住宅浸水からの生活再建の難しさ…鬼怒川決壊から3年、常総市に学ぶ水害からの復旧

 西日本各地に大きな爪痕を残した西日本豪雨。岡山県倉敷市の真備町では小田川が氾濫、町の4分の1以上にあたる約1200haが浸水。約4600棟が被害を受けた。町を飲み込んだ水はほぼ引いたものの未だ約8900戸が断水、今も安否が分かっていない人もいる。住宅の2階まで水が押し寄せ、家財道具が流されたという男性は「あれもこれも建て替えると大変だ。この家は阪神大震災の時に被災して、3600万円かけて建て替えたのに」と話す。

 外遊をキャンセルした安倍総理は10日午前に岡山入りし、被害が大きかった倉敷市などを上空から視察。真備町を訪問し、犠牲者に花を捧げた。避難所となっている小学校を訪れ住民の声を聞いた安倍総理は「市町村の方で罹災証明が簡単にできるようにした」「きめ細やかな生活支援、生活再建に取り組んで参る」と語った。

 11日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、住まいの再建に向けた課題について、3年前に水害に遭った茨城県常総市のケースをモデルに考えた。


■浸水した住宅の厳しい実情

 2015年9月、関東を襲った豪雨により、市のほぼ中央を南北に流れる鬼怒川の堤防が決壊、市域の3分の1が浸水した常総市。NPO法人「茨城NPOセンター・コモンズ」代表理事の横田能洋さんによると、浸水特有の対応の難しさがあるという。

 「泥だらけになったところを一生懸命に水で洗えば、外見は綺麗に見えるようになる。しかし数十cmの床上浸水でも数日続けば、1階にあるものは全て捨てなければならない。それだけで200〜300万円の被害額。フローリングの床であれば600〜700万円程度かかる場合もある。しかも大工さんが来るのは2、3か月後だし、避難所を出てしまえば被災者としてなかなか把握してもらえない。それがすごく辛い」と話す。

 災害に対する公的支援制度「被災者生活再建支援制度」では、水害に対する「基礎支援金」として、1.8m以上の床上浸水を「全壊」として100万円、1〜1.8mを「大規模半壊」として50万円がそれぞれ支給される。ただ、1m未満の場合は対象外だ。また、「加算支援金」として、建設・購入は200万円、補修は100万円、公営住宅を除く賃借は50万円がそれぞれ支給される。

 横田さん自身も「床を張り替えて300万円。車を足して400万円。支援はよくて100万円くらいなので、自己負担も大きかった」と話す。「ハザードマップを見ていれば水害保険加入を考えたかもしれないが、多くの人は貯金を取り崩すなどして対応したと思う。行政は行政で考えてくれてはいたが、義援金が支給されたるのはずっと後のことだし、今すぐにお金がほしいという方に支援が届きにくいという不満が出ていた」。


 現地で取材に当たった所太郎は「全壊で建て直すという話になった場合、取り壊す費用もかかる。それだけでもかなりの額になるが、支援金は最大300万円。半壊扱いでは支給されないが、1m近く水が溜まれば、家の中のほとんどのものが浮いたり故障したりしてしまうと思うし、壁の中の断熱材に染み込むと天井近くまで水が行ってしまい、すべて交換しなければならなくなるケースもある」と話す。

 また、損害保険の請求や公的機関による各種支援策の申請に必要となる「罹災証明書」の取得も重要だ。災害にあった市町村の被害調査をもとに発行する被害認定書で、常総市では罹災証明書の発行対象となった戸数は約6000戸だったという。

 横田氏は「罹災証明は早めに申請した方がいいと思う。他には記録を残すこと。当時、水がここまできた、とが分かるように撮ること、廃車の手続きをちゃんとやらないと税金が残ることなど、"後で失敗した"とならないよう、必要な情報を載せたかわら版を作り、外国人の方にも伝えた。行政の判断に疑問に思った場合は再審査請求もできる。また、ボランティアさんに片付けを頼む時にも、後になって"あれは残したかった"という気持ちになる場合もあるので、自分で分けてからお願いするといい。家電製品・車には漏電・感電の可能性もあるので、落ち着いて対応いただきたい」とアドバイスした。


■地域コミュニティの崩壊も懸念

 ジャーナリストの堀潤氏はアナウンサー時代、岡山県に赴任した経験を持つ。「倉敷の場合は高齢化率が3割を超えていて、災害弱者が多い。復興の行方は心配だ」と話す。

 常総市の場合も、水害後の3年間で人口が1404人も減少。市商工会によると、製造業や小売業など約40の事業者が廃業した。地域コミュニティの崩壊も危惧されている。横田さんの案内で常総市内を歩いてみると、空き家が目についた。戸建て住宅だけでなく、一棟まるごと住人のいないアパートもあった。浸水の被害を受けた家屋はダメージが大きく、行政からの支援金だけではリフォームや解体費用が賄えなかったため、家をそのままにして転居する住民が後を絶たなかったのだ。

 この「空き家問題」を何とかしたいと、横田氏は空き家を借り入れ、地域住民と一緒に自らリフォーム。誰もが集まれるスペースにした。「業者に見積もってもらったら800万円くらいと言われた。それを聞いたら、みんな諦めちゃうんだなと実感した」。横田さんたちは、空き家を保育園にするなど、新たな利用法も模索している。

 「私の場合、数か月間は普通ではない暮らしが続いていて、呆然としていた時に来てくれたボランティアさんが折れそうな心を支えてくれた。今までなかったつながりができたのは励みになった。家が直っても、家具が減り、友達がいなくなり、趣味もなくなって、どんどん引きこもりがちになっていく。みんなが出てこられる場所を一緒に作ろうということで、空き家の改修をはじめた。外国の方との接点ができ、おじいちゃん、おばあちゃんが子育て支援との世代間交流を機に生きがいが生まれる。そこから"今度は一緒に逃げようね"という話もできるようになった」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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