電通過労自殺 10代から30代、死因の1位は「未だ自殺」

 1月20日、電通で働いていた高橋まつりさんが2015年に過労自殺した事件について、電通と遺族側が合意書に調印し、母親の幸美さんが会見を開いた。合意書には慰謝料等解決金を支払うことや再発防止策の実施状況などについて、毎年12月に遺族側に報告することが盛り込まれている。

 そして同日、厚生労働省は2016年の自殺者数の統計を発表した。

 2016年1年間に自殺で亡くなった人は2万1764人と7年連続で減少しており、減少率は統計を始めてから最大となった。自殺で亡くなった人が最も多かったのは2003年の3万4427人で、景気の悪化が要因の1つとも言われている。その後は減少傾向にあり、今回22年ぶりに2万2000人を下回った。


 しかしそんな中、仕事に関する問題で自殺した50代の男女は増えており、若い世代の自殺率も減少してはいるが、10代から30代の死因の1位は未だ自殺となっている。

 自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンク代表の清水康之氏は、自殺者の減少傾向の要因について2006年に成立した自殺対策基本法を挙げ「これに基づいて、国のみならず社会をあげて自殺対策が進み始めた。自殺対策が社会全体に広がってきて、結果として自殺に追い込まれていたような人たちが自殺ではなく生きる道を選べるようになってきた」と説明した。


 一方で「亡くなった人が生き返ってこない限り、本質的な意味では減ったことにはならない。2万2000人を下回ったとしても、1日平均約60人が毎日亡くなり続けているということなので、これは非常事態が今もなお続いているという、そういう認識をしっかり持つ必要がある」と指摘した。


 さらに清水氏は、自殺の原因や動機に関して「平均すると1人4つ要因を抱えて亡くなっていることが調査の結果分かってきている。それは失業者や労働者など、属性によって抱え込みがちな問題の組み合わせは異なっているが、平均すると4つくらい問題を抱えている。決して単純な理由で亡くなるわけではない」と説明した。


 日本財団の資料によると自殺未遂をした人の理由は健康問題が多いという。これについても清水氏は「結局、健康問題になる。過労や借金で困っているといったときに、最初は物理的な問題だが、次第に精神的に追い込まれていったり、あるいはその中で食事が取れなくなったりして最終的に健康問題になる」と、その過程を説明。「健康問題が多いというのは当然であって、むしろその背景にどういった問題が潜んでいるのかということに注目する必要がある」と、その裏に隠れた問題を指摘した。


 こうした現状の中で、どうすれば自殺を防ぐことができるのか。


 全国およそ4万人に行った大規模な自殺意識調査によると、4人に1人が本気で「自殺したい」と考え、5人に1人が身近な人を自殺で亡くしていた。そのうち、恋人を亡くしてしまった人の場合、4割近くが後を追い、自殺未遂したというデータもある。


 調査を行なった日本財団は、

  • ポジティブ思考になること
  • 自分の居場所を持つこと
  • 自分のことをわかってくれると思える人がいること

と、自殺を防ぐ3つのポイントを紹介した。


 また、自殺防止の1つの取り組みとしてさまざまな鉄道会社が駅に青色のLED照明を設置している。青色の光は人の気持ちを落ち着かせる効果があるとされ、設置していない駅と比べて自殺率が平均84%も減少したそうだ。


 清水氏は最後に「まずこの問題についてしっかりと向き合う、そこからしか物事は始まっていかないと思うので、その事実と向き合いながらそれぞれやれることをやっていくことだ」と語り、「亡くなった方たちから最大限、何をすべきか、どういう支援が必要か、あるいはどういう問題を取り除いていけばいいのかということを学んで、それを私たちの社会にちゃんと還元していくことだ」と話した。

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