テレビマンも“テレビ離れ”の時代? ヒットする深夜番組はこうして生まれる

■ テレビマンも“テレビ離れ”の時代? ヒットする深夜番組はこうして生まれる 『虎の門』(AbemaTV版)、『夜の巷を徘徊する』小田隆一郎プロデューサーインタビュー

(テレビ朝日の小田隆一郎プロデューサー)

 お題に沿った言葉でしりとりをする「しりとり竜王戦」や、「うんちく王」「話術王」など数々の名物企画を生み出した深夜バラエティー『虎の門』。放送終了から9年経った今も、復活を望む声は多く、2017年5月1日にはAbemaTV(アベマTV)版として『虎の門 TIGER'S GATE-LIVESHOW』も放送された。


 今年もAbemaTVにて『虎の門』の放送が決定。テレビ朝日の人気バラエティーを放送する 『バラエティーステーションpresented by テレ朝』の中で、5月20日の夜9時から放送される。


 今回は地上波の『虎の門』初期より番組に携わり、AbemaTV版の指揮を執る、テレビ朝日の小田隆一郎プロデューサーにインタビューを敢行。『虎の門』の新企画や、ネット番組とテレビ局との関係を聞いた。


番組の“持ち味”はそのままに SiriやLINEを使って大喜利も

――小田さんは『虎の門』が当時放送された初期から番組に携わっていたそうですね。


小田隆一郎プロデューサー(以下、小田):はい。2001年、『虎の門』が新番組として始まる時から参加させてもらいました。ADからディレクターにステップアップするようなタイミングです。

開始当初は深夜1時台の3時間生放送で、お笑い系のコーナーだけでなく、いとうせいこうさん司会の激論企画や、井筒監督の映画コーナー、アーティストを招いての歌コーナーもあったんですよ。当時のトップアーティストの方々が、深夜2時とかに生放送で歌って下さっていたんです。とにかく、バラエティー班と音楽班とが連動して「新しい自由な番組を作ろう」という気概に満ちていました。


――前回のAbemaTV版は生放送でしたね。やはり、生放送へのこだわりといったものがあるのでしょうか?


小田:5月20日に放送する『虎の門』は出演者さんのスケジュールの都合もあって、生放送ではなく事前収録になりました。ただ、収録時間は放送分の3時間しか撮らない、限りなく生放送に近い“擬似生”という形で収録をしたんです。番組ではiPhoneの「Siri」を使った企画をやったのですが、こちら側の技術トラブルが原因で収録が止まってしまって。「もしこれが生だったらどうするんだよ……」って思ってしまいました(苦笑)。僕を含め、スタッフの多くは当時のメンバーが集まっていたのですが、ちょっと気の緩みがあったところは反省点ですね。

他にもLINEを使って「LINEなりすまし大喜利」をやりました。テレビ画面のサイズじゃなくて、スマートフォンのサイズで番組を視聴すると、LINEの名前の文字が小さすぎて見づらいという問題が! もっと早く気づけって話ですが……。人の名前が分からないと、「この人のLINEだから笑える」という根底の部分が成立しない企画なので困りました。「Abemaと地上波を同じ感覚で作っていてはいけないなぁ」と、日々試行錯誤しています。

(『虎の門』がAbemaTVバラエティーステーションで復活! 放送は5月20日夜9時から)


――深夜番組の放送当時はガラケーの時代でしたね。SiriやLINEを使った企画は新鮮だったんじゃないでしょうか。


小田:5月20日の放送は全て新しい企画です。『虎の門』は「しりとり竜王戦」など、名物企画を生み出してきた番組ですが、新しい企画でも「『虎の門』らしい!」と視聴者の方に言ってもらえたら良いなと思っています。


――『虎の門』がAbemaTVで復活すると聞いたときには、率直にどう思いましたか?


小田:もともと『虎の門』の放送が終わったのは、予算削減など止むに止まれぬ諸事情だったと思います。もちろん残念でしたし、悔しく思いましたが、当時はしょうがないなあという気持ちが大きくて。なので、こうやってAbemaTVで復活できて、観て下さる方たちがいるのは作り手としてすごくうれしいですよね。

一方で、昔のテイストを生かしつつ、ネットでやる意義も考えていかないといけないなって思っています。今地上波で『虎の門』をやることはできますが、逆にネットで放送するなら、それ相応の方向性を探る必要があるかと……。


――ネットでやる意義って具体的にどういうことですか?


