音楽教室にJASRAC"襲来"!エヴァンゲリオン主題歌の作者・及川眠子氏と考える著作権

 8日、1年近く続いてきた、著作権を巡るJASRAC(日本音楽著作権協会)と音楽教室の争いに、ひとつの回答が示された。


 事の発端は去年2月、JASRACが子どもたちの通う音楽教室から著作権料として受講料の上限2.5%を徴収する方針を決定し、文化庁に使用料規定を提出したことに遡る。コンサートなど、公衆に対し曲を演奏して対価を得る場合、著作権者への利用料が発生しており、これが音楽教室にも当てはまるというのがJASRAC側の主張だ。

 この措置に対し、音楽教室の運営会社などが東京地裁に提訴、確定判決が出るまでの徴収保留を文化庁に申請した。「音楽のレッスンに著作権法は及ばない」、つまり講師や生徒の演奏は公衆に聴かせるのが目的ではなく、あくまでも教育目的の演奏であるため、使用料の請求権は発生しないという立場だ。つまり、音楽教室での演奏は、コンサートと同じなのか、そうでないのかが争われてきたのだ。

 ヤマハなどでつくる「音楽教育を守る会」の三木渡会長は7日、「著名な識者の方々も、生徒の演奏は演奏権に当たらないだろうと言っている。これが不明瞭な中でどうやって徴収するのか。なんの協議もしていない規定で徴収を始めるのは社会正義ではない。司法には"音楽文化の普及"という大局的なところに立った判断をしていただきたい」と述べた。しかし、文化庁が下した裁定は、こうした主張を退けるものだった。

 裁定を受けJASRACの浅石道夫理事長は8日、「今回の裁定は司法と行政の違いを明確にした上で、管理事業法に基づき、かつ司法判断が出された時点に生じうる問題にも言及しているものであり、公正で適正な裁定であると考えている」とコメント。また、大橋健三常務理事は「管理開始日は4月1日とさせていただく。ただ、司法の争いがなお継続中なので、演奏権の有無を争う、あるいはそれに対して疑義を呈されるという事業者の皆様方には個別の督促を控えさせていただく」とした。

 記者から「教室の月謝に影響があると思うか」と尋ねられた大橋氏は「JASRACが口を挟むことではないと思う。影響の程度は分からない。受講料をお支払いいただいた保護者の方に使用料を転嫁するかしないかは分からない」と答えた。


■『残酷な天使のテーゼ』を作詞した及川眠子氏「音楽教室からの徴収は反対」

 作詞家や作曲者など音楽の権利者は著作権をJASRACに預ける契約をする。一方、音楽の使用者はJASRACに使用の申込みをする。使用料は演奏なのかカラオケなのかなどによっても変わってくる。そしてこの使用料が音楽の権利者に分配される。

 『残酷な天使のテーゼ』などを作詞したことでも知られるJASRAC正会員の及川眠子氏は「私には、作品化されたものは歌手のものだという思いがある。歌ってくれている人たちや聞いてくれている人たち、世の中のもの。ただ、著作権は確かに私にあるので、著作権料は頂くということ。JASRACはそういう作家のためにある団体だ」と話す。

 ネット上にはJASRACに対し「カネの亡者という言葉がこんなにふさわしい話はない」「JASRACが搾り取った使用料が音楽産業に貢献しているとは到底思えない」「音楽をシマにしたヤクザ」「営利目的で音楽を使用しているなら、そりゃ権利者に支払えよとなる」といった厳しい意見が多数存在する。

 及川氏は「この人たちは著作権者ではないし、何も分からずに言っているだけだと捉えている。私が言っているのは、音楽はタダじゃないということ。音楽というのは、人が歌って、人が演奏してなんぼのものだ。私たち作り手はそれを目指しているし、お金を得るのも当然だ。売れれば儲かって当たり前。だからこそ優秀な人が集まるし、音楽で稼げないと分かったら、すばらしい音楽家も生まれてこなくなる」との考えを示した。


 宇多田ヒカルは「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」とTweet。また、GLAYは「結婚式という人生の素晴らしい舞台で自分たちの曲を使用してもらえることは大変喜ばしいことであり、それであれば自分たちは無償提供したい」とコメントしている。

