名門大学のカーストが一家惨殺事件を引き起こした!? 松本若菜×中村倫也『愚行録』インタビュー 


 エリートサラリーマンの夫に美人で完璧な妻、そして可愛い一人娘、理想的な家族はなぜ殺されたのか?証言から浮かび上がる、被害者の本当の顔、そして犯人とは…。女同士のマウンティング、カースト社会、ウワサの数々、まるで現代社会の縮図のような戦慄の群像ミステリー、映画『愚行録』が2月18日(土)から全国公開される。


 原作は第135回直木賞の候補にもなった貫井徳郎の同名小説。週刊誌記者の田中(妻夫木聡)は一家惨殺事件の被害者・田向夫妻の過去を知る人物たちに取材を行っていく。ネグレクト(育児放棄)の容疑で逮捕された妹・光子(満島ひかり)のことに頭を悩ませながらも、田中は取材を進めていくうちに、田向の妻・友季恵(松本若菜)と大学時代の同級生・宮村淳子(臼田あさ美)とその元カレで夏原と三角関係に陥った尾形孝之(中村倫也)に話を聞くことになる。


 田向友季恵の旧姓は夏原。夏原と宮村、そして尾形が青春時代を過ごした文應大学は、有名な私立大学であるがゆえに内部生と大学から入学した外部生の間に大きな溝があり、外部生から内部生のカーストに上がるには相当な家柄と容姿が必要とされる。しかし、夏原は入学するや否や外部生から見事に内部生グループへ仲間入り。夏原は、昇格した外部生として文應大学で一体何をしていたのか…。田中は、宮村と尾形の話から夏原の別の顔を知ることになる。


 AbemaTIMES編集部は、物語のキーとなる文應大学の同窓生を演じた松本若菜と中村倫也にインタビュー。お互いの役や作品に対する思いを聞いてきた。


世の男性に「あるある」と思われる役を演じたかった

ーー演じていて共感できる部分はありましたか?


松本:共感できなかったですね。「1番友達にしたくないな」というイメージの女性でした(笑)。

劇中に出てくる「夏原」は尾形や宮村の回想に出てくる「夏原」だから、「みんなのイメージの中での夏原」でしかなくて、どうなんだろうという部分はありましたね。


ーー毎回演じる度に演じ分けたり?


松本:そうなってしまうと分かりやすくなってしまうので、あえて何も考えずにやっていました。


中村:僕は「尾形」を演じているときは、若い頃の自分を見ているようで、シンパシーを感じていました。尾形は、誰もが共感しやすい役だと思うので、少しでも世の男性に「あるある」って思ってもらえたらなぁ、心の中の「いいね」ボタンを押してもらえたらと思って演じていました(笑)。

ーー女の争いを前に、あの事なかれ主義な感じとかもリアルですよね。


中村:なあなあで済ませてしまうのが男ですよね(笑)。

この映画は、登場人物それぞれに印象的なセリフがあるんです。尾形には「女って、基本自分の話を聞いてもらいたがるじゃないですか」っていうセリフがあるんですけど、このシーン、尾形はずっと自分の話を聞いてもらっていましたからね。そういう男性にありがちな残念さが尾形にはあるんですよ。「女って」って言っている時点で女を敵にしていることに気づいていない。

ーー中村さん自身は、女性同士のいざこざには気づかないタイプですか?


中村:たぶん気づかないです。もし後から「本当は知ってたでしょ?」とか聞かれたら、「まあね」って気づいていたふりをします(笑)。分かんないですよ、男には。


女子大生を演じることにプレッシャー

ーー夏原や尾形のモデルにした人はいましたか?


中村:それは是非、夏原のモデルを聞きたいですね。絶対に友達になりたくないって今言っていた(笑)。芸能人でいうと誰ですか?(笑)


松本:めっちゃ敵つくるじゃないですか(笑)。

本当にイメージになってしまうんですけど、「同性が憧れる女性」というのをイメージしました。口調を真似るとかはなかったんですけど。

原作の小説では母親になってからのママ友たちとのシーンも多かったのですが、映画だと学生時代がメインで、18〜22歳くらいまでの若い頃を演じなければいけないので、そこにプレッシャーを感じていました。


カーストはどこにでもある だから『愚行録』は生まれた

ーー映画内では「文應大学」というスクールカースト文化も描いていましたが、実際にカースト社会、コミュニティ内での格差を目の当たりにしたことはありますか?


