトで、普通『商品を見て欲しい』と印を入れるのに対し、あえて印を付けないひねったようなブランド。日比野設計のシンプルな建物も、使い勝手よくコンセプトもあるという高度なコミュニケーション技術。それをどう伝えるのかがポイント」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)


【動画】独占映像も!“中国のガッキー”緊急来日&メッセージ

続きを見る

0コメント

  • 1000 / 1000