「小さなパチンコ店は閉めざるを得なくなる」現役オーナーが告白 業界を支える「三店方式」とは?

■「上限を低くしても依存症は解決しない」

 去年12月、国内のカジノを解禁するIR=統合型リゾート推進法が可決。同法ではカジノの解禁を認める一方、ギャンブル依存症等の悪影響を防止することも求めていることから、政府が対策を進めていた。

 そんな中、警察庁はパチンコの出玉率を現在の7割程度に抑制する風営法規則の一部改正案を取りまとめた。4時間で獲得できる出玉の上限が5万円相当以下に制限するというもので、大当たりの出玉の上限も2400個から1500個になるという。警察庁はこの改正案に対する意見を一般から募り、来年にも改正規則案を施行する方針だ。

 現在、パチンコをする人の平均遊技時間は4時間で、「勝った」場合の金額の上限は11万円相当ほどだ。パチンコ依存の支援団体によると、依存症のおよそ7割の人が1か月で5万円以上負けているという。依存症の多くの人は、この負け分を取り戻そうとさらにお金をつぎこみ、泥沼にはまっていくというのだ。今回の制限案によりパチンコで儲けることが出来なくなり、負けた分を取り戻そうとのめり込んでしまうリスクを減らすのが警察の狙いのようだ。


 厚生労働省が発表したギャンブル依存症の現状では、日本人の成人の4.8%がギャンブル依存症で、海外(米国1.6%、香港1.8%、韓国0.8%)に比べ、圧倒的な数値だ。2014年、536万人にギャンブル依存症が疑われたという。

 今回の報道に対し、街のパチンコファンは「リスク増やしてやらないようにって言ったって、娯楽としてみんな楽しんでいるんだからそれは無理でしょ」と話す。また、NPO法人ギャンブル依存ファミリーセンターホープヒルの町田政明理事長は「依存症はなくなることはまずないと思いますね。根本的な対策をしていかないと、上限を低くしてもなんの解決にもならない」と話す。


■警察の狙いをパチンコチェーンのオーナーが推測

 今回のパチンコ出玉規制、果たして本当に依存症対策が目的なのだろうか。そしてパチンコ業界は今後どうなっていくのだろうか。全国でパチンコ店を展開するオーナーのA氏が、匿名を条件にAbemaTV『AbemaPrime』の取材に応じた。

 警察の目的についてA氏は「3つあると思う。1つ目はまずはパチンコから依存症をなくそうということ。2つ目は、IR推進法が通ったので、パチンコのお客さんをカジノに呼び込みたいということ。3つ目は、これは本当に私見だが、パチンコ業界をすぐに締め付けることが出来ますよアピールし、カジノの所轄官庁になることを狙っているのではないか」と推測する。

 

 パチンコへの規制をめぐっては、1990年に一発台の廃止・確変の導入、2005年に大当たり確率の下限値を1/400、2015年には大当たり確率の下限値を1/320に、確変継続率を80%から65%へ、といった具合に段階的に厳しくなっている。今回の規制についても「パチンコいじめ」ではないかとの声も上がっている。


 A氏は「規制はどんどん厳しくなるが、台の方はどんどん高くなってきている」と打ち明ける。


 「業界が巨大になりすぎたので致し方ない部分もあるとは思うが、経営する側にとっては、台がそもそも高すぎる。1台50万円程もする。今回のように上限を下げられれば、リターンが少なくなる分、当然お客さんのベットも少なくなる。そうすると売り上げも減り、投資費用を回収できなくなる。一方で、台を入れ替えなければ、お客さんに来てもらえなくなる。小さなパチンコ店は閉めざるを得なくなり、それをまた大手が買い取る。警察にとっては、オーナーが少なくなればまとめやすいが…」(A氏)。

 ギャンブル依存症の問題については、「他の依存症、例えばアルコール依存症の人に対してはどうなのか。あくまでパチンコ業界を悪者にしようと世間がつくっているのではないか、という気分になる。以前、常連客にあるお婆さんがいた。亡くなられたあとご遺族がわざわざ訪ねてきて"ありがとうございます。うちの母はパチンコを覚えたことで幸せな残りの人生を頂きました"と言われたこともある」と訴えた。


■「三店方式」にメスが入るのか?

 A氏の意見に対し、警視庁退職後パチンコグループの営業本部長を務めていた経歴を持つ吉川祐二氏は「みなさんどうしてもパチンコというと、バックは警察だと思いがちだが、実は警察ではなく、公安委員会だ。警察はあくまでもその窓口。もしかしたら警察はパチンコの問題を請け負いたくないと思っているかもしれない」と話す。一方、吉川氏は「パチンコにハマってお金が足りなくなった人の中には、軽犯罪に手を出すケースもある。そういった犯罪をなくすことも、警察の狙いかもしれない」と話す。

 裏社会の問題を取材するノンフィクションライターの石原行雄氏は「IR法案、公営カジノの話が出てきた時点で、政治家たちにも様々な思惑があったと思う。やはりその中で大きかったのが、パチンコ業界をどうにかしなければいけないということだった」と話す。

 現在、パチンコ業界は「三店方式」と呼ばれる特殊な形態をとっており、パチンコ店、換金所、景品問屋がそれぞれ独立して営業している。まず、パチンコ店は客の出玉を景品と交換。次に客は換金所で景品と現金を交換。最後に景品問屋が換金所から景品を買い取り、パチンコ店に卸す仕組みだ。この複雑な方式を採ることで、パチンコ業界は建前上はギャンブルではないグレーゾーンとして長年存続してきた。

 石原氏は、この三店方式のおかげで賭博法から免れているが、食料品や生活用品と交換する牧歌的な時代から、現金に交換する人が増えたため「事実上の賭博ではないか」という声も強まっており、この是正の意味も込められているのではないかと推測。「中途半端にパチンコの締め付けをしてしまうと、生き残りを賭けた人々が地下に潜って先鋭化・悪質化していくような気もする」と話す。


 闇カジノの取材もしてきた石原氏は「パチンコ店で働いている人が常連客に設定(=良い台)を教えてバックマージンを取ったり、打ち子を雇ったりなど、裏に流れているお金が実は多い」と指摘した。


 こうした意見に対しA氏は「我々はギャンブルではなく、あくまでも娯楽としてやっている。換金してはだめだと言われているので、それも守っている。むしろこれだけ規制が入れば娯楽だろう」と話した。


■どこまでがゲームでどこからがギャンブルになるのか…

 日本生産性本部のレジャー白書(2016年)によると、パチンコの遊技参加人口は2015年で1070万人で、市場規模は2005年のおよそ35兆円から、2015年には23兆円と、10年間で約3分の2に縮小。スマホゲームなど娯楽の多様化でパチンコ人口は減少傾向が続いている。


 コンテクストデザイナーの高木新平氏は「出玉の上限を減らしていくことで、究極的には若い人たちがハマっているスマホゲームの課金との違いがわからなくなるのではないか。どこまでがゲームでどこからがギャンブルになるのか、曖昧になっていくのではないか」と指摘する。

 吉川氏は「一番重要なのは依存症対策だが、ホールで働いている人たちのこと考えなければいけない。もうちょっと行政の温かい手を差し伸べられたらな、と思う」とコメント。「パチンコ業界が完全に"ホワイト"になるは難しいと思う。理想としてはパチンコ屋から出て行く客が茶色の紙袋を持っていて、そこからビスケットがはみ出している、というような情景。行政側は、そこを目指しているのだと思います」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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