小日向文世、妻に飽きられた夫役に共感「だいたい捨てられる人生を送ってきたので(笑)」

 19世紀末の欧米社会に物議を醸し、今もなお人々の心を揺さぶり続けるヘンリック・イプセンの代表作『ヘッダ・ガブラー』が栗山民也の演出で4月7日(土)よりBunkamuraシアターコクーンにて公演される。初日公演を翌日に控えた6日、公開ゲネプロ取材が行われ、キャストの寺島しのぶ、小日向文世、水野美紀、池田成志、段田安則がステージに登壇。作品に対する思い、意気込みを語った。

 高名な将軍の娘として生まれ、美貌と才気に恵まれた女性・ヘッダ・ガブラー役を演じた寺島は「ヘッダ・ガブラーというと『悪女』というイメージがあると思うのですが、どうしてそういう風になってしまったのかという内情も緻密に考えて、細く栗山さんが演出してくださいました。自分の家の環境もヘッダ・ガブラーのようでしたので、そこも組み込んでできたらいいなと思っております。なかなか洋物ということとタイトルが『ヘッダ・ガブラー』ということで、とっつきにくいかもしれませんが、内容は普遍的でわかりやすいものになっていますし、共演者の方も技の応酬ですのでそこを見ていただければと思います」と挨拶。

 ヘッダというキャラクターについては「家が偉大すぎて羽を伸ばせなかった。カゴの中にずっと入れられて、世間体を気にして、絶対外にはみ出してはいけないような教育を受けて生きてきた。でも、その中の歪みや、彼女の中の渇望がどんどん変な形で煮えたぎってきてしまって……出たいのに出られなかった。自分が嫌な思いをするのは嫌なんですけど、男の人だったり夫人だったり人がぐちゃぐちゃになっていくのを見て楽しむしかない、悲しい女の話です。やればやるほど、寂しい人だな、悲しい人だなと思って演じています。そういう生き方しかできないヘッダ・ガブラーはかわいそうな人だなと思います」と、その印象を語った。

 ヘッダの夫であるイェルゲン・テスマン役を演じた小日向は、寺島との共演に対し「演出の栗山さんとご一緒したのは、結構前……40代の頃で、その時の相手もしのぶちゃんだったんですよ。二度目の夫婦役だったんですけど、ものすごい時間が経って、寺島さんはお子さんがいるにもかかわらず、印象が変わらない」とコメント。

 ヘッダの学生時代の後輩であるエルヴステード夫人役の水野は、自身の役について「とにかくヘッダ・ガブラーにいじめられてもついていくという役です」と説明。

 「演出が日々増えていくのですが、『いじめられ度合い』っていうのか……手(を出されるの)が増えてきて。髪を引っ張られたりつねられたり、暴力が増えていっています(笑)」と栗山の演出を振り返った。

 ヘッダの昔の恋人・エイレルト・レェーヴボルク役を演じた池田は「まず名前が言いづらいなっていうところから始まって、一体できるのだろうかと思っていたのですが、日々ちょっとずつ掴んでいきました(笑)」と冗談交じりに語り、「シーンとしては怖い!いや!っていう雰囲気なのですが、小日向さんが素敵な言い間違いをしてくれて、ほんわかした稽古場でした(笑)」と稽古場の様子を紹介。

 ヘッダに想いを寄せるブラック判事役を演じた段田も「稽古場のスターは間違いなく小日向さんでありました(笑)。小日向さんは前もご一緒して、楽しかったんです」と小日向の印象について語り、「最初本を読んだ時、これどこが面白いんだなと思いましたが、人のシーンを見ると『これいいんじゃないの?意外といけるんじゃないの』と思っております(笑)。これは成功したら寺島さんのものでございます。私たちには関係ございません。失敗した場合も寺島さんの責任。私たちには関係ありません(笑)。ですが、きっと成功するのではないかと思います」とジョークを飛ばし、会場の笑いを誘った。

 さらに同作にはヘッダとブラック判事のラブシーンも登場するが、段田は「(ブラック判事は)ヘッダさんのことが好きで、私は綺麗な女性が割と好きなもので、共通するところが多い役です(笑)。時代背景も違うのですが、分かるなという感覚がありました」と自身の役との共通点について言及。

 一方、夫にも関わらずヘッダには一切触れられなかったというテスマン役について、小日向は「テスマンはいわゆる色男ではないんですよ。ヘッダには全然相手にされてないし、どちらかというと飽きられてる。そういうのは僕、身近に感じています。だいたい捨てられる人生を送ってきたので(笑)、非常にやりやすい。色男よりこっちの方が分かるので(笑)」と共感。「人間って悲しいな、愛すべき存在だなと思って演じています」と語っていた。

