バカッター、スカスカおせち…「ネットで話題になった事件」10年を振り返る

 12月7日、ライブハウスの「阿佐ヶ谷ロフトA」にて、投資家・ブロガーの山本一郎さんと一緒に私(編集者・中川淳一郎)は今年のインターネットで話題となった様々な事件や話題を紹介するイベントをやりました。2010年から毎年最低1回やっているこのイベントですが、この10年ほどの傾向を一旦振り返ってみましょう。

 2000年第中盤のネットの主役は、なんといってもYouTubeやブログを手にし始めた一般人でした。この頃の空気は「ネット好きなギークがテクノロジーについてや書評を書いていた」といったものがあったように思えます。あとはヤフー知恵袋やはてな匿名ダイアリーで人々の本音が赤裸々につづられていました。


 そんな時代を経て2007~2008年ぐらいにかけ、若槻千夏や辻希美、上地雄輔ら芸能人がブログを使い初め、一気にネットの主役が芸能人に移りテレビで彼らを見ていたファンもネットに移り、積極的にブログにコメントを書くようになっていきます。


 そうした状況に嫌気がさしたのか、ネット好きな方々は2007年あたりからツイッターに主戦場を移し始めます。そこで、まったりとしたネット上のやり取りを楽しんでいた時代が2年ほど続き、2009年の勝間和代・広瀬香美のツイッター参戦により、一般層にもツイッターが普及。さらには恐る恐るネットを活用していた企業も、積極的にネットに参戦します。


 何しろ、マスメディアの広告が効かない! といった声が定説になる中、ネットで新たな取り組みをした企業は勝手にメディアがこぞって取り上げてくれる。これが、ツイッターの「軟式ID(ゆるいことをツイートするID)」の乱発と、トンチンカンUstream使用百花繚乱時代に繋がっていくわけでした。しかし、ネットで勝てるのはごく一部、はて、それからネットの傾向はどうなっていったか――。そうした渦中、我々はイベントを開始したのでした。


■スカスカおせち騒動から東日本大震災へ

 2010年、ツイッターが爆発的に普及したことにより、誰もがネットで発信する素地は完成したといえましょう。そこで来たのが2011年です。クーポン共同購入サービス・グルーポンで購入したバードカフェの「スカスカおせち」が突然年初のネットの話題をかっさらいましたが、思えばこの頃は「診断メーカー」やmixiアプリなども含め、様々な新サービスを多くの人が試していた時代でしたね。


 こうして、皆がネットと慣れ親しむようになり、普通に交流をするようになったところでやってきたのが東日本大震災。デマは多数ツイッター等に書き込まれ、さらには放射能や原発をめぐり争いはあったものの、人々は何か自分にできることはないか? とばかりにネットを活用して情報発信・共有をしていました。


 こうした動乱の時代を経て2012年は芸能人大活躍の時代が再び到来。広告費用をマスメディアからネットに多く移すこととなった企業が、芸能人ブログに多額のカネを渡すようになりました。ここで登場したのが「ペニオクステマ騒動」に代表される、「ステルスマーケティング」の時代です。本当は広告であるにもかかわらず、通常のブログ記事であるかのように見せる手法が横行し、何人もの芸能人が活動自粛に追い込まれる結果に。「ネット流行語大賞」を「ステマ」が獲得したように、芸能人のネット上の影響力を企業が活用した形となったのでした。再びネットは芸能人が大手を振って歩く時代になっていました。


 そしてこの頃は「アラブの春」に代表されるように、海外ではデモにネットが積極的に活用されるようになります。日本でも反原発デモや、嫌韓デモ、そしてカウンター活動の動員にネットが活用されてきました。2011年のチュニジアのデモ以降の「動員の革命」(by津田大介氏)が達成され、翌2013年、再びネットの主役は一般人に戻りつつありました。前年の芸能人大量粛清も影響したかもしれません。


■そして伝説の「バカッター」「バイトテロ」騒動へ…

 かくして2000年代中盤以来久々に2013年は一般人がネットの主役に躍り出る素地が出たか――。確かに主役に踊り出ましたが、悪い意味での主役です。コンビニのアイスケースにオーナーの息子が入る画像がツイッターで紹介されたことを皮切りに、食洗器に入る人、精米機に入る人、ハンバーガーのバンズの上に寝転ぶ人、売り物のソーセージをくわえる人など、続々と愚行を晒す若者が続出したのです。客の中には回転寿司の醤油さしの先端を鼻の穴に突っ込む者もいました。今考えると彼らが何を考えていたのかはわかりませんが、2016年にも尻にホースをさす消防士が登場したため、愚行を見せたいという欲求はいつになっても消えないのかもしれません。


