アニメ聖地化ビジネスの今、成功の鍵は「情報発信を続けること」 次は埼玉県飯能市か

 2017年12月9日より最終章の第1話が劇場公開され、ますます盛り上がる大人気アニメ『ガールズ&パンツァー』。作品の舞台となった茨城県大洗市で11月19日に開催された第21回『大洗あんこう祭』には県内外から13万人もの来場者が訪れた。


 もちろん、アニメとは関係なく海産物豊かな観光地である大洗のお祭りに観光目的で参加した来場者も相当数いるはずだ。しかし、過去のデータを紐解くと『ガールズ&パンツァー』の関連イベントが開催されていない2011年の『あんこう祭』の来場者数は3万人、関連イベントが開催された翌年からは6万人と一気に倍増していることが分かる。


 アニメの舞台となったことで"聖地"として注目を集め、多くのアニメファンが訪れ、メディアに取り上げられ、ひいては一般の観光客も取り込んでいく、いわゆる聖地化現象だ。

(画像は『アニメツーリズム協会』公式Webサイトより/スクリーンショット)

 2016年9月には、アニメ『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督が会長をつとめる一般社団法人『アニメツーリズム協会』が設立されるなど、官民が一体となってアニメの聖地化に取り組む姿勢が顕著となってきた。


 大洗をはじめ、2007年放送のテレビアニメ『らき☆すた』の舞台となった埼玉県の鷲宮など、聖地化により多くの観光客に恵まれた聖地がある一方で、アニメの舞台となり、聖地化が期待されたにもかかわらず観光客の増加に繋がらなかった都市も多い。


 聖地化ビジネスの明暗はいかにして生まれるのだろうか。アニメ誌やアニメ情報サイトなどで聖地巡礼企画を担当するアニメライターに話を聞いてみた。


「聖地化が成功するかどうかの大前提はその都市のポテンシャルにかかっています。『ガールズ&パンツァー』の大洗は海産物豊かな観光地ですし、TVアニメ『らき☆すた』で有名になった鷲宮神社で開催されるさまざまなお祭りは地域の人々を中心に愛され続けてきたイベントでした。こうしたその都市が持つポテンシャルにより、リピーターを確保できたからこそ、これらの都市は成功したのです。


ただアニメの舞台になったというだけで、観光資源の乏しい都市では、アニメと同じ風景を写真に収めるだけの聖地巡礼で終わってしまいます。写真を撮るだけならその町にお金を落とすこともありませんし、写真を撮ったことに満足し、二度三度とその町を訪れることはないかもしれませんよね」


―― その町が持つ元々のポテンシャルが重要という話はわかりますが、大洗や鷲宮に負けないポテンシャルを持ちながらも、同じような成功を得られていない町も多いと聞きますが……。


「もうひとつの大前提は、そもそもそのアニメがヒットしたかどうかということです。『ガールズ&パンツァー』も『らき☆すた』もコアなアニメファンを中心に絶大な支持を得ましたからね。いかに、舞台となった都市が魅力的でも、作品そのものがヒットしていなければ、そこを訪れてみたいと思うアニメファンも現れませんからね」


―― 確かに作品そのもののヒットは大きいですね。しかし、大洗や鷲宮は作品のヒットはもちろん、それぞれの作品が放送されてから現在まで、長期間に渡りアニメの聖地として認識され続け、今なお賑わっています。他のヒット作の舞台となった町と、これらの町ではどう違うのでしょうか。


「現在も作品が制作され続けている『ガールズ&パンツァー』ですが、テレビシリーズから劇場版、劇場版から今回の最終章と展開が途絶える瞬間はありました。しかし、地域の住人は聖地化を一過性のものにならないよう、制作側と連携し、地域発のイベントを企画したり、オリジナルグッズを作成したりと、作品を盛り上げ続けたのです。


作品が終わったからアニメとのタイアップも終わりということではなく、アニメ側の展開が終わったり、途絶えたりしてもファンのために地域から発信をし続けたというのが、両都市が成功した大きな理由でしょう。


もちろん、その裏には制作側と地域の連携があるわけです。地域活性化のために、地域が企画するオリジナルグッズからは高すぎる版権料を取らないなどの配慮が発生するケースもあると聞きます」


―― アニメの舞台になったことを受け入れ、アニメの展開が終わっても地域主導で作品を盛り上げ続けてきたことが成功の秘訣というわけですね。


「そうですね。その受け入れ方というのがとても大事で、大洗も鷺宮も聖地化を主導している地域の人たちが、ちゃんと作品を見てくれて、作品を好きになってくれている様子がイベントやアニメ誌などのインタビューから伝わってくるんですよね。


アニメファンは自分たちがお金儲けのために利用されたりすることを嫌いますから、大洗や鷺宮の『一緒に作品を盛り上げましょう』という気運がアニメファン側にも受け入れられたということになります。


逆に地域の住人が作品をあまり理解していないのに、聖地化をビジネスとして先行させると、アニメファンは冷めてしまいます。聖地化ありきで作品を作ったり、聖地化を前提に舞台となる都市とプロジェクトを始めたりすると上手くいかないことも多いようです」


―― 作品ありきで、ファンと聖地となった地域の住人が一緒になって盛り上げることが大事なんですね。


「アニメファンは自分たちが作ったムーブメントを大事にしますからね。自分たちと地域の人たちの力で聖地化を成し遂げたという、彼らの自負が重要なんです。そういう意味では、官民が一体になって聖地化を成し遂げていこうという『アニメツーリズム協会』は厳しい目で見られることもあります。


しかし、会長に『ガンダム』の富野監督が就任し、理事長に『らき☆すた』を送り出したKADOKAWAの角川歴彦会長が名を連ねていたりと、アニメファンの心情に詳しい方々が主導していたりする協会なので、僕は個人的に『アニメツーリズム協会』には大きな期待を寄せています。


アニメの聖地を網羅した『アニメ聖地パンフレット』の配布や、聖地に関する講演会やイベントなど、アニメファンはもちろん、地域のみなさんにアニメを理解してもらおうという取り組みや、海外に向けてアニメの聖地をアピールする試みは、今後のアニメ業界にとって大きなプラスになると思います」


 最後にライターが現在、注目している聖地について聞いてみた。


「登山をテーマにしたアニメ『ヤマノススメ』の舞台となった埼玉県の飯能市に注目しています。来年にはテレビアニメの新シリーズもはじまりますし、町に配置されたポップなど大洗や鷲宮と同じく地域の皆さんが作品を愛してくれている様子が伝わってきます。


観光地としてのポテンシャルも高く、作中でキャラクターたちが登った天覧山や、OVAに登場したトーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園など、自然を満喫できる町です。主人公がアルバイトをしているお店のモデルになった洋菓子店のお菓子も美味しいですし(笑)。


11月11日にはファンを集めてキャンプイベントが開催されたのですが、会場で飯能市長が挨拶をしたり、記念の植樹が行われたりと、制作側と地域の関係も良好なようで、そこもファンとしては嬉しい限りです。ふるさと納税の返礼品としオリジナルグッズが作られ、大好評を博したことも記憶に新しいですね」


 数々の聖地巡礼記事を執筆してきたという件のアニメライターオススメの聖地・埼玉県飯能市。当地を舞台とするアニメ『ヤマノススメ』の新シリーズも2018年から放送がスタートするとのこと。ぜひ注目してみて欲しい。


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