シス・カンパニー公演『ヘッダ・ガブラー』

作:ヘンリック・イプセン 演出:栗山民也

2018年4月7日(土)〜4月30日(月休)Bunkamuraシアターコクーン

出演:寺島しのぶ、小日向文世、水野美紀、池田成志、段田安則 ほか

※チケットはBunkamuraチケットセンター、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケットで発売中。当日券は全ステージ、開演1時間前より劇場にて発売。


ストーリー

 高名なガブラー将軍の娘で美しく気位が高いヘッダ(寺島しのぶ)は、社交界でも話題の中心にいて、いつも男たちに崇められる魅力的な存在だった。しかし、頼りの父親が世を去り、ヘッダは周りの男たちの中から、将来を嘱望されている文化史専攻の学者イェルゲン・テスマン(小日向文世)を選び、世の女性たちと同じように、結婚する道を選んだ。

 この物語は、二人が半年の長い新婚旅行から帰ってきた翌朝から幕をあける。

 新居には、イェルゲンの叔母ミス・テスマン(佐藤直子)とメイドのベルテ(福井裕子)が二人を待っていた。

 彼らに思いやりを示すイェルゲンに対し、新妻ヘッダは、自分が強く望んで購入させたにも関わらず、新居への不満を並べ、すでにこの結婚に退屈している様子を隠そうともしない。

 そこへ、昔からの知り合いであるエルヴステード夫人(水野美紀)が訪ねてきた。今は田舎の名士の後妻となった彼女だが、義理の子供たちの家庭教師だったエイレルト・レェーヴボルク(池田成志)を探しに街にやって来たのだという。レェーヴボルクとは、イェルゲンのライバルであった研究者で、一時期、自堕落な生活で再起不能と言われたが、田舎町で再起。最近出版した論文が大きな評判をとっている男だった。

 そのレェーヴボルクこそ、ヘッダのかつての恋人だった。しかし、彼のヘッダへの執着がエスカレートすることに対し、ゴシップのネタにされることを恐れたヘッダが、拳銃で彼を脅して一方的に関係を断ち切ったという過去があった。ヘッダとの関係を知らないエルヴステード夫人は、彼を再起させるために論文執筆にも協力したことを語り出し、都会に戻った彼が、また昔の自堕落な暮らしに戻ることを恐れ、追いかけてきたという。そして、もう夫の元には戻らない覚悟を決めていた。また、ライバルであったイェルゲンもレェーヴボルクの才能は高く評価していたと、その再起を喜んでいた。そんな二人の純粋な思いを前に、苛立ちを覚えるヘッダ。そこに、夫婦が懇意にしているブラック判事(段田安則)が訪ねてくる。判事から、イェルゲンが有力と言われていた大学教授の候補に、レェーヴボルクも復活してきたことを聞かされたヘッダの心中は大きくざわつき始める。

 ブラック判事と二人になったヘッダは、いかにこの結婚や毎日の暮らしが退屈か、このまま子供を生んで平凡な母親になることだけは嫌だと激白する。ヘッダに気があるブラックは、このまま見せかけの結婚生活を送りながら、気ままに浮気を楽しめばいいと、それとなく誘うが、そんな自分にはなりたくないと断るヘッダ。

 やがて、レェーヴボルクが現われた。久々に対面し、まだ互いに惹かれ合っていることを感じ合う二人。

 しかし、エルヴステード夫人とそこで会えたことを素直に喜ぶレェーヴボルクの姿を見て嫉妬したヘッダは、まだ自分に彼を操る力があるかを試すために、酒の席を避けて更正していた彼を言葉巧みに、ブラック判事主催のパーティへと送り出してしまう。

 案の定、酒の力で自分を見失ったレェーヴボルク。あろうことか、大事に持ち歩いていた次回出版予定の原稿を紛失してしまう。原稿は、たまたまイェルゲンが拾い、ヘッダに託したのだが、ヘッダはそれを戸棚に隠してしまう。

 そこに落ち込んだレェーヴボルクが憔悴しきった姿で現われるが、ヘッダは、隠した原稿を出そうともしない。

 そして、レェーヴボルクに自分が大切にしていた父の形見を手渡し、ある言葉を彼に囁く……。そして……。


テキスト:堤茜子

写真:野原誠治

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