白石和彌監督が語る松坂桃李の魅力「一緒に勝負ができる人」 『孤狼の血』インタビュー

 「警察小説×『仁義なき戦い』」と評される柚月裕子のベストセラー小説を原作とした映画『孤狼の血』が5月12日(土)から全国公開される。メガホンを取ったのは『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』などの白石和彌監督。物語の舞台は暴対法成立以前の広島・呉原市。暴力団系列の金融会社社員失踪事件をきっかけに捜査する警察と、暴力団組織間の激しい抗争を描くアウトローな「男」の映画だ。


 今回、AbemaTIMESはやくざとの癒着が噂される刑事・大上章吾(役所広司)とバディを組む刑事二課の新人・日岡秀一役を演じた松坂桃李と白石監督にインタビュー。松坂が白石組に参加するのは『彼女がその名を知らない鳥たち』に続き、本作が二度目。作品に対する思い、撮影の裏側を聞いてきた。

過酷な撮影現場 300人いたギャラリーが最終的に2人に

(c)2018「孤狼の血」製作委員会


ーー松坂さんは『彼女がその名を知らない鳥たち』に続いて二作目の白石組でしたがいかがでしたか?


松坂:白石監督にだいぶおもちゃにされました。でも、それが心地よかったというか、楽しかったですね。いい思い出しかないです。撮影も朝までやったりとか、体力的にきつかったんですけど。朝まで……きつかったですね(笑)。


白石監督:きつかったね(笑)。外に桃李君が出るのを待って、300人くらいギャラリーがいたんですけど、最後2人になっていましたね。


松坂:徐々に減っていく(笑)。


白石監督:桃李君、それはもうハグしてあげたら?っていう(笑)。


——ハグしたんですか?


松坂:いや、ハグはしてないです(笑)。けど、ハグしたいくらい呉の方たちはあったかかったです。


ーー監督から見て、松坂さんが変わったな、と思うところはありましたか?


白石監督:『かの鳥』(※『彼女がその名を知らない鳥たち』)をやった時から「この人は一緒に勝負できる人なんだ」って気づきました。『かの鳥』は時間も短かったので、ようやくどっぷりできて、変わったというよりは僕がむしろ桃李君の魅力に気づいていったという感じです。

ーー監督はなぜ日岡役に松坂さんを抜擢したのですか?松坂さんは、日岡に通じるところがあると感じますか?


白石監督:日岡の大上や職務、物事に対してまっすぐ向かっていく感じが、桃李君の役に向かう姿勢とダブると思っていました。


松坂:監督におっしゃっていただいたように、僕自身も役に対しては日岡のように向き合いたいと思っています。そこが共感できるとこですかね。


白石監督:美人局をしなさそうな感じとかね。


松坂:美人局ね〜。


白石監督:してるの?(笑)


松坂:しないですよ!(笑)


白石監督:(笑)でも桃李君は頭のいい役者ですね。日岡っていう役は後半にかけて変わっていくかなり難しい役柄なのですが、その変化の過程をストーリーを受けて上手に演じていました。その良さは編集しながら気づきました。これが正解だって。なるほどな、アッタマいい〜ってなりました。


松坂:ありがとうございます。


絶対使えないと思った「真珠を取り出すシーン」

(c)2018「孤狼の血」製作委員会


ーー撮影していてテンションの上がったシーンを教えてください。


白石監督:ファーストカットのパチンコ屋に入る直前の、役所さんと桃李君の歩きのシーンです。支度が終わって出てきたときの2人を見て、一気に世界観が見えました。

ファーストカットが終わったときに役所さんが「緊張した〜」って言っていて、役所さんほどの方でも緊張するんだって思いました。「俺ヤクザに見えますかね?」って聞いてきて、「いやいや(大上は)刑事ですから」っていう(笑)。

そこからずっとテンション上がりっぱなしですね。ほぼ最終日に近い日に(陰茎から)真珠を抜くシーンがあったので、まだあったよこんなシーンって思いました(笑)。ずっとそんなことの繰り返しです。


ーー真珠を抜くシーンは衝撃でした。どのように撮影されたのですか?


白石監督:あれはそういう(人体風の)模型を美術の方に作ってもらって、スタッフがそれを切って撮影しました。……でも、今成人男性の3人に1人が真珠入っているらしいですよ?


ーーえ?そうなんですか!?


白石監督:桃李君も入ってる。


松坂:入ってないです!(笑)


白石監督:入ってないか(笑)。


ーー(笑)松坂さんはいかがでしょうか?


