地下アイドル、大学生、生活保護受給者…様々な人を巻き込み拡大する転売市場の問題点

 10日、ネットオークションで羽生結弦選手の記念Tシャツが定価を大幅に上回る価格で取引されていることがわかった。先月末には京都の高島屋で買い占められた人形が中国のサイトで高値転売された問題など、転売関連のニュースが相次いでいる。


 10日放送のAbemaTV『AbemaPrimeでは』、拡大する転売・リユース市場の実態と背景を探った。


■「転売屋」で稼ぐ大学生も

  本来、中古品の売買を反復して行う場合は古物商許可が必要だ。物品を質として預かることで金銭を貸し利益を得る質屋も、都道府県の公安委員会の許可が必要だ。また、チケット類を高値で販売するダフ屋行為も都道府県の条例などで規制が進む中、メルカリやヤフオクなどでは個人が簡単に物品を売り買いできるため、商品を転売目的で大量に購入し、ネットオークション等で高値で販売する「転売屋」として稼ぐ人も増えているという。


 取材に応じた19歳の男子大学生も、家電製品やアパレルなど、幅広く商品を転売している。

 「友達に"並び屋"のバイトに誘われて一緒に並んだが、よく考えると自分が並ばせる側になった方が儲かるんじゃないかと思って」。並び屋とは、先着順や抽選で販売されることもある人気商品の発売日に依頼者に代って列に並ぶ仕事だ。男子大学生はTwitterやネット上の掲示板などで「並び屋」を募集、抽選で当選した人には3000円の報酬を、外れた人にも1000円の報酬を支払って商品を購入、それらを転売して月に30万円ほどを稼いでいるという。「募集してすぐ10人とか来ちゃう。学生から仕事のないお年寄りの方まで様々。貧富の差が激しくなっているのか、少しでも稼ぎたいという人が増えたと思う」。

 京都高島屋で起きた問題では、並び屋を使ったとみられる1人の客が限定販売された100体の人形(1200万円分)を買い占め、中国のサイト上で高値転売していた。骨董通り法律事務所の福井健策弁護士は、「"1人2体まで"という条件がはっきりと告げられていたので、明らかに売り出しの条件に違反している。店をだまして購入したという詐欺罪の可能性や、業務妨害罪の可能性も出てくる」と解説する。


■中国人マフィアが路上生活者たちを動員

 そんな転売屋と並び屋が集まるという情報を受け、現場を尋ねた。早朝の公園に続々と集まってきた15人ほどの男たち。駅で交通費を手渡され、電車で1時間ほどのところにある家電量販店へ到着した。開店まではまだ2時間ある。今日のお目当ては、20台が抽選販売されるノートパソコンだという。外国語を話す転売屋の男は、並び屋の男たちを引き連れ、近くの駐車場で辺りを警戒しながら指揮を執っていた。抽選の結果、6台の購入に成功。男たちは数百メートル離れた場所へ移動し、現金を受け取っていた。

 並び屋の男性によると、この日のメンバーの3割が路上生活者で、自身もそうだという。転売屋は中国人のマフィア構成員で、日本で仕入れた電化製品を中国の富裕層に高額で転売し、利益を得ているというのだ。購入したノートパソコンについても5倍ほどで転売できるという。しかし報酬は2000円、徹夜で並んだ場合でも4000円が相場だといい、この日も6時間並んで受け取った報酬は2500円だった。それでも男性は「バイトをやるには履歴書や身分証が要る。それが必要ないから金額云々じゃない」と話す。

 元転売屋の加藤さとし氏によると、転売業者は数万人に上り、中国人が多いという。また、店員に金銭を渡して発売日の情報を手に入れるなど、悪質な行為も横行しているという。


 並び屋の男性は「この仕事で得た金はきれいな金じゃない、汚い金。一般人がすごく迷惑していると思う。常に心のすみに悪いという気持ちはある。それでもこっちはお金が欲しいから、気にしていられない」と心境を吐露した。


