朝貢外交?日米首脳会談、専門家はどう見たか?

 「(トランプ大統領は)厳しい厳しい選挙戦を勝ち抜き新しい大統領に選出された。これこそまさに民主主義のダイナミズム。大統領就任を心から祝福したいと思う」


 「私たちは抱き合った。私たちには強い絆がある。すごく相性がいいと思った」


 首脳会談を終え、お互いを褒め合い持ち上げ合う2人。トランプ大統領はホワイトハウスを訪れた日本の総理をハグでお出迎えし、さらに首脳会談の冒頭にも長く強い握手を交わすなど、互いの信頼関係や友好ムードを前面に押し出していた。


 トランプ大統領お得意の「不規則発言」など、日本側としては不安の募る首脳会談だったが、その注目の結果はどうだったのか。


 「トランプ政権の登場により日米の経済関係に新たな創造が始まる。日米間の経済関係について、麻生副総理とペンス副大統領のもとで対話を進めることで一致した」


 会談を終え、そのように話した安倍総理。今後双方の政権ナンバー2が二国間貿易をどうしていくか協議することで合意したという。また会談でトランプ大統領は日本のアメリカへの投資を評価。日米の経済関係に関してWin-Winの関係を目指していくということで一致した。

 さらに安全保障の分野では、「日本とその管理下にある全ての地域の安全保障とこの重要な同盟関係のさらなる強化を約束する」とトランプ大統領は述べた。沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約で定める防衛義務の適用対象であることを確認した。


 首脳会談では蜜月を演出したトランプ氏だったがこれまで経済問題をめぐっては日本側の不安を煽る発言のオンパレードであった。貿易の不均衡をめぐって、「日本、メキシコ、ほぼ全ての国との間で貿易赤字だ。ちゃんとした交渉をやってこなかったからだ」と日本を名指しで批判。さらにトヨタ自動車のメキシコ新工場建設をめぐって「絶対にダメだ!米国に工場を建設しなければ重い国境勢を課す」とTwitterで攻撃。その4日後、豊田章男社長は「今後5年間でアメリカに100億ドル(約1.2兆円)を投資する」と語った。


 しかし、大統領令でTPP交渉から永久に離脱し二国間の通常交渉へ転換を図ることを決定。「我々は正式にTPPを終結させた」とした。これにより、TPPを成長戦略の柱と位置付ける安倍総理にとって大きな打撃となったが、二国間の枠組みにも踏み込まざるを得なかった。


 一方で、トランプ砲の矛先は円安相場にも向いた。「中国や日本は長年にわたり、為替を操作して通貨を切り下げている。我々はバカみたいに何もしていない」と述べた。ターゲットは日銀の金融緩和による円安だ。まさにアベノミクスの根幹そのものだ。これには安倍総理も「首脳会談の際にはしっかりと、もし反論すべき点があれば反論していきたい」と語っていた。

 その一方で「米国の産業界全体の生産性向上に、競争力の強化に貢献していく」とアメリカ経済への貢献を最大限アピールする姿勢を示していた。


 今回の首脳会談を専門家はどのように見ているのか。


 自民党参議院議員の青山繁晴氏は「全体的には安倍さんの戦略が活きている」としながらも、二点心配な点があるという。一点目は安倍総理の「自動車など日本企業は米国で投資し雇用創出」という発言。「年金の積立金が回り回ってアメリカで使われるのではないかという心配が消えてない」と青山氏は語る。さらに二点目がトランプ氏の中国との電話会談を終えて「うまくやっていける。為替政策で公平な土俵を作っていく」との発言。「中国の習近平国家主席と電話会談をすることを前もって日本に伝えてくれなかった」と説明した。しかしながら会談自体はうまくいったようだ、と分析する。

 一方で“政権に最も食い込む男”と呼ばれるジャーナリストの山口敬之氏は、会談だけでなく共同声明にも注目した。その結果、「非常に驚いた」とする点が二点あったそうだ。一点目が、安保第5条が尖閣に適用されるという一文。「史上初めて文字になった。これからはいちいち聞かなくてもいい。それだけ一歩踏み込んでくれた」と山口氏は語る。


