内田篤人、錦織圭、松山英樹に劣らぬ功績 “世界のヨシカワ”吉川智貴が名古屋をFリーグ王座奪還へと導く

 Fリーグで前人未到の9連覇を遂げた王者・名古屋オーシャンズは昨シーズン、10連覇を逃した。今年、王座奪還を至上命題に掲げるチームに、“優勝請負人”として2年ぶりに復帰したのが、吉川智貴だ。

 フットサルでは長らく、ブラジルとスペインが絶対的な2強として君臨してきた。1989年に始まったフットサルワールドカップは、2016年のアルゼンチン初優勝まで、ブラジルが5回、スペインが2回と、両国がずっと世界一の座についてきた。当然、それぞれの国のトップリーグも、世界最高レベルにある。


 2015年8月、そのうちのひとつ、スペインリーグに挑んだ吉川は、2年間で「YOSHIKAWA」の名を世界に知らしめた。彼が所属したマグナ・グルペアは、決して上位のクラブではない。それにもかかわらず、吉川がプレーした2シーズンで、彼らは数々の偉業を達成したのだ。それは、サッカー日本代表・岡崎慎司が味わった“レスターの奇跡”のような、スペイン国内のフットサルファンの心に、深く刻まれる出来事だった。


 レギュラーシーズン1巡目時点で上位の8チームが出場するスペインカップでは、準々決勝で優勝候補のバルセロナを撃破。今年5月の国王杯では、クラブ史上初の決勝進出。リーグ戦で5位となって出場したプレーオフでは、ファイナルまで勝ち上がった。リーグ初制覇にあと一歩まで迫ったのだ。


 いずれも日本人としては初の快挙。これは、サッカー選手のチャンピオンズリーグ(CL)、もしくはテニスやゴルフの四大大会で、世界の名だたる選手と肩を並べ、優勝に迫るのと同じような偉業だ。


 歴史や規模感、知名度も異なる競技同士を、単純には比較できない。でも吉川が海外で手にしたのは、2011年にCLでベスト4に入った内田篤人や、2014年に全米オープンで準優勝した錦織圭、先日8月の全米選手権で優勝争いを演じた松山英樹に勝るとも劣らない、讃えられる功績だったことは間違いない。


 吉川は、日本で、そしてスペインで、何を評価されていたのか。


 「オールAの選手になりたい」。吉川はいつも、そう話していた。「何かに秀でているわけではないけれど、すべてのプレーの質を上げて、どんなオーダーにも応えたい」。ゴールに直結する迫力ある攻撃と、球際に厳しい守備、オフ・ザ・ボールの動きなど、吉川は総合的な能力の高い選手として、際立っていた。


 日本にいる頃から、“オールA”に近いスキルを持っていた。パス、トラップ、ドリブル、シュート、フリーランニング、守備、運動量、フィジカル、メンタル……。でも吉川はスペインで、“真のオールA”にたどり着いた。


 判断と決断。世界最高峰のリーグで戦うには不可欠な能力だ。高い技術があっても、それをいつどのように出すかを瞬時に考え、決定し、実行できない限り、その世界では生きていけない。「コンマ何秒の世界を知った」。一瞬で勝敗が決まる駆け引きに勝ち抜くために、吉川は判断と決断を極めていった。


 判断と決断の質が高まれば、必然的に、正確で質の高い技術を出せるようになっていく。なぜなら、判断の速さが時間を生み、余裕を持ってプレーできるからだ。こうして吉川は、“オールA・プレーヤー”になった。

 名古屋からの復帰オファーに際して、スペインには、吉川を引き止める声が多かった。「名古屋をもう一度、王者にしたい」。吉川は、2年前、シーズン途中ながらも快く送り出してくれたクラブへと戻ることを決めた。


 今週末で、復帰から11試合目。“優勝請負人”のプレーは、そのすべてが見逃せない。


 吉川が所属する名古屋オーシャンズは9日の第15節、フィジカルでは名古屋に引けを取らない、府中アスレティックFCと激突。その模様はAbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで12時45分から生中継される。

文・本田好伸(futsalEDGE)

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