広瀬すず、役所広司と本気で雪合戦「もう気を遣うのをやめよう!」


 『そして父になる』以来、約4年ぶりに福山雅治と是枝裕和監督がタッグを組んだ映画『三度目の殺人』は、法廷を舞台にした心理サスペンス。勝利にこだわる主人公の弁護士・重盛(福山雅治)は、元勤務先の社長を殺害した三隅(役所広司)を弁護することになるが、三隅の二転三転する供述に惑わされていく…。


 本作で、被害者の娘でありながら、犯人である三隅と密会を重ねていた少女・咲江を演じているのが女優の広瀬すず。『海街diary』(2015年)以来、是枝監督とは2度目のタッグとなった彼女が、本作を通して感じたこと、豪華キャストとの共演について、そしてなんでも話すことができるという『海街diary』のお姉ちゃんたちの存在について語ってくれた。


マイホーム・是枝組に「この空間、求めてた!」

ーー是枝監督の作品には、『海街diary』以来の出演ですね。久しぶりに是枝組に帰ってきたお気持ちはいかがでしたか?


広瀬:今回の作品も海外の映画祭に出品されているように、是枝監督の現場はレベルの高いところで戦っていることもあって、普段なかなか感じることができないことを感じられる現場なんです。それに、私にとって一番安心できる空間。前作では役名も"すず"だったので、今回もスタッフさんたちが当たり前のように「すず、すず」って呼んでくださって。「この空間、求めてた!」と、マイホームに帰ってきたかのような気持ちになりました。本当、是枝監督の作品は全て出演したいくらいです(笑)。


ーー前作からの2年間で広瀬さんも様々な作品に出演されてきましたが、ご自身が成長したなぁと感じることはありましたか?


広瀬:まずは、台本をいただけるようになりました(笑)。


ーー『海街diary』のときは、現場ではじめて台詞を教えてもらって、演じられていたのですよね。


広瀬:そうなんです。前回はリハーサルのときに初めて台詞を知って、その場で演じるという流れだったんですけど、今回は事前に台詞を覚えてから現場に入りました。それって普通のことなんですけど、是枝組だとなんだか台詞を言うのがすごく恥ずかしくて…親戚のおじさんたちが文化祭の舞台を見に来てくれたときのような気分でした(笑)。


ーー是枝組では、新鮮な感覚だったのですね。


広瀬:慣れてきてからは、自分が何をしたいかを言わなくても、監督やカメラマンさんに伝わっていく感覚がすごく気持ち良かったです。


ーー言わなくても伝わったと感じたのは、どのシーンでしょうか?


広瀬:例えば、重盛さん(福山雅治)とベンチで会話をするシーン。重盛さんに三隅さん(役所広司)の話をされてから振り向くまで、”心ここに在らずだけど、賢いから耳ではちゃんと聞いている”という演出をしたくて、目線の動きを自分なりに工夫していたんです。そうしたら、監督が私の目線の意味を汲み取ってくださって使ってくれていて。これだ!と思ったものが一緒だったんだ、とニヤッとしてしまいました。

(c)2017『三度目の殺人』製作委員会


ーーたくさんの作品を通して、自分なりに考えて演じるということができるようになったのですね。


広瀬:台本の内容を自分の中で1回考えて、感じて、演じてみるというのは、前作とは大きく変化したところかなと思います。みんなから「女優さんだね」って言われると、恥ずかしくて「やめて~、私はすずだよ~」と思っていましたけど(笑)。

ーー本作は、『海街diary』とは全く印象が違う作品です。そういった意味で、なにか違いはありましたか?


広瀬:監督の見たことのない表情を見ることができました。目が本気というか、ギラギラしているというか…。重盛さんよりも、三隅さんとのほうが気持ちを共有できているんじゃないかって思う瞬間もあったり。


ーーどういうことでしょう?


広瀬:監督の心の底にある”怒り”みたいなものを映画にしているのかなって感じたんです。誰にでも世の中で理不尽に思うことはあると思うんですけど、監督はそういう人間同士の世界の違和感をいろいろなものを通して表現しているのかなって。


ーーそれは完成作品からも感じ取れましたか?


