赤字経営に苦しむ私大も…大学改革はこのままでいいのか?

 今年も大学入試センター試験が行われ、受験シーズンに突入した。しかし、今年を境に18歳の人口が本格的に減少に転じることから、大学はいよいよ転換を迫られることになる。


 首都圏の有名私大の人気が不動である一方、年々数が増え続けた私立大学では、定員割れを起こすところも相次いでいる。とくに地方では慢性的な赤字から抜け出せず、新入生の募集停止、廃校などの決断に迫られる大学も後を絶たない。生き残り策として、統合・合併、さらに私立から公立に変えるという対策に打って出る大学も出てきている。公立化した長野大学の場合、私立時代は年間約2億円の補助金に対し公立後の運営費交付金は約3億円と、約1億円の増収。ただ、この分を授業料の減額に充てているため、経営が大きく好転したということは言えない状況だという。

 教育ジャーナリストの木村誠氏は「ほとんどの私立が定員割れしている」と指摘した上で、「地方の高校は国公立の合格実績を非常に重視する。先生たちにとっては進学実績になるし、親も喜ぶ。授業料も安くなるので、志願者数が回復し、見かけ以上には財政悪化というのはない。行政の介入を受けることにはなるが、地方創生などの取り組みにも影響を与える」とその意義を説明する。

 日本の私立大学の総収入は3兆3234億円、総支出は3兆1450億円という状況にある。収入のうち、学費が占める割合は76.3%で、その他は私学助成や寄付金などで賄われている。支出は人件費や教育研究経費などにそれぞれ1兆円以上のお金が使われている。

 「これまでは物価上昇に合わせて授業料も上げることができた。今はそうすると競争力が落ちてくるので、なかなか上げられない。国としても経費の半分は私学助成で賄うという理想を持っていたが、実際は10%と低迷してしまっている。これまで大学の教員は教育・研究をやっていればよかったが、お金を集める能力も要求されるようになっている。産学協同の寄付金や科研費も応募して採用されなければ支給されないので、本来の仕事よりも経営の方に労力が割かれるようになっている。大学教育の質の劣化にもつながる状況だ」(木村氏)。

 世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功、「近大マグロ」として全国的な知名度を得た近畿大学は、2014年以来、志願者数日本一を達成し続けており、就職率も97%以上を誇る。総務部広報室室長の加藤公代氏は「経営がうまくいかないと学生さんに良い教育環境を提供するということができなくなる。学生数の確保というのはどこの大学も非常に大変な時代になってきている」と指摘する。

 近畿大では志願者確保のため、日本で初めてペーパーでの願書を廃止し、インターネット出願で受験料を3000円引きにしたり、大学PRのため年間1500以上の番組に出演したりと、積極的な広報戦略を実行してきた。在学生に対しても、書籍から漫画まで約7万冊を収蔵、映画のDVDまで貸し出している図書館「アカデミックシアター」や女性専用の自習室、お手洗いへのパウダールーム設置などによる満足度向上も図った。

 大学を取り巻く昨今の状況に、慶應義塾大学大学院を卒業し、現在同大学で特任准教授を務める若新雄純氏は「変な逆転現象が起こっている」と指摘する。「そもそも大学は就職のためにできたわけでも、就職訓練をする場所でもない。大学を出た人がたまたまいいところに就職していただけなのに、就職率がいいのが大学の価値になり、学ぶことが嫌いな学生までもが大学に行くようになった」と指摘する。

 社会問題を体験するツアーを提供しているリディラバの安部敏樹氏(東京大学大学院在学)も、「ホワイトカラーの仕事が機械化され、銀行にも大規模なリストラの可能性が出てきている。大卒であれば職があるという時代ではない。しかし、高校で進路指導をするとき、就職先を見つけるのは大変。そこで高校の先生たちも、とにかくどこかの大学に奨学金借りてでも、と流してしまっている」と話す。

 そんな時代を反映してか、大学入試制度改革も進んでいる。1990年に始まったセンター試験も、2020年1月が最後の実施となり、翌年からは新方式の「大学入試共通テスト」が始まる予定だ。暗記ではなく課題解決能力を試すため、マークシートと記述が合わさったものになるという。

 総合進学塾「若松塾」理事長の井沢伸平氏は「入試改革で国は世界に通用する人材を育てたいと思っているが、英語の語学力よりも実際に社会に出る国語力で議論できる人材を育てることが重要だと思う」と指摘。若新氏は「共通テストの前にやらなければならないことがある。表現力やいろんな視点を持っているかどうかは大事だが、それを18歳の段階で試さなくてはならないのか。表現力や視点が豊かになるのは働いた後だったりする。大学に入るタイミングを多様にしなければ意味がない」と訴えた。


 小手先の改革だけでなく、まさに大学教育そのもののあり方が問われている。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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