"白人至上主義"はマイノリティになりつつある白人たちの"苦しみ"の表れか トランプ大統領の演説も"パフォーマンス"?

 22日、メキシコとの国境がある米アリゾナ州でトランプ大統領の支援集会が行われた。共和党の地盤ということもあり、多くの支持者が参加した。しかし会場の外には数千人規模とみられる反トランプ派のデモ隊が押し寄せ、警察と衝突。催涙弾や閃光弾を使って鎮圧に乗り出す事態にまで発展した。


 このような状況を招いた理由の一つが、12日に起きた白人至上主義団体とこれに反対するデモ隊の衝突で、反対派の女性が死亡した事件と、それについてのトランプ大統領の発言だった。

 トランプ大統領の「(人種差別主義者と反対派)双方に非があると私は思う。そのことに対し、私は何の疑いも持っていない。あれは私が知る限り、とてもひどい事件だ」という発言が、白人至上主義者を擁護するものだとみなされたのだ。この発言についてトランプ大統領は「メディアが発言を歪曲している」と主張している。


 23日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、今クローズアップされている「白人至上主義」と、トランプ大統領の意図について議論した。


■旧来の白人至上主義者にネット右翼たちが合流

 上智大学の前嶋和弘教授は白人至上主義について「一言で言うと、自分たちは偉いということ。生まれながらにして、肌の色、他の人種よりは優れているという見方で、もともと古くからある思想だ。かつては白ずくめの服を着てアフリカ系の人に家に行き火を付ける、あるいは殴って線路に縛り付け轢き殺すといった具合に、リンチや殺害が横行していた。KKK(クー・クラックス・クラン。19世紀に誕生した白人至上主義団体)は秘密結社で、隠れてやっていたが、それが今メインストリーム化しており、そこに相乗りしている人が増えている」と話す。


 そうした過激な思想が再び前面に表れた背景には、アメリカ社会の変化があるのだという。

 「2000年から2010年にかけて、移民がとても多く入ってきたこと、経済のグローバル化などで、アフリカ系、ラテン系、ヒスパニック系の人たちが台頭してきた。その結果、今まで自分たち白人は強いと思っていたのに、"いくら頑張っても社会の中で上昇できない""取り残されてしまった"というフラストレーション、怒りを抱えるようになってきた。"若い頃に俺たちが夢見た状況になっていない"と感じる50、60代の人たちも増えている。逆に言うと、弱さ、苦しみの表れなのかもしれない。過激な行動に走らなくても、内心でなんとなく移民のせいだと思ったり、白人至上主義に賛同したりする人が増えているのが気がかりだ。ABCとワシントン・ポストによる『白人至上主義を認めるか』という世論調査で、認めると答えた人が9%もいたので驚いた」(前嶋教授)。


 20年以上アメリカで暮らすコラムニストの町山智浩氏は「白人の人口がアメリカで減少している。現在、全人口の6割だが、これが2043年までに5割を切るという予測もある」と指摘する。KKKの集会を取材したこともある町山氏は「発祥の地であるテネシー州のプラスキーという街を2009年に取材した。その時はわずか50人くらいしか参加者がおらず、ものすごくひっそりとしていたが、その後どんどん拡大していった。そこに"オルタナ右翼"と呼ばれる、インターネットの中から発生した、今までとは全く違うネット右翼たちが合流していった」と解説した。

 国際弁護士の湯浅卓氏は「カリフォルニア留学中、とても良いところだと思っていたのに、"日本人に一番差別的なのはカリフォルニアだ"と言われてショックを受けた経験がある。UCLAの先生にも"カリフォルニアには残るな、チャンスは薄い。東海岸に行け"と言われた」と振り返る。「まさにアメリカを代表する保守、白人の王国であるウォール街でも差別された。そこで私を助けてくれたのは、エリオット・リチャードソン元司法長官だった。彼はWASP(保守派の白人エリート層)の協会の副会長。だからWASPが悪いとは限らないし、トランプが批判されているからと言って、トランプが最も差別主義者だとは限らない。普通に生活している人が、なぜかKKKだったりする。極端な話、家族も知らないこともある」と、潜在的な差別意識が根強い社会であることを指摘した。


■二転三転するトランプ発言は、次の大統領選挙を睨んだパフォーマンス?

 そんな湯浅氏は、トランプの意図について「私自身が差別されたから言うが、人種差別の問題に関してアメリカのメディアに出ているのは氷山の一角。そういう意味で、信頼がおけない部分がある。トランプ大統領の本音は、白人至上主義はむしろ、アメリカのメディアや、カリフォルニアのハリウッドだと思っているのだろう」と推測する。


 さらに「亡くなった最高裁のスカリア判事は、イタリア系で保守派だったが、講演やメディアで、女性やゲイの権利を認めない発言を繰り返していた。トランプ大統領の娘のイヴァンカが有給の産休休暇を作ろうとしているが、アメリカは先進国なのにそもそもそれがない酷い国なんだ。今いるヒスパニック系にとっては、新しく入ってくるヒスパニックが脅威になる。これから来る人はアメリカに入れないというトランプこそが自分たちにとって一番いいと訴えているのだろう」と指摘した。

 前嶋氏は「トランプ大統領は白人至上主義の問題について3度発言している。事件の直後はどちらのサイドもよくないと言った。次の時はKKKとネオナチ、人種差別主義はとんでもないと言った。そして3回目には喧嘩両成敗的なことを言った。だからぶれていると言えば、ぶれている。トランプ大統領は絶対に2020年の次期大統領選挙のことも考えているので、支持者を見ながら、微妙に対応を変えている」との見方を示す。


 町山氏も「アリゾナにラテン系の人口が増えてきている。このままだと次の2020年の大統領選挙では白人と拮抗するので、共和党と民主党の激戦州になる可能性がある。だから今回、トランプはアリゾナに行った」と説明、「トランプが"白人至上主義が悪い"と言うは必ず原稿を棒読みしている。つまり”言わされている”というパフォーマンスをしている。彼の支持基盤は白人至上主義的な人々なので、そこの部分を傷つけないように、でも世間一般的には白人至上主義を批判したようにしないといけない。非常に微妙なパフォーマンスをしている」と指摘した。

 最後に前嶋氏は「いろんな人が入ってくるアメリカはこの4、50年、なんとか軋轢のない社会を作ろう、多様性を認めようと闘って、突き進んできた。しかしそれに疲れちゃった人も多くなってきた。オバマ大統領の時に一歩進んだが、今は二歩下がるということなのかもしれない」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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