日本の若者には夢がないのか? 「お金があれば夢は叶う」という意見も

■不安を口にしながらも活動を続ける地下アイドルたち

 今週、将棋の藤井聡太四段が、竜王戦の決勝トーナメント1回戦で勝利し、歴代最多となる29連勝を達成した。藤井四段の6歳の時の夢は「しょうぎのめいじん」だ。今、その大きな夢に向かって着実に歩みを進めている。


 「欲ない、夢ない、やる気ない」の"3Y世代"。作家の堺屋太一氏は去年、現代の若者についてこう評した。

 しかし、ゴールの見えない夢を抱え、必死に日々を生きている若者たちもいる。全国で5000人いるとも言われる地下アイドル。その中でテレビなどメジャーな世界で活躍できるのは、ほんの一握りだ。

 5人組の地下アイドル「Magical Ban☆Bang」。ライブに駆けつけるファンは毎回2、30人程度だ。ライブチケット、物販、1回1000円の2ショットチェキ撮影での売上はCD制作費や衣装代など、アイドル活動に使うため、生活費には回らない。


 「全員が全員Magical Ban☆Bangのお金だけでご飯が食べられたら一番いいですね」。

 メンバーのうち2人は実家暮らしで、メンバーのしーたさん、もいしゃんさんは生活費を切り詰めるため共同生活をしている。生活費はバイトで稼いでいるが、それでも足りず貯金を切り崩しており、「赤字です」と口を揃える。グループを結成して4年目。彼女たちはまだまだやる気満々。「何年後に終わりとか、これをしたら終わりというのは多分まだ分からないし、今に必死です。もがいてる感じはありますね」と、夢を叶えるために走り続けている。


 もう一人、"地上"を目指して日夜頑張る地下アイドルがいる。「There There Theres」の有坂玲菜さんだ。地元・鹿児島でローカルアイドルをしていたが、2年前に上京。


 「本気で売れたいと思ってたので、東京に出るしかないなと思って」。


地下アイドルグループ「BELLRING少女ハート」に加入したが、グループは再編され今年2月に「There There Theres」へ改名した。

 生活は質素そのもので、住まいも都内の6畳のアパートだ。ある日の朝ごはんは"サバ缶"。アイドル活動の収入だけで暮らしてはいるが、「このまま続けていても結果が出ないんじゃないかと思って、別の進路を考えた方がいいのかなというのはありますね」と不安な表情も覗かせる。


■お金があれば夢は叶うのか?

 「夢を叶えるにはお金を持て」と訴えるのは、大阪のとあるタワーマンションに住む、投資家の神王リョウさん(38)。 築11年、3LDKのタワーマンションを二部屋借りて家賃は合計100万円。

 大阪湾を望む広々としたリビングには、120万円するという煙の出ない暖炉。漫画がズラリと並んだ趣味の部屋には、200万円で特注したシャネルの自転車が。さらにカラーボックスに無造作にしまってあったフランク・ミュラーの腕時計は、ダイヤモンドが散りばめられている500万円のものだ。

 就職面接で渡された『金持ち父さん貧乏父さん』を読み、『お金持ちになるために頑張ろう』と決意して株を猛勉強。24歳の時には月2000万円以上稼げるようになったという。


 神王さんには、大金を得たことで叶えたもう一つの夢がある。高校時代からの夢、ミュージシャンだ。「レコード会社を買って、自分でCD作ってデビューした」。リリースした5枚のCDのプロモーションビデオの制作費や衣装代などで数千万円以上もかけたという。

 「夢は持たないとダメだと思う。夢の大きさが自分の人生の限界値だと思う。たとえばでっかい夢を持っていれば、うまくいけば最高でもそこまで行けるけど、小っちゃい夢だったら最高でもそこまでしか行けないんで、どうせならでっかい夢を持った方が絶対いいと思う」(神王さん)


 果たして、お金さえあれば夢は叶うのか。


 教育分野のNPO「Teach For Japan」松田悠介代表は「30億とか100億あっても叶えられない夢もある。例えば世界中の飢餓の問題を解決しようと考えたら、多分1兆円、2兆円使っても解決できないかもしれない」と指摘した。


■「夢よりも目標の方がいい」という風潮

  今を生きる若者たちに、夢は無いのか。街で聞いてみると、「二人で一緒にカフェを開きたいって言ってるんです」「アニメ好きなんですけど、待遇がいいアニメーション会社みたいなのを作って、ぐんと盛り上げていきたいです」など、それぞれに夢を語ってくれた。

 2012年に行われた、若者の意識に関する国際比較調査のデータによれば、「実現したい夢をもっているのか?」との問いに中国では92.7%、アメリカでは91.5%、日本では64.6%が「ある」と答えたという。


 最近では、自らネットで発信したり、クラウドファンディングなどで資金を募ったりすることで、夢を叶えるための方法も多様化している。芸能界も身近になり、中学生向けのなりたい職業アンケートでは、YouTuberなどの動画投稿者が上位に来ている。

 ITのアウトソーシング事業を行うジー・ブーンの後藤稔行代表は、「中国とアメリカに共通しているのは、ポジティブに発言すること。これに対して日本人は謙虚で、自分の夢を友達に堂々と語るのは恥ずかしいという空気がある」と指摘する。


 法政大学の児美川孝一郎・キャリアデザイン学部教授は「夢も目標も、どちらも前向きなものだが、目標の場合、どういう風に努力をすれば到達できるかがわかりやすい。しかし夢の場合はそれが見えない場合があったり、本人も分からずにただ言っているだけの場合も多い。むしろそういうものが夢と言っていいのかもしれない」と話す。また、学校でのキャリア教育の結果、『夢を持ちなさい』と言われることに対し、むしろ嫌気が差している面があるのではないかと推測した。

 慶應義塾大学の若新雄純・特任准教授も「"ドリーム"より"ゴール”みたいな、到達できるかわからないアバウトなものよりも、確実にその成果を手にしたかどうかを重視する教育を受けてきた気がする。ぼんやりしたものをいつまでも持ってるのは良くないとみなす社会になっている気がする。その結果、叶う可能性があることを言ったほうがいいという志向になってしまっているのではないか」とコメントした。

 松田氏は「幼稚園とか小学校の頃って、みんな夢を描いている。ただ、具体的にプロ野球選手になるための方法を教えたりして背中を押してあげることもなく、その場で放置してしまっているような気がする。そして中学校に上がった途端、今度は"現実を見なさい"と言われてしまう。受験して高校、大学に行って、会社で働いてちゃんとお金を稼いでマイホームを買って…というのを押し付けちゃっているのでは」と、大人の側にも責任があるとの見方を示した。


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