「ファミレスならむしろ土下座してしまえ」知られざる謝罪代行業者のテクニック

 "謝る"といっても、ただ頭を下げればいいというものではなく、場合によっては逆効果になってしまうケースもある。そんなお詫びに悩む人のための代行業、"謝罪代行業者"が密かに注目されているという。依頼者本人はもちろん、上司や浮気相手役などになりきり、代わりに謝罪をする仕事だ。


 5日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、謝罪代行業者の一人で、これまで1000件ものトラブルを解決してきたスズキさん(仮名)を取材した。


 「6年前、とある映画を観に行った時に、"こういう商売、あったらいいな"と思った。当時、私自身も不倫をしていて、彼女の旦那のフリをして不祥事のお詫びに行ったら簡単に成功してしまった。それでこの商売は成り立つかなと思った。最初はあまり反響がなく、月に数本程度。4か月くらい経った頃から急激に依頼が増えて捌ききれなくなった。最初はクレーム退治、クレーム処理のつもりで始めたが、次第に"浮気がバレました"という相談が増え、上位になった」。


 依頼者の男女比は半々。依頼は年々増え続けており、相談の電話がひっきりなしに入る。様々な役を演じるため、携帯電話も5台持ちだ。「"映像に映らない役者"として役になりきっているので、疑われたことはない。成功率は100%だ」と豪語する。


 基本料金は2万円〜、身代わり料が1万円〜で、難易度やリスクによって最終的な費用は"ケースバイケース"。「土下座しておカネになるなら、いくらでも土下座する。難易度やリスクによって値段はまちまちだが、儲かるか儲からないかで言えば、正直儲かる。土下座御殿、土下座ビルを建てたい」。


■相手が譲らなければ"土下座"…迫真のシミュレーション

 そんなスズキさんの仕事の現場を取材させてもらった。 

 この日の依頼者は既婚女性だった。好きな人がいることがバレてしまったことから離婚を考えているが、夫からは「相手の男を連れてこい。そうしないと離婚届に判は押さない」と言われているという。そこで"彼氏"になり代わり、夫の前で謝罪してほしいとうのが依頼内容だ。依頼者は「単純に私が好きになっただけであって、彼に"好きだよ"と言われているわけでもない。将来を約束したわけでもないので、迷惑をかけたくない」と話す。


 スズキさんがヒアリングを進める中で「芸能人でいうと、どんなキャラの人を用意したらいいか」と尋ねると、依頼者は「よく言われるのは大谷翔平みたいな。土曜日に20代の大谷翔平風はすぐに用意できそうか」と、無理難題とも思える条件を提示してきた。しかしスズキさんは「できる」と即答。「"私は映画監督"という感覚でいてくだされば大丈夫。色々なジャンルの男性・女性が120人いる。だからどんなキャラでも大丈夫。もっと細かい設定を注文してくだされば、それなりの準備はする。金額は変わらない」と力強く説明した。スズキさんが今回受け取る報酬は、謝罪場所がファミレスなどの自宅外であれば約150万円、自宅だと約300万円だという。自宅の外であれば、暴力沙汰などのトラブルになるリスクも低くなるからだ。


 次にスズキさんが向かったのは、彼氏役として謝罪に赴く男性役者との打合せだ。依頼者から聞き取った彼氏の仕事や性格、依頼者とどのように呼び合っているか、などの細かな情報をインプットする。報酬は30万円だという。


 そしていよいよ、ファミレスに3人が集まって謝罪する場面を想定したシミュレーションを行う。依頼者の夫役のスズキさんが「あんたか、うちの嫁と飯とかに行っているのは」と話し始めると、彼氏役の役者は「行かせてもらっています。申し訳ないです」とお詫び。


 「まず言い分から聞く。どうしたいのかこの先」

 「奥さんと一緒になる方向で考えているものですから」

 「ちょっと場所変えて話できる?ここちょっとみんないるし、他のお客さんも。ちょっとぶん殴らせてほしいんだよ!気分悪いんだよ、俺も!」


 と、次第に語気を強め、"暴力を振おうとする"というシナリオ、さらに「じゃあ2択を与えるよ。A子(依頼者)風のやつを紹介してくれ。明日。そしたら判子ついてやる」と、"無理難題を突きつける"シナリオも展開する。


 「急に言われましても…。でしたら訴えることはしませんので、1発ぶん殴ってもらった方が」

 「じゃあ、ぶん殴るという方を取るのであれば、今場所を変えて2人で話ができるということだよね」

 「そうですね…」

 「分かった。では善は急げでいこう。A子、お前はここにいろ」


 迫力満点、真に迫ったシミュレーションを終えると、発言の細かな注意点をレクチャーする。スズキさんは「シミュレーションに正解というのはないが、ぶん殴られて鼻が折れちゃったとなっても困ってしまう。A子風の女性を用意できないとしても、"そうします"と答えてしまってもいい。旦那が"場所を移動しろよ"などと無理難題を言って譲らない感じだったら、そこで土下座しちゃってもいい。むしろギャラリーがいるファミレスの場合、わざとそういう画を作れば、土下座された方が恥ずかしくなってしまい、"ちょっと止めてくれ"という心理になるから」と説明。暴力沙汰は絶対に避ける、話し合いにならなければ土下座という方針を示した。


■「100%解決」の秘密はエキストラ会社経営?

 スズキさんによると、この仕事をしていて、本当に怖い思いをしたことはないという。


 「依頼者が"絶対に殴られます"と言っていても、そのような要素が全くなかったり、"話術に長けています"と言っていてもショボかったり、というケースが何件もあった。そこまで苦労したとか、これは参ったなと思ったことはない。ただ、逆ギレはタブー。役者には"どんなに頭にきても、自分のことじゃないからね"と言い聞かせている」。


 また、謝罪にあたっては、役者のキャラクターも重要な要素だという。「大谷翔平風よりも強面の方が解決しやすい。脅すわけではないが、沈黙の圧力をかける」。時には高級車のセンチュリーなどのアイテムも演出として使うのだという。「だから強面の役者が一番多いが、ゆるふわ系の天然女子もいる。会社のクレーム対応であれば、そちらの方がすぐ許される傾向がある。そういうのが通用しない場合は、宝塚の男役のような女性を送り込む」。


 豊富な人材が集まっている秘密は、エキストラ会社を別で持っているからだ。「エキストラの子たちは役者としての現場がなければコンビニでバイトをしていたり、先が見えにくい生活をしている。その人たちを食べさせてあげようという思いもある」。


 そんなスズキさんでも、"さすがにそれはお前が行け"と思った依頼があるという。「医療ミスをした医者が、自分は捕まりたくないから、と依頼してきた。さすがに医師免許は持っていないし、偽名で行かないといけない。犯罪に加担するようなことはしない、それは無理だと説教した」と驚きのエピソードを明かした。

 今年の年上半期も、様々な謝罪会見が開かれ話題を呼んだ。スズキさんはお詫びの"プロ"として「コインチェックの謝罪会見では、テーブルの上にカンペのような紙があって、それを読んで噛んでた。私からすると"自分のことでしょ、把握してないから紙を見ながら謝罪をしないといけないんだ"と思う。自分のことだったら、紙を見ないですらすら言えないといけない。頭に入れてから来いと思う」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


▶上半期は謝罪会見祭り! “ごめんなさいのプロ” 謝罪代行に密着

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