目指すは「プロ棋士」 女流トップクラスの棋士が目指す「四段」とは

 2月7日に将棋ファン注目の対局があった。マイナビ女子オープン、里見香奈女流五冠対西山朋佳三段。結果は西山朋佳三段が勝利したが、この対局は女流棋戦ながら、また別の意味を含んでいた。2人とも女流プロ棋士ながら「プロ棋士」を目指しているからだ。

 将棋のプロとしての棋士には男性・女性ともに所属できるプロ棋士と、女性のみで構成されている女流プロ棋士(以降、女流プロ)が存在する。プロ棋士になるには育成システムである奨励会の三段リーグを突破して四段になるのが一般的な手段だが、女性で三段リーグを突破した者はまだいない。


 奨励会は6級でもアマチュア四段ほどの力量がある、文字通りプロの卵の育成機関だが、有段の女性は里見香奈女流五冠、西山朋佳三段、加藤桃子女王だ。里見女流五冠は、女流プロの五段でもあるが、西山三段と加藤初段は女流プロとしての登録がない。奨励会員であれば、またはタイトル保持者であれば参加できるものに限り女流棋戦に参戦している、女流棋戦の中では異質の存在だ。


 そう考えると、現在、奨励会で共に三段の里見女流五冠と西山三段の対局は女性棋士の最高峰の戦いの1つと捉えることもできるだろう。


 2018年現在、プロ棋士になるための一般的な方法としては、半年に1回行われる三段リーグで2位以上を獲得するか、3番目の成績となる次点を2回取らなければならない。


 2位以上に入れば翌年度のC級2組に在籍し名人挑戦への道が開かれる。次点を2回とればフリークラスという、順位戦以外に参加出来るプロ棋士になれる。フリークラスの棋士は規定の成績で順位戦の参加資格を得られる。プロ棋士を目指す少年少女はまず奨励会に入ることになるのだ。


 女流プロの場合はアマチュアも出場できる女流棋戦でベスト8に入るなどの成績を残した場合に「仮資格」である女流3級を申請できる。女流3級になって以降、2年以内に規定の成績を残すと本格的な女流プロと認められる女流2級に昇級できる。


 また、奨励会に入るショートカットにもなり、女性の場合は女流棋士を目指す育成制度として「研修会」がある。一般的に奨励会は年に一度の入会試験に通過した者が入れるが、研修会では15歳以下でA2クラス、18歳以下でSクラスに昇格すれば奨励会6級に編入できる仕組みがある。


 女流棋士を目指す研修会員はC1クラスになると女流3級の資格を得られる。定期的に集合して実戦経験を増やし、切磋琢磨できる環境を自然に作れるのは実力の向上には有利だろう。


 三段リーグは年齢制限による退会制度がある。満25歳を迎えたリーグ戦以降、リーグ戦終了次点で負け越してしまうと退会しなければならないのだ。里見女流五冠は25歳。女流では女王以外の五冠を堅持し圧倒的な成績を残す里見女流五冠だが、三段リーグに加入後勝ち越した経験がない。2018年2月6日現在、7勝5敗の里見女流五冠は残り6局を3勝3敗以上の成績で、次回の三段リーグ参戦も決定する。


 かつて瀬川晶司五段、今泉健司四段は奨励会を退会後にアマチュア棋戦や対プロ棋士相手に一定の成績を残したため、プロ棋士への編入試験を経てプロ入りした。編入試験の制度は女流プロにも適用されるため、仮に奨励会を退会することになってもプロ棋士への道を閉ざされるわけではない。


 現在は多くの棋戦で女流プロ枠があり、予選で数名の女流プロが参加できる。こういった機会にプロ棋士に高い勝率を挙げることで編入試験への道はぐっと近づく。もっとも、こういった機会での女流プロの勝率はまだ高くないため、さらなる実力アップは必要だ。


 女流タイトル戦はマスコミの取材や主催する企業・自治体の注目もあり、男性奨励会員やアマチュア強豪よりも貴重な経験となる大一番だ。そうした経験は三段リーグの勝負どころや編入試験では有利に働くだろう。


 女性トップが奨励会三段に複数人在籍する現在、いつ女性のプロ棋士が誕生しても不思議ではなくなった。三段リーグの突破、編入試験の両面から女性のプロ棋士誕生を期待したい。【奥野大児】

(C)AbemaTV

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