広瀬:重盛さんと三隅さんの接見室のシーンでは、特に感じました。2人をアップで横から撮っているんですけど、見ているうちにどっちが外に出られる部屋で、どっちが外に出られない部屋かが分からなくなるんです。両方、同じ空間に見えるのに、そこには大きな格差があって……怖いなと思いました。しかも、急にあのシーンだけ2人の位置が反対になるんです。いつも右手に重盛さんで、左手に三隅さんなのに。何が本当なのか分からないなって。「もう、みんな一緒なんだよ!」って訴えたくなりました。

(c)2017『三度目の殺人』製作委員会


ーーそういった部分からも、監督がこの作品で伝えたいものが見えてきますね。


広瀬:今回は監督が1人の大人の男性として見ているものが少しだけ分かった気がします。前作では四姉妹の優しいお父さんだったので(笑)。


役所広司とは本気で雪合戦

ーー本作では、福山さん、役所さんを始めとする豪華キャストのみなさんと共演されていますが、いかがでしたか?


広瀬:本当に大先輩方だらけで……作品を見たときにも改めて超豪華だなって思いました。「この現場を味わえて、いいだろう!」ってみんなに自慢したくなっちゃうような(笑)。本当に目の前で素晴らしいものを見させていただきました。


ーー役所さんとは、雪山で雪合戦をするシーンもありましたね。


広瀬:唯一、足が自由に動ける場面だったので、とにかく走り回って次の日は筋肉痛になりました。あそこが一番、体力を使う撮影でしたね。


ーーけっこう本気で雪玉を投げ合っているように見えたのですが……。


広瀬:途中からは、もう気を遣うのをやめよう!と思って本気で楽しんでやっていました。役所さんも本気でやり返してきて、すごく大きな雪玉が飛んできたりも(笑)。


ーーすごく楽しそうです(笑)。広瀬さんも役所さんも、素の表情になっていたかもしれませんね。


広瀬:是枝監督の現場って、素でいられる気がするんです。私だけでなく、みなさんも他の現場とは違う温度でお芝居されている気がしていて。1人1人が生きていて、根から感じる温度でお芝居をされているのかなって思います。


海街のお姉ちゃんたちの前では「素っ裸でも大丈夫」

ーー本作を含め、今年もたくさんの話題作に出演されていますが、広瀬さんが作品を作るうえで、常に心がけていることを教えてください。


広瀬:どんな役でも、私1人で作ることはできない。たくさんの人のおかげで、カメラの前に立てていることを忘れちゃいけないと思っています。明るい画面も当たり前ではなくて、「どのトーンの明るさで、何色で…」と照明さんがいろんな思いで作っていて、カメラも「あと3センチだけ右に」とか、カメラマンさんが1ミリ単位まで考えて、神経を削りながら作っている。そういったスタッフさんたちの思いを背負って、役者はカメラの前に立たなきゃいけないなって。最後は、役者ですべて決まってしまうので。


ーー作品に関わっている人の思いを背負う…というのは、大切なことでもありますが、責任重大でもありますよね。


広瀬:特に原作があるものの実写化をやらせていただくときは、原作者さんがいて、原作ファンの方もいて、みんなの中にはその役が生きているので、さらに背負うものが大きくなります。1回やると「もういい、もうやりたくない」ってくらい精神的に削られてしまったり…。


ーー逃げ出したくなったりはしないのでしょうか?


広瀬:私には「逃げたい」と言う権利はないです。少しでも「広瀬すずっていいな」と思ってもらえるようにやるしかないと思っています。だから、監督にもたくさん聞きに行っちゃうんですよね(笑)。

ーーお仕事で、プライベートで……何か壁にぶち当たったときに、相談できる特別な存在の人はいますか?


広瀬:ちょっと踏み込んだことまで話すことができるのは、海街のお姉ちゃんたち(綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆)です。前は、私がまだ中学生だったので、共通の話題がなさすぎて勝手に気を遣ってしまっていたんですけど、最近やっと年齢が追いついてきて(笑)。私がメールをすると真剣に返してくれて、でもまだモヤモヤしていると、「じゃぁ、会おう」っておうちに呼んでくれたりするんです。


ーー優しいお姉ちゃんたちですね。そういった意味でも、お姉ちゃんたちに出会わせてくださった是枝監督には感謝ですね。


広瀬:そうですね。お姉ちゃんたちに会うと、必ず是枝さんのお話もします。女優さんとしても尊敬していて、本当になんでも話せるので、もう恥ずかしいことがなくなりました。そのへんで素っ裸でいられるくらい(笑)。何も隠さないでいられるくらいの距離感というか…それは話の内容も。本当に大好きなお姉ちゃんたちです。


Photography=Mayuko Yamaguchi

Interview=Ameba


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