小田:深夜番組の時代だった『虎の門』では、井筒和幸監督に自腹で映画を観てもらって好き放題レビューする「こちトラ自腹じゃ! 」というコーナーがありました。自腹で映画を観てもらって、その代わりに感想をズバスバ言ってもらうことが魅力なのですが、映画会社さんからするとたまったもんじゃないですよね。井筒監督にボロクソ言われるので。

なので、だんだん映像や写真を映画会社から借りられなくなって、最終的にはスタッフの手描きイラストで内容を紹介していました。イラストになってもその企画はずっと続けていて、そうすると今度は映画会社さん側が「どうせ(番組で)取り上げられるんだったら、いっそしっかり紹介してもらったほうが良いだろう」とスタンスを変えてくれて、また映像素材を借りられるようになったんです。まさに“雪解け”ですね。「こちトラ自腹じゃ! 」は個人的にも好きなコーナーでしたし、粘り強くやることで困難を乗り切ることができた思い出深い事例です。

今はコンプライアンスの時代になって、“危険球すれすれのボールを投げる”ような内容は、地上波ではなかなか難しいのが現状です。でもネット番組は、もっと自由な表現や発言ができる場であるべきだと思います。それこそが、ネット番組の持つ存在理由の1つというか……。AbemaTVの『虎の門』も、そんな意識でやっていきたいなぁと考えています。


『虎の門』が、AbemaTVバラエティーステーションで復活! 放送は5月20日(日)夜9時から(※見逃し防止には番組表の「通知を受け取る」がおすすめです)

テレビマンも“テレビ離れ”に?  「ラーメンに興味がないラーメン屋」

――いつ頃小田さんはテレビ朝日に入社されたのですか?


小田:新卒で1996年入社なので、もう22年経ちました。当時は一生学生をやりたいと思っていたような人間で、何の因果かテレビ業界に入ってきたダメなテレビマンなんです(笑)。


――AbemaTVは先日2周年を迎えたのですが、小田さんのようなテレビ局歴の長い方からするとAbemaTVの登場ってどう感じましたか?


小田:狭い見方をすると、結局視聴者の時間を取り合うことになるのでライバルだと思っています。『亀田興毅に勝ったら1000万円』なんて、地上波の番組から多くの視聴者を奪ったんじゃないですか。実際僕も観ましたし。日頃からボクシングの中継はよく観るのですが、プロ同士の戦いって技術的に凄いから、ある意味キレイなんですよ。でも、出演者だったホストさんやYouTuberさんなど、素人に近い人の戦い方って洗練されていない分、逆に血なまぐさくて。それを亀田さんが的確に倒していくという。ネット番組ならではの企画だったと思います。

僕は子供がいるのですが、やっぱり子供はYouTube大好きですし。でも、スマホを使ってAbemaTVやYouTubeを観ていると、LINEだったりTwitterだったりスマホで他のことができない。そういう意味では、〇〇の番組はネット向き、△△の番組はテレビ向き、という“住み分け”や“共存”は可能だと思うんです。


――おっしゃる通り、全てをネットで放送すれば良いというわけではないですよね。


小田:AbemaTVは放送中にコメントがたくさんついて、リアルタイムで見ることができますが、あれって面白いけれど、恐い部分もありますよね。誹謗中傷を出演者さんが直接見てしまう可能性もある。こっちが予想していないシーンで過激なコメントがついたりして、テレビとは違う部分で気を遣うポイントは多いです。


――小田さんが最近ご覧になって「面白かった!やられた!」と感じた番組ってありますか?


小田:他社ですが、Amazonプライムで配信されている『今田×東野のカリギュラ』などは、コンプライアンス度外視のすごい番組ですよね。

あと、恥ずかしながら実は僕自身もテレビ離れ中なんです。おじさんになるとドキュメンタリーとスポーツ番組しか観なくなるんですよ(笑)。リアルな事にしか興味がなくなるというか……。バラエティーでも演出過多な番組よりも、自然体で観られる番組が心地良いんです。完全に加齢ですね。

自分で言うのも何ですが、テレビを観ないテレビマンって信用ならないですよ。「ラーメンに興味がないラーメン店」のラーメンなんて食べたくないですもんね。


マツコ『夜の巷を徘徊する』の企画書は“一行”だった

――現在地上波ではマツコ・デラックスさんの『夜の巷を徘徊する』を担当されているとのことですが、『虎の門』も『夜の巷を徘徊する』も、すごく自然体で楽しめる番組ですよね。


小田:『夜の巷を徘徊する』はテロップも多くないですし、どこに行くとか何をするとか一切決まっていませんから。以前「鶯谷」に行った際も、僕らスタッフは収録前にある程度「ここらへんを歩くだろう」と想定しておくのですが、マツコさんはカメラがまわってすぐ、全く正反対に歩いていきましたね。そういう、予想できない動きが毎回面白いなと思ってやっています。


――今では人気番組となった『夜の巷を徘徊する』ですが、よくよく考えるとかなり攻めている企画だと思います。


小田:いろんな企画案が出る中で、この内容に落ち着くまでけっこう時間かかりました。マツコさんの楽屋で11時間も打合せしたこともあります(笑)。挙句の果てに僕が寝てしまって終わりました。最初の頃は丁寧に企画書を作って打合せしていましたが、最後の方は1行の企画案を羅列しただけの紙を持っていく感じで…。そんなシンプルな企画案の1つ「暗闇でマツコさんが歩く」というジャストアイデアが「良いかも」という事になり、この番組が誕生したんです。もう3年間やらせてもらっていますが、今後も想定外な出会いに期待したいですね。


――今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。今後の番組も楽しみです。


(テキスト:中村梢 編集:鈴木ミユキ)

(写真:野原誠治)


▷『虎の門』が、AbemaTVバラエティーステーションで復活! 放送は5月20日(日)夜9時から

(※見逃し防止には番組表の「通知を受け取る」がおすすめです)

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