■アメリカでは「並び屋」が職業化

 ミニカーなどのコレクターとしても知られる経済アナリストの森永卓郎氏は「私の分野でも、限定商品に並ぶ行列の先頭から100人くらいはほぼ転売屋だと思う。全国各地で発売されている限定商品をいちいち買いに行く暇はないので、彼らがごっそり買って、後で売ってくれるからこそ、他のコレクターが入手できるという構造がある。確かにコレクターがたくさんいる中国にも流れてはいるが、メーカーからすれば、一種の商社みたいな役割を果たしているという部分も否めない」と話す。

 すでにアメリカではプロの並び屋が週に10万円を稼げるほどの仕事として確立されており、ニューヨークの並び代行会社「Same Ole Line Dudes」では、「2時間の利用で45ドルから、30分につき10ドル追加」という料金設定になっている。4時間で約9000円、24時間で約5万円といった高額な報酬となる。森永氏は「日本でも本来は1000円くらい取れるはずだが、生活保護を受けている人たちが買い叩かれてしまっている。むしろ彼らがまともな時給を受け取れるようにしてあげたほうがいい」と指摘。

 また、「サラリーマンだと、お小遣いだけではコレクションがなかなか進まないので、私の友達も余分に買ってメルカリとかヤフオクで転売して収益得ている。やっぱり生活の工夫の一環でもあるし、彼らを非難する気にはなれない」とも話した。


■「ぼったくり転売」で稼ぐ地下アイドル「良心の呵責が…」

 転売市場が活況を見せているのはアイドルの世界も同様だ。取材に当たった山田菜々がネットを検索してみると、もともと1000円で販売された直筆サイン入りのグッズが高値で取引されていた。

 8日、80組以上の地下アイドルが集結するライブイベントが都内で開催された。物販コーナーではTシャツなどが飛ぶように売れており、とりわけメンバーとの記念撮影="チェキ会"は大人気。相場はサインなしで500円、サインありは1000円程度。しかし、地下アイドルの仕事だけでは安定した収入が得られず、生活が厳しいと話す女性も少なくない。

 そこで手っ取り早く稼ぐ手法を編み出す地下アイドルもいる。自ら「ぼったくり物販」と銘打ち、100円ショップで仕入れたタオルにサインし、1000円の値段を付け販売していたという地下アイドルは「ファンの人はそれが一番欲しいみたいだけど、さすがに良心の呵責が生まれてやめた」と明かした。


■転売を煽り、ブランド価値を上げる戦略も?

 影響はファッション業界にも及ぶ。原宿のショップで販売されていた16万円のシルバーアクセサリーが300万円になるなど、超高額商品も存在しているが、最近では店側が転売を煽って限定商品を販売しているケースもあるという。そのようにして、商品や価値ブランドを上げる戦略というわけだ。

 イラストエッセイストの犬山紙子さんは「買えなかったブランドの限定商品がメルカリに高値で出品されていることもある。欲しいけれど、"転売目的の人にお金を出すのか"と思って諦めることがある。本来とは違うところにお金を流すというのは、そのブランドを応援していることにはならないと思う」と話す。


 社会問題に取り組むリディラバ代表の安部敏樹氏は「アートの分野でも、日本ではアーティストから直接買ってくれる人は少なく、海外で買ってもらったことで有名になり、逆輸入で日本に入ってきたものが買われるケースが多い。しかし結局は転売になるので、アーティストにはお金が入ってこない。また、若い人たちはフリマアプリで中古品を買うのが極めて自然な感覚になっている。ものの価値をどう考えるのか、どの線からが良くないことで、どのように規制するのかは難しい問題だ」と指摘した。

 この、「リユース」とよばれる中古品市場規模の推移を表したデータによれば、2009年以降、取引高は増加の一途をたどっており、2015年には1兆6517億円に達している。また、副業をする人も増加しており、「アフィリエイト:1商品100〜5万円」「スマホ写真販売:1枚50〜1000円」などでお小遣い稼ぎをする人もいる。

 ますます拡大する中古・転売市場に、どう向き合うかが問われている。


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