 二点目が、トランプ氏が在日米軍の受け入れを感謝する言葉を述べたということ。「米軍は日本を守っているだけではないんだ、というのをどこかで理解しているということ」が伺えるそうで、安全保障に関して日本政府の心配は全くなくなったとのことだ。


 また日米の二国間貿易について、今回の会談でFTA(自由貿易協定)という単語を一回も使っていないことに関して「大サービスといっていいかもしれない」と山口氏。「握手など表の部分だけではなくて、中身の部分でも蜜月に向かって気を遣ってくれた」と考察する。


 「全体的に成功したと言える会談だと思う」と語るのは米シンクタンク元研究員の横江公美氏。麻生副総理とペンス副大統領との間の協議に関して「そこでならアメリカ側から厳しい発言を受ける可能性があった」と指摘するが、それが先送りになったことに注目したという。またペンス副大統領に関して、共和党とトランプ大統領をつなぐ重要人物であると説明。そのため、より麻生副総理との協議に注目しているそうだ。


 トランプ氏について「軸が全然変わっていない」と青山氏は指摘する。「自分がもう一度強いアメリカに戻すのだという軸は変わっていない」とのことだ。強いアメリカというものに関して、まずは「軍事が強い」ことが狙いなのではと青山氏はコメントする。そのために海兵隊のトップを国防長官にしたそうだ。


 このような点は戦後レジームの脱却を訴えている安倍総理にとってはマイナスではないのであろうか。「私とアメリカ国民は日本の長い歴史と豊かな文化に感銘を受けている」というトランプ氏の発言を取り上げ、「マイナスではない」とする山口氏。歴史に触れてきたということから「ある種のサプライズで『トランプ氏の内側を見た』といって安倍総理の周りの方はかなり驚いていた」とのことだ。


 また山口氏によると、会談後、首席戦略官を務めるスティーブン・バノン氏が安倍総理の元へやって来てこのようなことを言ったという。「私たち(バノン氏とトランプ氏)は今までの総理の発言をずっと見てきた。マスコミがなんと言おうと総理の発言は信じている」友好関係を築けていることの表れであろうか。


 今回、安倍総理はいわゆる“日米成長雇用イニシアティブ”という提案をした。インフラなどへの投資で五本柱と言われているが、日米の連携によって10年間でおよそ51兆円市場と70万人雇用を創出する経済協力案だ。米経済への貢献を最大限アピールした格好であるが、これについて“朝貢外交”ではないかとの声も上がっている。


 「このような言葉(朝貢)を使うこと自体良くない」とする青山氏。「積み立てた年金が回り回って使われるのではないかという点は十分に関心した方が良い」とのことだ。


 アメリカは“強いアメリカ”を掲げているが、日米でWin-Winな関係を築こうとする時、日本はどのような姿を考えているのか。

 「一番気をつけていかなければならないのは」と口を開く横江氏。トランプ大統領の考えで一貫している点について、「国土安全保障」と「経済と雇用」に二点をあげる。この二点を理解して安倍総理は会談に臨んだというが、「相手だけのためになってしまってはいけない。トランプ氏は本当にウィンウィンにしてくれるのか。それともハゲタカ化してしまうのか。ここは日本側としてすごく見ていかなければならない」と横江氏は説明する。今後の安倍総理の姿勢の見せ方に注目だ。


 また、日米首脳会談では北朝鮮の核ミサイル発射への懸念が確認された。今後北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)の試験発射に踏み切った場合トランプ大統領はどのような対応をするのか。


 これに対し、「本当のことを言っていいか分からないが」と口を開く青山氏。これまで選挙中からトランプ氏は金正恩氏に会いたいと言い、北朝鮮側も喜んでトランプ氏を褒めていたが、「実は米軍は違うことを準備している」として驚きの情報を紹介した。「いま北朝鮮に対して初めて本気で戦う準備をしている」という。


 またこの点について、山口氏も言及する。今回トランプ大統領は北朝鮮の核兵器とミサイルという文言を文書に残したというが、これは「なめるなよ。こっちは色々な手を用意しているぞ」というメッセージであることがうかがえるそうだ。


 会談を終え、新たなる関係を築いていく日本とアメリカ。その先にあるのは光か闇か。今後も目が離せない。(AbemaNewsチャンネル/みのもんたのよるバズ!より)


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