日馬富士暴行問題で注目!医師の「診断書」ってそもそも何?

 横綱・日馬富士が平幕・貴ノ岩に暴行しケガをさせたとされる問題。騒動で注目を集めているのが貴ノ岩側の提出した、それぞれに内容が違う2通の「診断書」の存在だ。


 改めて騒動を時系列で振り返る。先月25日夜、日馬富士が貴ノ岩を鳥取市内で暴行。29日に貴ノ岩の師匠である貴乃花親方が鳥取県警に被害届を提出。その際に1通目の診断書が提出されている。今月5日になり、貴ノ岩は福岡市内の病院に入院、9日に全治約2週間と診断され、2通目の診断書が作成された。10日には貴ノ岩が九州場所を休場することが発表され、13日に相撲協会が2通目の診断書を公表した。そして14日、日馬富士が謝罪するとともに自身の休場を発表し、協会が本格調査を開始した。鳥取県警も傷害容疑で捜査を進め、日馬富士から事情を聴くなどしている。

 17日付の朝日新聞によると、1通目は骨折が含まれない軽いものだと記載している一方、2通目は左前頭部裂傷、右中頭蓋底骨折の疑いなどが含まれる症状が書かれており、作成した医師は17日、協会の危機管理委員会の聞き取りに対し、骨折と髄液漏はいずれも「疑い」と話し、「重症」との報道には「驚いている」としている。

 2通目の診断書について、内科医でスポーツドクターの栗原隆医師は「診断書に『こういう症状はこういう表記をしてください』というルールはあまりないので、かなり感覚的な違いは大きいと思う」としながらも、「医師の立場からすると、"しばらく休場しないといけないのではないか"というような診断名に見える。それに"疑い"という言葉を付けるのは、言い逃れなのではないかという感じもする。私自身は重い病名をつける時は慎重になる。初めから"疑い"であるとか、そういう診断名をつけることがあったとしても、明らかに一般の方が見ておかしいと思うような怖い言葉を並べたりということはあまりしない」と話す。

 辞書(大辞林・第三版)によると、「診断書」とは「医師や歯科医師の作成する診断結果を記載した証明書」のこと。一般的に人の健康状態に関して医師が医学的判断を証明する文書で、記載事項に法的な規定はないが、医師法19条で「診断書交付の求めがあった場合、正当な事由がなければこれを拒んではならない」と定められている。偽造は犯罪にあたり、虚偽診断書作成の罪に対しては2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金が科せられ、詐欺などと関連していれば、さらに重い刑罰が科せられることになる。

 栗原医師は「例えば仮病や症状がないのに『こういうふうに書いて欲しい』といったことは断ることができるが、それ以外のケースでは断ることはできない」と話す。そこで問題となるのが、客観的な症状がなく、患者の訴えしかない場合に、医師が診断書をどう扱うかだ。


 「それが大変難しい問題。例えば、腰が痛いといった場合に、レントゲンを撮っても診断がつかないものがある。筋肉が炎症を起こしていて、触ってみてはじめて痛みが出てくるとか、骨には異常がないが実際に痛いという場合もある。そういう場合は、患者の訴えや触ってみることでしか診断ができない。実際の現場では、自覚症状と検査データが一致しないということもある。それで休養が必要だという診断書を出せるかというと、なかなか難しいと言わざるを得ない。我々は性善説に基づいて仕事をしている。例えば、熱がない。でも喉が痛い。それで話せない、仕事ができるのかと言われると、そういう診断書を書かざるを得ないこともあるということ。症状が見られなくても、本人が強く訴えていれば"疑い"ということを付けてでも"数日間自宅安静が必要である"といった表現で診断書を書くケースが多いかもしれない」。

 また、「診断ができない」「第三者が本人の承諾なしに診断書を求めてきた」「因果関係など事実を証明できない」「遺言能力に関係する」「診断が深刻な病状の告知につながるなど本人の不利益が想定される」などの場合、診断書を断るケースもあるという。「保険など大きなおカネ絡むケースなど、話を伺っている中で重大な事案に結びつきそうな予感するものは多々ある。そういう場合、原則的にはお断りする方針でいくしかない」。


 そんな診断書をめぐる事情が悪用された事件は、今まで何件も発生している。今年、京都府立医大病院の医師らが、実刑の確定した暴力団幹部に「収監に耐えられない」などと記載したとウソの診断書を作成したとされる事件が発生。診断書は大阪高検に提出され、暴力団幹部の収監を見送る判断にも影響したのだ。また、多摩市の元職員が診断書39通を偽造、通算820日間欠勤し、懲戒免職処分になった事件も起きた。市はその間、給料など約2300万円を支給していたという。

 

 今回の問題の場合、症状の変化や、セカンドオピニオンの必要性を考慮しなければならない面もあったのではないだろうか。

 これについて栗原医師は「確かにスポーツ傷害の場合、脳しんとうを起こして、しばらくしてから症状が強く出てくるということもあり得る。髄液が漏れているかどうかについても、後になって分かるというケースがあると思う。しかし、あくまでも2通目の診断書は"疑い"。実際に漏れているというわけではないと思うし、これから髄液漏れが起こる可能性も極めて低いという見解なので、それほどひどい状態ではなかったというふうに考えられる」と説明した。


 また、貴ノ岩を休場させて守るために"強めの表現"で診断書を出してもらったとの見方もあるようだ。

 このことについて栗原医師は「可能性としては高いと思う。我々の仕事は命を守る仕事なので、ちょっとでもケガがあって、それで激しい取り組みをすることを防ぐことはあり得る。ラグビーやアメリカンフットボールには出場に関する厳密な規定があるが、おそらく相撲にはそういった規定がないと思うので、より重めの診断名や"疑い"をつけることもあると思う」との見方を示し、「2020年に東京オリンピックが控えているし、各スポーツ団体で暴力を根絶するという宣言が出されている。そういった中でこういった事件が起きたのは遺憾だと思う」とコメントした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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