「任侠団体山口組」立ち上げ 「猫組長」と会見参加のジャーナリストが分析

■「サイン事件」は「情けない、恥ずかしい事」

 4月30日、兵庫県尼崎市に神戸山口組の"直参"と呼ばれる幹部たちが集まり、新組織の立ち上げ会を開いた。


 新たに立ち上がったのは、新組織「任侠団体山口組」。組長は置かず、神戸山口組の中核組織、山健組の織田絆誠(本名:金禎紀)元副組長を代表にするとしている。


 集会後、テレビカメラを入れない形での異例の記者会見が開かれた。その場に立ち会ったフリージャーナリストの今西憲之氏によると、会見は「古川組」の事務所3階にある、旅館の大広間のような3〜40畳敷の部屋で開かれたという。畳の上に低い台が置かれ「任侠団体山口組」の池田本部長はじめ6人の幹部が座り、それに向かい合う形で新聞、雑誌などの記者たちが座布団に座るという形で行われた。「和気あいあいとしていて、ピリピリした感じはなかった」という。代表となる山健組の織田元副組長は会見が始まる前に会場を後にした。


 「六代目山口組から分裂した神戸山口組につけば、上納金の徴収がかなり楽になるのではないかと思っていたが、実際はもっと厳しい徴収だった、という説明が池田本部長からありました。決意表明の中で"業界"という言葉を使い、今までのようには繁盛しない厳しい業界になったとも説明した。また、六代目山口組の司忍組長に対し、神戸山口組の関係者と思われる人物が"サイン下さい!"と大声を上げて騒動となった"サイン事件"にも触れ"情けない、恥ずかしい事であった。任侠道の考えからすると、やったらあかんかったんやないか"という趣旨の発言がありましたね」(今西氏)

 今回の新組織立ち上げについては、法の網目をかいくぐり、「指定暴力団」から外れることなどを狙った"偽装分裂"ではないかという見方もある。これについて今西氏は「取材している印象としては、その確率はあまり高くないのではないか。今回のような新しい展開で、なんとか頑張って稼いでいけないか模索している印象を持った」と話した。


■新組織の織田絆誠代表は「昔気質の人で、力がある人」

 山口組系元組長の猫組長は、今回の分裂の話を聞いて「率直にびっくりした」と話す。代表に就任するという織田絆誠氏とも「面識がある」といい、「昔気質の人で、力がある人」と評する一方、「ヤクザにもルール、筋がある。それを破って(組を割って出たことには)賛同は出来ない。本来は神戸山口組も同様」とした。


 猫組長は「当事者双方の言い分を聞いてみないとわからない。なんとも判断できない」としながらも、「根本には思想の対立があると思う。組織に対し、それぞれが理想を持っている。いわば経営理念とも言うべき共通の"任侠道"があるが、その実践の仕方、統治の仕方に不満が出てきたり、食い違いが生じてきたりしたのでは」と推測。


 新組織の名前が「任侠」を冠している理由も「今こそヤクザの存在意義をかけて、任侠道を求め実践しようという原点回帰だ。神戸山口組を出て、新団体を立ち上げるには正統性も必要だし、周囲の賛同も得なければいけない。そのためにはやはり"任侠道"の看板を掲げるのが良いからだ」と分析した。


 猫組長が「本来は神戸山口組も許されない」と話すように、そもそも神戸山口組は一昨年8月、六代目山口組の人事や運営方針に不満を持つ組長らが離脱して結成された。背景には、名古屋市の暴力団である弘道会の司忍組長が六代目に就任したことがあると言われている。それ以降、発砲事件など全国で約90件の抗争が相次ぎ、双方の関係者4人が死亡している。

 「山口組を巨大な組織に育て上げた、三代目の田岡一雄組長の時にナンバー2の若頭だったのが初代山健組組長の山本健一組長。そこから山口組五代目の渡辺芳則組長までは山健組が"保守本流"を担ってきた。しかし、六代目に弘道会の司忍組長が就任したことによって流れが変わった。その山健組の名跡を継いでいるのが神戸山口組の井上邦雄組長」(猫組長)。


 しかし、社会情勢の変化に伴い、経済的にもガバナンス的も、六代目山口組の求心力は自然と弱まり、内部には不満が蓄積していったという。


 「六代目になって、新しい徴収システムが出てきた。組員向けの物販も始めるようになったし、音楽教室をやったり、様々なお店を経営したり、手広くやるようにもなった。ただ、それらは表の経済の部分で、これから増えていくのは博打や覚せい剤といった"地下経済"だと思う」(猫組長)。


■いずれ一つの「山口組」に戻るのではないか

 規制のための法整備が進み、暴力団にとっては厳しい時代に突入している。


 猫組長は「治安維持は警察力で賄うのが理想。しかしそれが及ばない部分が必ず出てくる。社会には一定の"不良人口"や、外国人の犯罪集団が存在していて、警察権力だけではどうしようもない面もある。そこに自然なブレーキをかけ、コントロールしてきたのがヤクザだ。取締りもっと厳しくすれば地下組織になったり、別の犯罪組織も出てきてしまう。六本木などに行けば分かるが、街角に立る外国人の国籍が変わってきている。バブル以降は中東系が多く、テレカを売ったり、覚せい剤を売ったりしていたのが、ロシア系に変わり、今ではアフリカ系が多い。これは地元のヤクザが力を失った証拠」と話す。


 「暴力団の構成員だと認定されれば、銀行口座も使えないため、地下経済に頼らざるを得ない違法な状態に入っていく。ダミーの人を使って、表で経済活動をする人も増えてくる。そうなってくると取締りも難しくなる。もちろん、暴力団自体が衰退していくだろうし、組員を辞めるという人も大勢出て来るだろう」(猫組長)


 今後、任侠団体山口組が、神戸山口組、六代目山口組を巻き込んだ三つ巴の抗争に発展する恐れはあるのだろうか。


 「六代目山口組は新団体の正統性を認めないだろう。ただ、当事者だけの問題でもあるので、短期的に見れば抗争になるということはないと思うし、一般市民に危険が及ぶようなことはないのではないか」(猫組長)。


 今西氏は「聞き及ぶところにると、新組織に加わるのは400〜500人と推測されるが、神戸山口組は10日以内に戻れば不問に付すとしており、さっそく戻った人もいるということなので、しばらくは流動的な状態が続くのではないか。抗争の可能性も否定はできない、ただ、拳銃が発射されるようなことになると、暴力団社会全体が壊滅状態に陥ってしまうことにもなりかねない。30年前の山一戦争(山口組と一和会による抗争)みたいなことは起こらないのではないか」と推測した。


 さらに今西氏は、いずれ一つの「山口組」に戻るのではないかとも話す。


 「1年後なのか10年後なのかはわからないが、歴史が証明している。一和会も、結局は最後に山口組に戻った。やっぱり関西で山口組の"菱の代紋"の看板は大きいし、社会情勢も厳しくなる中で、複数の団体が生き残っていくのは簡単ではない」。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

続きを見る

0コメント

  • 1000 / 1000