裏をかくか、裏の裏をかくか 羽生竜王対藤井五段戦、最大の見所

 いよいよ2月17日、羽生善治竜王(47)と藤井聡太五段(15)の公式戦初対局となる第11回朝日杯将棋オープン戦準決勝が行われる。対局開始は午前10時30分。観戦する上での見所をひとつだけお伝えおきたい。「羽生竜王が四間飛車を採用するかどうか」この一点に尽きる。

 初心者の方のために、出来るだけ分かりやすくなるように説明すると、羽生竜王が先手になった場合(朝日杯は先手・後手を対局前の振り駒で決める)、将棋盤に9つある縦のラインのうち、向かって左から4番目の位置に序盤から飛車を設置するかどうか。後手になった場合は、9つある縦ラインのうち、先手から見て右から4番目のラインに飛車を設置するかどうか、というのが最大の注目点になる。


 将棋の戦法は、飛車を初型(最下段の一段上で右から2列目)の位置に置いたまま戦い始める「居飛車」と、飛車を左側のどこかの位置に動かしてから戦い始める「振り飛車」に二分される。現在、男性棋士の間では、全体の75%くらいが居飛車を主力(居飛車党)に、25%くらいが振り飛車を主力(振り飛車党)にしている。逆に女流棋士は振り飛車党の方が多い。


 両方をバランス良く指しこなす「オールラウンダー」と呼ばれるタイプもいて、羽生竜王もそのように評されることがあるが、近年は指している将棋の9割以上が居飛車だ。オールラウンダーよりも居飛車党にカテゴライズした方が正確だろう。


 しかし、である。羽生竜王が藤井五段との非公式戦で挙げた勝利(通算1勝1敗)は四間飛車を採用した将棋(第零期獅子王戦)だった。また、今回の朝日杯での前2局、ベスト16の高見泰地五段(現六段)とベスト8の八代弥六段戦でも四間飛車を採用し、勝利を収めている。


 獅子王戦、朝日杯はいずれもそれぞれの持ち時間が少ない「早指し棋戦」。藤井五段、高見六段、八代六段はいずれも若手だ。つまり「早指し棋戦で若手を相手にした将棋では、四間飛車を用いる傾向がある」ということが言えるのだ。


 藤井五段戦、高見五段戦に関して言うと、採用したのは四間飛車の中でも「藤井システム」と呼ばれる形。藤井聡太…ではなく、羽生竜王と同い年の藤井猛九段が1990年代後期から指し、自らを竜王3連覇に導き、2000年前後の将棋界を席巻した革新戦法である。さすがに近年の採用例は減少している戦法だけに、藤井五段にとってみると、実戦での経験値を欠いた中での勝負を強いられることになる。


 さらに「現在の羽生竜王はオールラウンダーというより居飛車党」と先述したが、これはあくまでも指している将棋の割合についてのもの。採用例が少なくとも、指してしまえばどんな戦型でも力を発揮してしまう個性こそが羽生竜王のすごさでもある。


 早指し棋戦における羽生竜王の四間飛車は構想力や独創性にあふれ、エンターテインメント性が高いことも、観戦する側としてはたまらないところだろう。


 これらのデータがあるがゆえに、17日の一局で四間飛車を採用することは、もはや奇襲とは言えない。しかし、だからこそ逆に藤井五段も考えて来ただろう。「羽生先生は普段と同じように居飛車を指されるのか。それとも自分に勝ち、朝日杯で連勝している四間飛車を採用されるのだろうか」と。反対に、藤井五段は持ち時間や相手によって戦い方を大胆に変えることはないし、プロデビューしてからは振り飛車を指したことは一局もない。戦い方の選択権は、羽生竜王が握っていると考える方が自然だ。


 裏をかくか、裏の裏をかくか。羽生竜王の選択に注目したい。

(C)AbemaTV

▶第11回朝日杯将棋オープン戦 準決勝・決勝


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