熊本地震の取材を続ける堀潤氏「災害報道のあるべき姿、模索を」

 2016年は、多くの自然災害が日本を襲った。


 1月 青森県で震度5弱

 4月 熊本地震が発生

 9月 台風16号が襲い、各地で大規模な冠水が起こった。

 10月には阿蘇山が36年ぶりに爆発的な噴火をし、鳥取県中部で震度6弱の地震が発生した。

 12月には新潟県糸魚川市で大規模な火災が発生した。


 AbemaPrimeでは、今なお復興の途上にある熊本県を訪ねた。あれから約8ヶ月。熊本の象徴とも言うべき勇壮な熊本城も、外壁は剥がれ落ち、いたるところで石垣が崩れたままだ。


 被災直後、「私の家はひっくり返った感じになっています」と語っていた楠信次さんに再び話を聞くと、未だ自宅の天井にはヒビが入り、雨漏りで壁紙が剥がれている状況だ。いま、最も懸念していることは「まだ落ち着かないこと。テレビ見ていても、震度1とか2という余震があって、まだ地震が収まっていない感じがする。街自体は復興しているような感じはあるが、まだまだです」と苦しそうな表情を見せた。


 被害が最も深刻だった益城町には、道沿いには倒壊したままの家屋の姿がたくさんあった。公費による解体は1〜2年待ちの状況だという。


 同町に住む御手水裕也さんが住宅地を案内してくれた。「この辺で人が住んでいるのは2軒だけ。あとは全部無人で解体待ち」だという。道路の一部が完全に崩落し、土嚢を積んで辛うじて人が歩けるようにしている箇所もある。「道路はまったく手付かずです。あちこち路面が割れていたり、大きな被害も小さな被害も全部そのままの状態」(御手水さん)だ。


 現地ではボランティアの手はまだ足りていない。ボランディア団体の「チーム熊本」のメンバーは「道路がボコボコの状況にも関わらず入札にはどこからも応募がないという話を聞く。解体する業者も足りていない。8ヶ月たって、忘れられないために、風化させないことが大切だと思う」と語る。


 災害と報道の関係は密接不可分だが、時代と共に災害報道のあり方も変わりつつある。


 地震後、被災者の元には様々な情報が寄せられた。中でも特に「SNSの力が強いということがわかった」と楠さんは振り返る。何が不足しているのか、避難所では何が起きているのか、といった情報がTwitterやFacebookなどを通じ、リアルタイムに届いたという。熊本地震の際には、東日本大震災の際に比べTwitterのつぶやきの数が20倍以上に増えていたというデータもある。ただ、ボランティアの配置や、支援物資の配達が円滑に進まなかったことなど、情報と具体的な支援を結びつける点では課題も残った。


 熊本での取材を続けるジャーナリストの堀潤氏は、災害報道についてこのように語る。

 「『本当に被災者のニーズに合った報道ができているだろうか』と常に考えさせられている。被災地の避難所にメディアの人間が入って取材をする。時には照明をつけ、負担を強いることもある。まず、僕たちは『現地の人々の迷惑にならないように、負担を強いないようにしよう』と考えているが、そもそも負担をかけるために中継をやるわけではない」。


 だからこそ、熊本地震の取材では、これまでの災害報道とは異なる手法を試みたという。「被災者の方から"これを伝えて欲しい"ということをSNSなどで募り、報じた。そうするといろいろなことができた」。


 例えば「道路が崩落してしまった、でも復旧が進んでいない。これは村道でも国道でも県道でもなく、私道だから誰も関心を持ってくれない。この費用も自分たちで工面せねばならず、数百万以上の費用を負担しないといけない」といった情報、「粉ミルクはあるんだけど、アレルギーを持っている赤ちゃんに対応した粉ミルクがない」「水道は復帰したんだけど、チョロチョロとしかでない。給水車の支援が必要だ」といった情報など、リアルな情報が数多く寄せられたという。

 それでも「ニュースは死者に群がる」というジレンマがある。堀氏は「今を生きる人たちにはなかなかメディアが行かない。すると被災者の方にとってはフラストレーション、メディア不信に繋がってしまう。避難所一つとっても、報道が集中する避難所と、記者が誰も行かない避難所に分かれてしまう。どうしても被害の大きい地域に報道が集中してしまいがちだ」と指摘する。

 センセーショナルな映像を出せば興味・関心を惹くことができるのは間違いない。だが、その陰で本当に困っている人たちの「小さな声」が届けられないというジレンマに幾度も遭遇したという。


 堀氏は「報道は、『今の被災者を助けたい』という思いの一方で、次の被災者、次の被災地のためにどのような情報・教訓・メッセージを伝えられるのか、ということも胸に留めて臨むべきだと思う」と締めくくった。

(C)AbemaTV

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