9月に日朝首脳会談の可能性…拉致問題解決のための課題とは

 "肩透かし"という評価さえあった米朝首脳会談。実は金正恩委員長が"日本人拉致問題は解決済み"という北朝鮮の従来の見解を示さず、「安倍総理との対話にオープンな姿勢だ」と、直接対談にも前向きな姿勢を示していたことが報じられている。

 日本政府はロシアのウラジオストクで9月に開催される国際会議で安倍総理と金委員長が接触することを視野に調整を進めているとみられている。米朝首脳会談を機に動き出した日朝関係。懸案の拉致問題は解決へ向け進んでいくのだろうか。


■金委員長が「拉致問題は解決済み」と言わなかった理由は

 14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した慶應義塾大学の礒﨑敦仁准教授は、トランプ大統領の提起に対する金正恩委員長の反応や日朝協議の可能性について、「拉致問題は解決済みだと言わなかった、ということなのか、それとも"拉致問題は解決済みではない"というニュアンスのことを言ったのかがはっきりとしない。米朝会談を笑顔で終わらせたかっただけかもしれないし、北朝鮮メディアの報道や公式発表の中での言及もまだない。あまり深読みし過ぎるのもよくないかもしれない」と話す。

 その上で「ただ、安倍総理自身が主体的に動くべきだというとおっしゃっていることからも、9月、もしくはもっと早い段階での接触や首脳会談があり得る段階に入ってきた。ただ、安倍総理にとっては自民党総裁選の直前だ。日本にとってプラスの結果になるものでないといけないし、リスクを負いながらということになるのだろう」と説明した。

 日本政府はモンゴルで開かれている国際会議に出席する北朝鮮当局者と接触、対話の糸口を探っているが、北朝鮮側は日本政府当局者との接触について表向き否定、「謝罪や賠償がなければ対話はしない」と強調したという。

 元外交官の松川るい参議院議員(自民党)は「北朝鮮当局者の反応はそういうパターンが多い。賠償については以前からの主張なので、外交官たちの反応もその公式見解に基づいている。拉致問題の解決について金正恩委員長が真剣に考えていたとしても、外交官たちまでが共有してるかどうかはわからないからだ」と話す。


 そして「トランプ大統領が拉致問題を提起したことで、これをなおざりにしていると日本と対峙できないのかもしれないと感じたはずだ。金委員長が"解決済みだ"と言わなかったのも、拉致問題を解決して日本からの経済援助得たいという意図があったからだろう」と推測した。


■北朝鮮へのアプローチは今がチャンス?

 きのう拉致被害者家族らと首相官邸で面会した安倍総理は「拉致問題が前進していくものにならなければ日朝首脳会談は意味がない。日本が主体的に解決をしていかなければいけない問題だと思う」と話した。

 松川氏は「北朝鮮は相手が怖いか、何かしらインセンティブがなければ動かない。日本のことは軍事的にも怖くないし、相手にする必要がないと思って舐めてきただろう。その点、楽観主義かもしれないが、今回は日本を欲していると思う。金委員長にとって日本人拉致は父や祖父がやったことであって、自分がコミットした犯罪ではない。スイス留学の経験もあり、西側諸国や中国のように体制を維持しながら経済発展している国のことも知っている。冷徹で合理的な金委員長なら、王朝をあと40年は維持させるためにも、他国に比べて巨額な日本の経済支援が必要だとわかっているはずだ。日本としても外交努力として使えるものは何でも使っていくべきだ。経済重視、米朝との協議プロセスの開始、そして安倍総理がいるという状況をうまく使うべきだ」と指摘。

 礒﨑氏も「拉致問題を解決させたとしても、父や祖父の否定にはならない。米朝首脳会談についても"新しい国際環境に合わせてやったことだ"という言い方をしている。2002年に小泉総理が金正日国防委員長と会談をした時も、"拉致は日本政府の捏造だ"という主張を180度転換させた。体制の温存や巨額の資金を得るために政策を変更させて生き残ってきたのが北朝鮮だ。ただ2002年当時の北朝鮮は餓死者が出るほどの経済状況から這い上がったばかりで、中韓とも貿易していなかった時代。そこが今とは違う」と話した。


■「一回で全て解決というわけにはいかない」

 拉致被害者家族からは「家族はみんな老化してきたし、体力的にも弱っている。できるだけ早くみんなが家族と会える状況を待ち望んでいる」(横田早紀江さん)という意見が出た一方、「今まで何となくずるずる騙され続けたという経過がある。今回はそういうことは絶対にないように的確な対応をしてもらいたい。下手に焦って同じ轍を踏むということは許せないので、確実な考えのもとに確実な対応をお願いしていきたい」(飯塚繁雄さん)との指摘もある。

 テレビ朝日の小松靖アナウンサーが「ストックホルム合意も、結果的に日本にとって満足いく調査結果が出されることなく、うやむやになったまま。北朝鮮は不誠実な態度を続けてきたと思う。解決の兆しも見えているのかもしれないが、あくまでも悲観的に捉え、それに沿ったアプローチをしていかないと、また痛い目に遭うのではないかというのが、ごく自然な国民の反応ではないか。もちろん一刻も早い解決が望まれるが、米朝交渉もまた始まったばかり。どのタイミングでアプローチするのが最適なのか。世論もメディアも含め、"遅い"などと言い過ぎないことが重要ではないか」と疑問を呈した。

 礒﨑氏は「もちろん人命がかかっていることなので、スタートは早い方がいいと思うが、だからこそ難しい。調査を重ねて、一人でも多く見つけていくという方法もあるだろうが、"一回で全ての結果を出してくれるはずだ"という日本の世論の反発や、首相がそれを優先させてしまうことも予想される。首脳会談は必要だが、"一括妥結"への期待値を挙げすぎると、かえって解決が難しくなるのではないか」と懸念を示し、「拉致被害者のみならず、日本人妻や日本国籍を持っている人が北朝鮮には6000人住んでいるということも忘れがちだ。日本人の命、人権はどんどん取り返していくべきだと思う」と訴えた。

 松川氏は「いつまでも危険な状況のままでいるわけにはいかないので、北朝鮮との国交正常化は必要なことだった。交渉で北朝鮮の下に立つようなことはすべきではないし、小出しにされ、いろいろ引き出されるという苦い経験もあるので、一回ですべて解決、というハードルを日本自身が設けるべきではない。日本がいかにシリアスに拉致問題、国交正常化を捉えているかを突きつけて、真剣に考えさせる。これから米朝のプロセスが始まる状況にあるし、中国やロシアとの関わりも出てくるはず。タイミングでいえば始めるなら今が一番だ。ただ、米朝首脳会談の場合、ポンペオ国務長官と金英哲副委員長のラインなどがあった。まずは日本も信頼できるコミュニケーションラインを作ることが実務的には非常に重要だし、政府も模索している」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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