中村:ここまで層がくっきり、グラデーションがはっきりしていないかもしれませんが、どこにでもあるんじゃないですかね。だからこそ、この作品が生まれたのだと思います。


松本:内部生役の出演者が、実際にそういうスクールカーストのある学校に通っていたって言っていました。


「小さなことに傷つく姿が可愛い」 30歳になって思えること

ーー大人っぽくて誰からも憧れられる完璧な夏原と、周りの目を気にしつつも自分の好きなことをしっかり持っている宮村。実際に、中村さんが2人に言い寄られたら?


中村:今30歳になって客観的に見られるのですが…劇中に出てくる学生時代の女性ってすごい小さなことに一生懸命で、自分のコミュニティ内での位置を認めてもらうのに必死だと思うんですけど、逆に男って単純で馬鹿だから、今楽しければいいと思って「みんなで飲みに行こうぜ〜」くらいしか考えてないじゃないですか。だから、その世代だったら、夏原のストレスなくうまい具合に男を立ててくれる「ちょうど良さ」っていうのは魅力的なんでしょうね。


ーー宮村みたいな女性と付き合うのは疲れちゃう…とか?


中村:当時はそうかもしれないですね。でも、今なら、そんな宮村が可愛くて仕方ないっていう。「なんでそんなどうでもいい小石を蹴っ飛ばしてはカリカリしてらっしゃる」と思って(笑)。実年齢の僕からすると、小さなことで傷ついている宮村が可愛くて。ちょっとした水槽に入れて飼いたくなりますよ(笑)。

中村:夏原はコンプレックスが強くて、努力家だと思います。だから、宮村から尾形を奪ったことでビンタされた時にビンタをし返したんだと。負けたままにしない。女子としては「痛〜い」「大丈夫?」ってした方が得じゃないですか。


ーー周りに庇ってくれる男性がいるのなら、女は泣いたら勝ちですもんね。


中村:そこで泣かないのが夏原。


松本:わたしもそう(夏原は努力家だったと)思っていました!そこで、泣かないのが外部生なんだと。じゃないと、外部生から内部生のカーストには入れない。


他人事ではなく、身近でも起こりうることだと思って見てほしい

ーー映画の見所や、読者へのメッセージをお願いします。


松本:原作を読んだ時に、これをどうやって映画化するんだろう?と思ったんですけど、一つ一つのエピソードは実は結構身近に起こりうることで。夏原が本当に天然の人だったとしたら、相手にとって良かれと思ってやっていた行動だとしたら…それであんな惨劇が起こってしまったのだとしたら怖いです。天然だったら…と思うと一番怖いんです。

なので、他人事ではなく、身近でも起こりうることだと思って見てほしいです。だからこそこの映画の恐ろしさが分かるのだと思います。


中村:僕からも…いろんな人の小さい見栄や、小さい嘘をクスクス笑って観ていたら、あれ?他人事じゃないっていう怖さがあるので、それを楽しんでください。


ーー今後出演したい作品や、やりたい役はありますか?


中村:現存するすべての作品に出演したいです。


松本:わたしもです(笑)!そして、また中村さんとご一緒したいです。すごくお上手で、やりやすかったんで。


中村:そう言ってもらえると嬉しいです。


松本:ぜひ、またよろしくお願いします。


 夏原はなぜ家族とともに殺害されることになったのか。内部生と外部生という独特なカースト制度がしかれた文應大学での時間は何だったのか。夏原や尾形たちの過去に一体何があったのか。誰もが犯してしまうかもしれない「愚行」にぜひ注目してもらいたい。


インタビュー:堤茜子 東田俊介

テキスト:堤茜子

写真:長谷英史

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