北方領土は還ってくるのか? ロシアの思惑を読み解く

■「領土問題の解決という面ではまったく進展がない」

 安倍総理の地元・山口県と東京の首相官邸で2日間にわたり行われた日ロ首脳会談が幕を閉じた。60以上にわたる経済協力事業を進めることで合意し、首脳会談を終えた安倍総理は、16日午後の会見で次のように述べた。


 「今回北方領土四島において共同経済活動を行うための特別な制度について、交渉を開始することで合意した。この共同経済活動は日ロ両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識のもとに進められるものであり、この特別な制度は日ロ両国の間にのみ創設されるものだ」


 さらに、今回の合意について「平和条約の締結に向け重要な一歩となる」とコメント、問題解決に向け踏み出す会談となったことを強調、四島の元島民の自由往来についても「人道上の理由に立脚し、ありうべき案を迅速に検討することで合意」したと述べた。


 一方のプーチン大統領は「日本人が親戚の墓を訪問する手続きについて簡素化の検討を外務省に指示した」と述べ、「私たちは最大限自由な往来が出来るよう、これまで閉鎖されていた地域にも入れるよう出来る限りの努力を約束した」と、ロシア側も前向きに協力することを明らかにした。

 また、そのためには「まず経済関係を改善しなければならない」した上で、日ロ2国間の経済問題について「為替の変動や不安定な資源価格など客観的な理由だけではない」「日本も加わったロシアに対する制裁の影響も受けた」とし、「残念だが、両国の今年の貿易高は28%減少した」と指摘。「70年間日本はロシアと深く共同活動はしなかった。しかしそれは間違っている。両国が力を合わせれば、互いの経済の競争力は何倍も強くなる」とコメント。その上で「私たちはそこを目指していくべきだと思う」と日ロ関係の今後について語った。


 「日本が期待していた領土問題の解決という面ではまったく進展のない状況だと思う」と話すのは、慶應義塾大学の廣瀬陽子教授。他地域においても領土問題を抱えるロシアは、信頼関係が大事であると常々考えており、「経済協力ができて初めて信頼関係ができる。領土問題を考えるのはその次」という姿勢があるのだという。結果として、「全島民の人道的な今後の自由な往来」を考えるようになった点のみが、唯一評価できる点であると述べた。


 今回の会談、質疑応答の際にロシアのメディアがシリア問題についてプーチン大統領に質問するなど、ロシアと日本との間に領土問題に対す"る温度差"が感じられる結果となったとの見方もある。


 モスクワ支局の駐在経験をもつテレビ朝日外報部デスクの陣中文氏は「領土問題はロシアでは今はもうほとんど報じられていない状況のため、仕方のないことなのかなと思う」との見方を示す。その上で、北方四島を所有することによるロシア側のメリットについて「北方四島はロシアが太平洋に出る際の通り道。安全保障上、非常に重要」とした。


■北方領土は還ってくるのか?


 これまでロシアは、中国やノルウェー、エストニアやラトビアといった国々との間でも国境問題を抱えてきた。廣瀬教授は、「中国とノルウェーは50:50、つまり、双方が主張する領土の半々で決着をつけている」「エストニアとラトビアはロシアが主張する領土をほとんど譲歩して認め、引き下がって解決した」と話す。


 廣瀬教授は、これらの国々と日本の共通点は「歴史認識の問題だと思う」と指摘する。ロシアは「北方領土も第二次世界大戦の結果であって、その後の東アジアの平和というのは中国とロシアが守ってきた、という認識がある」との考えを示し、「今回の交渉に際しても、第二次世界大戦の結果を認めるということを日本に対して主張していたと思う」と推測。「自分たちの血と引き換えにとった領土は簡単には渡せないというのが歴代の指導者の立場であったと思う」とした。

 陣氏はノルウェーを訪れた際に「当時はビザが緩和されたり交流が深まっていたと感じた」と振り返り、そこから次第に信頼関係ができて、領土問題が解決したと指摘する。「今はお互いが信頼できない状態だから領土問題について話すことすらできない。日本人とロシア人が交流を深めることによって、いつか問題が解決されるのではないか。今のままではこのままずっと平行線で何も変わらない」とした。


 ロシアは北方領土を日本に引き渡すつもりがあるのだろうか。


 廣瀬教授は「(引き渡すつもりは)ないと思う」とはっきり言い切る。「これまで歯舞・色丹は可能性がある雰囲気であったが、ここにきて1956年の条約についてすらも決して返還ということはない、しかも仮に日本に引き渡すとしても主権はロシアのものだと最近プーチン氏も言い切っている」とその理由を説明した。


 ロシアとの平和条約締結のため一歩を踏み出した日本。北方領土問題の早期の解決に向けて、これからの対ロ外交に期待がかかる。

(C)AbemaTV

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