松坂:衣装合わせのときからテンションが上がりました。最初の牛乳をぶっかけるシーンも好きです。笑っちゃいましたけど(笑)。やったことないですし。それこそ真珠取り出すシーンも興味深くて印象に残っています。(このシーン)絶対使えないだろう〜と思って試写を観たら使われていて(笑)。楽しかったです。


ーーその他、お気に入りのシーンがあったら教えてください。


松坂:僕はこの映画の1発目のシーンも好きです。あのシーンで、『孤狼の血』っていう映画はここからが入り口だよ、っていうの教えてくれるような。観ていてすごくワクワクするじゃないですか。ワンシーン目でこれ来るの?これ以上あるの?みたいに、ハードル上がる。でもそのハードルをどんどん越えていくという。好きですね。


白石監督:ロケハンが好きで、海沿いを車で走っていたら牡蠣筏が浮かんでいて。それが気になったんです。あそこで撮影したいと。使えるようなシーンないかな、と思ってそれであのシーンに使ったんですけど。


松坂: そこでピエール瀧さんとのシーンがあるんですけど、僕らを連れてきたおじいちゃんも座って写っているんですね。その方は、実際に呉で働いている丸勝水産の方なんですけど……あの方めちゃくちゃいいですよね。


白石監督:いいねえ。


松坂:何事にも動じない。銃とか撃っているのに驚かないし。すごいな、この人!ってなりました(笑)。


白石監督:あのとき瀧さんが、「監督、知らないかもしれないけど俺泳げないからね?」って、「なんでここにしたの?」って言っていました(笑)。


二度目の共演で役所広司の印象が変化「こんなに仲良くしてもらっていいんですか?」

(c)2018「孤狼の血」製作委員会


ーー役所さんはどんな方でしたか?


白石監督:桃李君にも共通するものを感じているんですけど、すごく剝き身な感じで演じているという。変な小細工をしないで、ちゃんと腰を据えて演じようとしている感じがものすごくあります。

日本アカデミー賞のときに是枝裕和監督と役所さんの話になり、「特別なことをしようとしないのにああなるの凄いですよね」って二人で感心していました。ご本人は意識してないと思うのですが、多分その存在感とかこれまでの生きざまが周りにそう感じさせるんでしょうね。

桃李君に対しても、小細工しないで勝負できる役者さんだなと思っています。前貼りはよくしていますけど(笑)。


松坂:前貼りはしてますね(笑)。

僕は役所さんとは『日本のいちばん長い日』以来の二回目なんですけど、それで思ったことがあって。『日本のいちばん長い日』のときは、役所さんは誰とも話さなかったんですよ。撮影期間中、話しても一言二言みたいな。ピリッとした空気をずっとまとっている感じでした。

でも『孤狼の血』に入ったときは全然テンションが違って、スタッフさんやキャストとなんの気なしに会話していました。あったかい感じでコミュニケーションをとっていて、その姿が大上とリンクしました。現場での愛され方を役柄に合わせて変えているのかなと。もしかしたら役所さんには全体図が見えているのかもしれないですね。ご本人に聞いてみないとわからないんですけど。


ーー『日本のいちばん長い日』の頃から印象は変わったと。


松坂:だいぶ変わりました。(『日本のいちばん長い日』での)陸軍大臣の時は威厳を感じて近寄りがたいというか、今回は「こんなに仲良くしてもらっていいんですか?」「一緒にご飯行っていいんですか?」みたいな(笑)。


松坂桃李、白石監督にお願い「濡れ場のハードルを上げないで!」

(c)2018「孤狼の血」製作委員会


ーー過激なシーンもたくさんありましたが、白石監督から無茶振りはありましたか?


松坂:無茶振りはなかったんですけど、濡れ場っぽいシーンのときに毎回茶化すのやめていただけますかね?(笑)


白石監督:俺が?(笑)


松坂:妙なハードルの上げ方をするんですよ。「できるよね?」みたいな(笑)。


ーー服を脱がすシーンだったら、松坂さんの右に出るものはいないとか。


白石監督:いないですね。


松坂:いるいる(笑)。


白石監督:(『娼年』の)三浦大輔監督も何も演出してないでしょ?


松坂:してますよ!(笑)めっちゃリハーサルしています!アドリブじゃないです!(笑)

ストーリー

(c)2018「孤狼の血」製作委員会


 物語の舞台は、昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島。所轄署に配属となった日岡秀一(松坂桃李)は、暴力団との癒着を噂される刑事・大上章吾(役所広司)とともに、金融会社社員失踪事件の捜査を担当する。常軌を逸した大上の捜査に戸惑う日岡。失踪事件を発端に、対立する暴力団組同士の抗争が激化し……。


写真:野原誠治

テキスト:堤茜子

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