22時消灯に“電通の強みは失われたね“ ブラック企業を生んだのは日本社会ではないのか

 28日、東京労働局が「社員に違法な長時間労働をさせていた」として電通と幹部社員1人を書類送検した。この幹部社員は、昨年12月25日に自ら命を絶った新入社員、高橋まつりさん(当時24歳)の上司だった人物だ。これを受け、同日夜、石井直社長らは会見を開き、経緯と今後の対応などについて説明した。


 冒頭、石井社長は会見で「当過去に労働基準監督署から受けた労働基準法違反等の是正勧告を踏まえ、様々な対処施策を講じてまいりましたが、残念ながら、その取り組みの途上において、前途ある社員が亡くなるという悲しい事態が発生いたしました。新入社員の過重労働を阻止できなかったことは慚愧に堪えません。このような事態を招いてしまったことにつきまして、経営を預かる者として、重く、厳粛に受け止めております。改めて、亡くなられた高橋まつりさんのご冥福をお祈りいたしますとともに、ご遺族をはじめ、社会の皆様に心よりお詫び申し上げます」と、深く頭を下げた。


 石井社長は、来年1月に関係する取締役会で幹部や社員の処分が行われるタイミングで、自身も社長を退く意向を明らかにした。


 また、中本祥一副社長が高橋まつりさんの件について、内部調査に加え外部専門家による調査を行ったと説明。2015年10月から12月にかけて業務時間が急増したこと、仕事への取組みや職場での人間関係などが強い心理的ストレスとなっていた可能性をがあるとした。また、「当時、業務経験が浅かったということを考慮すれば、パワハラとの指摘も否定できない、行き過ぎた指導がなされていたことを確認」「新入社員である彼女に対して、内に秘めた心情や不安を思いやる想像力が足りていなかったこと、社として十分なサポートを行えていなかったこと、今は深く反省しております」とした。


 ただ、「調査をおこなった外部の法律事務所からは、一部に行き過ぎた指導や適切とはいえない言動が見受けられたものの、法的に不法行為に該当する行為とは認められないという旨の報告がありました」とも述べている。


 電通は今後、"社員ファースト"を掲げ、労働環境の改革を進めていくとしている。

 今回の会見の焦点は、大きく以下の4つの点が挙げられるだろう。

  •  1.過重労働の是正は
  •  2.パワハラとの指摘も否定できない、行き過ぎた指導の是正は
  •  3.労働環境の改善と長時間労働の撲滅は
  •  4.36協定違反と不適切な勤務登録の有無は

 千葉商科大学専任講師で、労働問題、雇用問題に詳しい常見陽平氏は、会見について「(上記4点を)断定的には認めていないが、かなり認めたに近いニュアンスで語っていた」と話す。また、「誠意を感じたが、電通はコミュニケーションのプロで、対応しているかどうかで言えば、『している』と言えるが、具体的な話がまだまだ足りないと率直に感じた。そしてそれに伴って、企業が変わることの難しさを感じた」とも話した。


 長時間労働を是正するため夜10時には消灯するという具体策についても「結果、仕事は持ち帰りで、サービス残業を誘発してしまうのではないか」と懸念を示し、「そもそも"気合と根性"だけでは変わらない問題で、トップと管理職を交えて、いかに新しい働き方をデザインしていくか、ということが重要になってくる」と指摘した。


 一方で常見氏は、この事件が社会にもたらしたインパクトについて、「過労死事件で社長が辞任して、直属の上司が書類送検になる、という事例は、多くの企業にとても大きなプレッシャーを与えるのではないか。また、急成長した企業やベンチャー企業、忙しいとされるサービス業だったりではなく、日本を代表する広告会社の電通だった、ということも大きなポイントだ。だからこの事件は、各社、各個人が自分事として考えなければならない問題だ」とした。


 例えば、雇用者と被雇用者の間で締結される"労使協定"で、届け出があった場合にのみ労働時間の延長や休日の労働が可能になる、という「36協定」についても、「10年前の調査だが、4割の36協定は違法な状態にあるとされている。極論すれば、雇用者はこの36協定は嫌だ、と突っぱねればいい。しかし会社に言われれば、そんなことはできないのが現実だろう。被雇用者側が弱い現状を打破しなければならない」とした。


 さらに常見氏は「今回の事件の責任はもちろん電通にある」とした上で、「電通も被害者と言えるかもしれない」と指摘。


 「この事件の後、電通は長時間労働の是正として、夜10時以降、クライアントとの電話連絡などができない状態になった。その結果、クライアントはなんと言ったか。"これで電通の強みは完全に失われたね"と言ったそうだ。この社会がブラック企業を生んでいると思う。日本の社会は今までずっと綻んでいた。上場している企業が"利益を5%削ってでも労働環境を良くする"と言って、それが通用しただろうか。今、電通は最悪な状態だが、そうしたことをちゃんと考えていくことで、とても良い企業に変わっていくかもしれない。他の会社や、社会全体がそうなっていけば、日本は変わるかもしれない」と訴えた。

(C)AbemaTV


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