夜のイメージから一転、五反田がネットベンチャーの一大拠点になったワケ

「飲み屋や居酒屋が多いイメージ。キャバクラが多い、風俗系も多い」。そんな"夜のイメージ"を持たれがちな街・五反田。しかしここ数年、ベンチャー企業が押し寄せ、"シリコンバレー"ならぬ"五反田バレー"と呼ばれるようになっているという。

 現在JR山手線、東急池上線、そして都営浅草線の3路線が乗り入れる五反田駅が開業したのは1911年のこと。都心にもほど近いことから、日本経済の発展とともに商業的な色合いを濃くしていった。1970年には、買い物の殿堂・TOCこと東京卸売センターが完成し街の存在感は拡大。さらに下町へのアクセスにも優れていたことから、モノづくりの街でもあり、メッキ業の株式会社三ツ矢は、創業から87年たった今もこの街に拠点を置く。さらに高級住宅地としての顔も持ち、大企業の経営者なども居住。現在は公園になっている皇后さまのご実家も五反田にあった。

 その五反田がなぜ注目され、若手ベンチャーがこぞって集っているのか。その背景には3つの理由があった。

■リーズナブルな家賃相場、個人オーナー、切磋琢磨できる環境

 1つ目は、渋谷が近いのに格安物件が豊富なことだ。これまで日本のベンチャー集積地と言えば渋谷だった。2000年頃からベンチャー企業が増加し、アメリカのシリコンバレーを模して"ビットバレー"と呼ばれていた渋谷だが、企業の集中に呼応するように家賃は高騰し続けていった。オフィス仲介業の株式会社ヒトカラメディアによると、渋谷の1坪の家賃相場は2万5千円以上にも上る。ところが渋谷から山手線でわずか3駅の五反田の場合、相場は1坪1万5千円程度だという。「坪単価1万円の差なので、従業員が50人規模で100坪くらいの物件だとすると、渋谷と五反田では月100万円程度の差が出る」(同社の木幡大地氏)

 「株式会社ローカルワークス」は、住宅リフォーム業者と客を繋ぐマッチングサイトなどの運営を行い、住宅大手の住友林業などからおよそ2億1千万円の出資を受けるなど、建設業界の注目を集めている。現在、60坪のフロアに22人の従業員が働いており、五反田には3年前に移転してきた。同社代表の清水勇介氏は、家賃相場やアクセスを考えた結果だと話す。

 スキルを売り買いするマーケットプレイスを運営している「株式会社ココナラ」の南章行代表も、渋谷から移転してきた。企業規模拡大に合わせて渋谷を転々としてきたが、再開発に伴う物件減少や高騰から、五反田への移転を決めたという。

 2つ目は、個人オーナーと若手ベンチャーが相性抜群という点だ。一般的にオフィスビルのオーナーは法人が多く、経営の先行きが読みにくいベンチャーが入居審査を通るのは一苦労。3件に1件通ればいい方だという見方もあるほどだ。

 約1万5000店舗が登録し業績が好調なハウスクリーニング業者のマッチングサイトを運営、70人の従業員が働く「みんなのマーケット株式会社」が五反田を選んだ理由は"猫"。代表の浜野勇介氏は「オーナーさんが個人で、まさに"大家さん"という感じの人、臨機応変に対応してくださって、室内で猫を飼うことができた」と話す。「個人のオーナーさんだと、面談をして自分たちの会社のことや今までやってきたことをすると共感してくれて、安心して部屋を貸してくれる」。

 「株式会社エイエイオーエージェンシー」代表の鶴井正博氏は「昭和の初期くらいから城南エリアの中ではかなり早い段階で発展していた街。逆に渋谷や六本木に再開発されてできた新しい物件の方がいいということで出て行ってしまう企業もあるためだ」と説明する。

 3つ目が、ベンチャー共闘、切磋琢磨ができる点にある。「お坊さん便など」のサービスで人気を集める葬儀ベンチャー「みんれび」は、社名を「株式会社よりそう」に変更したばかりだ。代表の芦沢雅治氏は、五反田の変化を肌で感じオフィス移転を決意したのだという。

 マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏も、「起業するなら、断然、五反田だ!あのソニーを生んだ街が、世界を目指すベンチャーを育む」と説いている。そう、かつてはソニー本社も五反田にあったのだ。鶴井氏も「100年近く続く企業もまだ五反田にはあり、ソニー出身の方が五反田で会社を興されているケースもある」と話す。

■福岡、シリコンバレー・テンダーロイン地区を目指して

 そんな"五反田バレー"の繋がりを形にしようと動くベンチャーも現れている。2014年から拠点を置く「freee株式会社」だ。中小零細企業をターゲットに、クラウド上の会計ソフトを運用。現在では約500人の従業員を抱える、五反田ベンチャーの筆頭企業だ。代表の佐々木大輔氏は社団法人化も視野に、それぞれの企業だけでなく、街の発展のためにも手を取り合い、活動していこうと考えている。

 南氏も「ベンチャーは成功するかわからない中でチャレンジしている人たちの集まりなので、会社の枠を越えて教えあったり助け合ったりするのが活発。ネームバリューの点で渋谷に負けるのは間違いないが、やや小さめで成長途中のベンチャーが十分集まっているので、みんなで盛り上げていこうという気運が高まっているタイミング」と話す。

 佐々木氏や南氏らが勧める"五反田バレー構想"。代表理事兼事務局は「株式会社マツリカ」が担い、自治体などとの連携を進めたいと考えているが、そこで注目しているのが全国屈指のスタートアップ支援都市の福岡市だ。

 福岡市は都市機能や交通機関が集中しているだけでなく、スタートアップに対して市が法人税などの減税措置の優遇を決めている。まさに至れり尽くせりの環境だ。南氏も「最終的に福岡のようなスタートアップの集積地として、元々ある企業やベンチャー、そして自治体と共同して何かやっていけるといいかなと思う」と期待を込める。

 また、実はアメリカの本家シリコンバレーにも、ベンチャー企業とともに変化していった街があるという。それが2012年にTwitter社も拠点をおいたテンダーロイン地区だ。かつて周辺の中で最も治安が悪いとされていた同地区だが、市が治安回復を目指し、地域に拠点を移す企業を免税扱いにしたのだ。

 最後に南氏は「五反田に住む企業市民として地元の人たちといい関係を築きながら楽しく働いていきたい。せっかく団体を作り、窓口もできたので、地域のイベントに出たりして、活性化に結びつくような協力ができたら」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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