【コメント全文】「謝罪などを受け電通側と合意」高橋まつりさんの母親が会見

 20日、過労のため自殺した電通の新入社員・高橋まつりさん(当時24)の母・幸美さんが会見を開き、謝罪などを受け電通側と合意したことを明らかにした。


 東京労働局は昨年12月28日、社員に違法な長時間労働をさせていたとして、労働基準法違反の疑いで電通と高橋さんの上司だった幹部1人を書類送検。石井直社長も責任を取って辞任する意向を表明していた。


 きのう電通は臨時の取締役会を開き、石井直社長の後任に、常務執行役員の山本敏博氏を昇格させることなどを含む人事を決定、役員やまつりさんの元上司らの処分を行ったことを明らかにした。


 幸美さんは昨年以来、電通側と話し合いを重ね、きょう午後、謝罪や再発防止策の検討・実行の約束などからなる合意書が調印されたことを受けて、会見を開いた。幸美さんが合意にあたって発表したコメント、石井社長と話したという内容は以下の通り。


会社と合意書調印にあたって

高橋幸美

2017年1月20日

 

 本日、会社(電通)との合意書調印に踏み切りました。

 調印を決意した理由は、

 娘が業務により亡くなったことについて、会社が責任を認め、謝罪したこと、

 電通の社風・過重労働の象徴であった鬼十則を、会社が社員手帳から削除したこと、

 娘が死ぬほど辛かった、死の原因となった深夜残業・休日出勤について、会社側はこれまで私的情報収集・自己啓発などと扱い業務として認めていなかったが、会社は、これを改め、サービス残業をなくすことを約束したこと、

 会社が、深夜残業の原則禁止など、改革をすでに始めていること、

 会社が、パワハラ防止のために全力を尽くすことを約束したこと、

 会社が、業務の改善と改革の実施状況の報告を、今後、遺族側に定期的に行うことを約束したこと、

 業務の改善と改革に向けて、役員・管理職が研修会を行い、遺族側の話を直接聞く場を儲けることを約束したこと、

などです。

 石井社長が昨年末に辞任の発表をされましたが、社長交代・役員交代が行われたとしても、二度と同じ悲劇を繰り返さないように、改革に向かってほしいと思います。

 以上、会社との合意には至りましたが、会社側がどんなに謝罪を述べたとしても、再発防止を約束したとしても、娘は二度と生きて帰ってくることはありません。

 しかし、まつりが今でも東京のどこかで元気に暮らしているような気がしてなりません。

 テレビに映る娘の姿を見る度に「ああ、まつりは本当に死んでしまったんだなぁ。。。」と茫然とします。

 まつりに会いたい。

 まつりを抱きしめたい。

 でも二度と叶うことはないのです。

 娘を失った悲しみが癒えることは決してありません。

 しかし、娘の尊厳んを守るためにした労災認定の発表で、娘は労働問題のシンボルになり、日本中の働く人に大きな波紋を投げかけることになりました。

 娘や、これまで過労で亡くなった多くの人たちの志を無駄にしないためにも、日本に影響力のある電通が改革を実現してほしいと思います。

 深夜残業禁止令を出しても、業務量や人員の調整・コントロールをしないと、時間規制は実現できません。業務量などの現状を改革していくことに対しては、企業の中に反対する人もいるでしょうが、強い決意をもって改革を実行していただきたいと思います。

 政府には、「働き方改革」についての真剣な議論によって、36協定延長時間の上限規制、サービス残業に対する罰則を含む規制の強化、サービス残業を助長するような固定残業制の禁止、勤務間インターバル制度の導入など、働く人を守るために法律改正をしてほしいと強く希望します。

 最後になりましたが、私どもを励まし、支援してくださったすべての方々に心より感謝いたします。


以上


本日合意書調印にあたって石井社長に話した内容

高橋幸美

2017年1月20日


本日、合意しましたが、娘は二度と生きて帰ってこないし、抱きしめることはできません。

娘が死ぬほど辛かった、死の原因となった連続の深夜残業・休日出勤。

これらの業務が私的情報収集・自己啓発などの名目で業務として認められていなかったこと。

このことが原因で、娘の残業深刻時間は月70時間に収まっていました。

そのため、娘は産業医との面談も受診していませんでした。

これらが業務として認められていたら、残業時間を正確に申告することが許されていたら、娘はどこかで誰かに救われていたかもしれません。

娘は死なずに済んだかもしれません。

「ハラスメントや長時間勤務に関する相談が本人からなかった。」といわれていますが、彼女のメールには、繰り返し「会社に行くのが怖い。」「上司が恐い」「先輩が恐い」「相談したことがわかったら恐い」とありました。

電通における社風「体育会系レベルではない異常な上下関係」「年次の壁は海より深い」と娘が言っていたしゃ風であるのに、新入社員が相談できる相手は年のごく近い先輩だけしかいなかったのです。

人事に相談しても有効ではなかった。

12月には特別条項まで出されていました。

11月に勇気を出して、人事や上司に相談していたのに、誰も娘を助けてくれなかったのです。

娘が生きていたら、誰かが娘を助けてくれていたら、娘は今でも電通のために働いていたでしょう。

娘の希望どおりに英語や中国語を活かして仕事をしていたかもしれません。

そして、娘の描いていた夢のとおり、将来は母と弟を招いてハワイで結婚式を挙げ、子どもを産み、母を東京に呼んで一緒に住んでいたかもしれません。私は娘と一緒に孫を育てていたでしょう。

日本の発展に貢献するために教育を受けてきた娘は、それを実現することができたでしょう。

私は今でも娘を抱きしめることができたでしょう。

みなさんは、このことをしっかりと胸に刻んで下さい。

彼女の配属希望では、デジタル部門は7部門中一番希望しない7番目でしたが、娘は電通の仲間として迎えられたことを誇りに思っていました。

世間では、彼女は電通に入社しなければよかったのにと言われています。

こう言われていることを返上できるよう、ひとり残らずすべての社員が幸せにいられる会社に変えてください。


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