 運営会社や彼らが通う学校にはクレームが殺到し、中には退学に追い込まれた者もいれば、FC契約を切られたコンビニ、倒産したソバ屋なども登場しこの「バカッター」(バカ+ツイッター)騒動は「バイトテロ」とも呼ばれるようになったのです。


 この頃からテレビはネタ元をネットに求める傾向がより強まります。下請け制作会社の若者にはもはや雑誌を読む余裕もなければ外に取材をする余裕もなく、ひたすらネットの流行りネタを拾う。そして事故の画像をツイッターにアップする人がいれば、「●●テレビ、□□という番組の山田と申します。××様の撮影した画像を番組で使わせてください。よろしければフォローいただいたうえでDMにてやり取りをさせていただけませんでしょうか」というスタイルの取材手法が定着するようになったのです。当然バカッター騒動は連日のようにテレビを揺るがし、専門家による「仲間内しか見られていないと思っているようだが、ネットに書けばそれは世界に繋がっていることを意味する」という解説が加えられることとなるのでした。


■バカッターからそれなりの立場ある人の時代へ…

 2013年がまさに「一般人の乱」「一般人の逆襲」という時代だったとすれば、2014年のネットを騒がせたのは、有名人とは言わぬまでもそれなりの立場ある方々や、容疑者らがネットを騒がせた年でした。前年は「ネットの愚行」→「マスメディアへの波及」という流れでしたが、2014年は「マスメディアの報道」→「ネットへの波及」という流れになっていきました。


 ネットでは毎月のように話題の人物がカレンダー形式で登場しました。


  •  1月:阿部利樹(アクリフーズの冷凍食品に農薬のマラチオンを混入)
  •  2月:佐村河内守(ゴーストライター騒動)
  •  3月:竹井聖寿(柏市連続通り魔殺傷事件 ※ヤフーチャット万歳!と叫んだとされる)
  •  4月:小保方晴子(STAP細胞騒動)
  •  5月:片山祐輔(PC遠隔操作事件)
  •  6月:ASKA(覚せい剤取締法違反)
  •  7月:野々村竜太郎(号泣)
  •  8月:山本景(女子中学生とLINEでトラブルを起こした大阪府議)
  •  9月:富田尚弥(水泳選手。アジア大会で韓国メディアのカメラを盗んだ疑惑)
  •  10月:小渕優子(政務活動費の問題発生。パソコンのHDをドリルで破壊。「ドリル優子」や「ドリル姫」のあだ名も)
  •  11月:筧千佐子(交際相手・元夫が次々と死亡)
  •  12月:田中勝彦(危険ドラッグを吸い、隣人女性を刺す。通称「しぇしぇしぇ男」)


 このように「毎月人材が豊富過ぎ……」といった声がネットに溢れる1年間でした。そして翌2015年は邦人がイスラム国に拘束されたことに伴う「ISISクソコラグランプリ」を通じてイスラム国と日本人がツイッターでケンカをすること初頭に目立ちました。あとは、川崎市の中学生殺害事件とそれに伴う少年犯罪への議論も活性化。夏になると、佐野研二郎氏の東京五輪エンブレムに関する「パクリ疑惑」などが大盛り上がりに。安保法制に伴う反対デモやSEALDsの登場などもネットでおおいに話題となりました。


■そして2016年はどうだった?

 今年を振り返ると、週刊文春のスクープが前半のネットを引っ張っていました。甘利明大臣(当時)の政治献金問題、ベッキー不倫、清原覚せい剤逮捕、ゲス不倫宮崎謙介議員(当時)らがネットの書き込み活性化に寄与。その後、ASKAが謎のブログを開始し、いつしか2年ぶり2回目の逮捕をされるなどもありました。SMAP解散も大きな波紋を呼び、最近ではSMAPファンがツイッターで解散反対の署名を呼び掛けたり、新聞の個人広告を一斉に出す動きを起こしたりしています。「舌禍」ともいえる長谷川豊氏の「人工透析患者は殺せ」発言(後に謝罪・撤回)もありました。一般人でも「ブリーフ裁判官」の鮮烈デビューや、流行語大賞を獲得するに至る「保育園落ちた日本死ね」なども今年のできごとです。


 一緒にイベントをやった山本一郎氏は、「今年前半の著名人が引っ張る展開はすごかったが、ちょくちょく登場する一般人による破壊力満点の発言も素晴らしかった」と評していました。その中でも特に山本氏が気に入ったものは、〈「いい年こいて、仕事しろよハゲ」 auショップ店員、公式アカで誤爆して「謝罪」と「削除のお願い」騒ぎ〉です。


 さて、ここまで多くの人が使うようになったインターネット。ザッと歴史を振り返ってきましたが、来年は果たしてどんな年になるのでしょうか。引き続き連日の騒動をメモり、また来年皆様に報告したいと思います。


文/中川淳一郎(編集者)

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