 音楽教室を巡る問題について及川氏は「著作者が置き去りされ、勝手に話が進んでいる感じがする。私はJASRACの正会員だが、この件についてのヒアリングなどはない。私は音楽教室からの徴収に関しては徹底的に反対している。他の作詞家や作曲家の中にも反対の人もいるが、あまり表立って言っていないだけだ。また、大手からは徴収して、小規模なところからは当面は取らないというが、その曖昧な線はどうやって分けるか。だったらグレーでいいと思う。その代わり、音楽はタダではなく、学ぶこともタダではないのだから、譜面はコピーではなく、ちゃんと買わせるという風にすればいい」と指摘した。


■福井健策弁護士「音楽教育にいい影響を与えるのか」

 JASRACの徴収対象は結婚式の他に喫茶店、カラオケボックス、ダンス教室、葬式などにも及ぶ。これらの対象別に管理をして徴収をすればいいという意見もあるが、一方で煩雑になるのでそれは難しいとの指摘もある。

 知的財産に詳しい福井健策弁護士は「今、音楽の利用方法は多様になっていて、全国にある放送局、カラオケ、ライブハウスでどれだけ使用されるか分からない。それら全部について、歌いたい人、使いたい人が作詞家、作曲家に連絡を取って、使っていいかどうか聞いたり、無断で使っている人を取り締まって取り立てたりするのは無理に決まっている。今後はテクノロジーでトラッキングして、かなり細かく条件を設定することも可能だと言われている。ただそれをやると、値下げ競争になるかもしれないのでJASRAC的にはあまりやりたくない。それでも集中管理をしないと成り立たないのは事実。JASRACのやることが全部正しいというのも違うと思うが、JASRACが悪であるというのも偏っている」と話す。

 その上で音楽教室の問題について「課題が二つある。そもそも音楽教室から取り立てるのが正しいことなのか。それが音楽教育にどのような影響を与えるのか。もう一つは、徴収した利用料を公正に分配しているか。精度を上げようとしていることは間違いないが、完全ではないという指摘も受けている。今後、教室で教えることにも著作権が及ぶかどうかが裁判で判断されるが、もし教えたり、練習したりすることも対象になった場合、クラシックや練習用に造られた曲など、許可不要なものだけを使いましょうとなっていくのは目に見えている。それが音楽全体のためにいいことなのかが問われる」と指摘。「いかに適正に管理されているか、いかに権利と保護のバランスが取れているかが大事だ。集中管理は必要だけれども、果たして音楽教室で許可がないと教えたり学んだりできないということが、バランスの取れた考え方なのかどうか。音楽が広がらなければ使ってももらえないし、収入も得られないという事実をどう評価していくかだ」。


■ふかわりょう「みんながJASRACに登録しなければいいのでは?」

 JASRACはこれまでも様々な場所で著作権料の徴収を試みて話題になってきた。


 去年5月、京都大学総長がノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの詩を入学式の式辞に引用、ウェブサイトに掲載したところ、JASRACが著作権料の請求を示唆した(最終的には引用であるとして徴収はされず)。さらにJASRACは11月には映画音楽の上映使用料を従来の定額制から興行収入の1〜2%とする方針を発表。大幅な値上げとなることから映画館の経営圧迫を懸念する声もある。

 こうした議論から、前出のようにネット上ではしばしば"カスラック"などと否定的に扱われることも多かったJASRAC。音楽の著作物の著作権を保護し、音楽文化全体の普及・発展に寄与することを目的に1939年に設立され、管理作品数は国内・外国作品を含む約374万曲に上る。


 しかしDJとしても活動しているふかわりょうは「みんながJASRACに登録しなければいいのではないか」と問題提起する。


 及川氏は「JASRACに入るとまず準会員ないしは信託から始まる。準会員にならないと正会員になれない。正会員になると、JASRACの理事などを決める選挙権が得られるが、確かに登録していない人もいる。実際、JASRACの正会員に30代は1人、20代はいない」と話す。

 福井弁護士は「ネクストーンという、"第2のJASRAC"的な団体も生まれていて、シェアもある程度上がってきている。それでもJASRACが95%以上の圧倒的なシェアを握るガリバーであるのは事実。それだけ大きいからこそ、管理を預けるメリットもある。また、テクノロジーを駆使して、個別に利用者とつながって管理していく先には、JASRAC不要論も待っているかもしれない。しかし現状ではクリエーターが作品から生活の糧を得るためにも、JASRAC的な仕組みが役割を終えているとは思えない」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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