「大臣を辞めたから言えること」石破茂氏がトランプ政権と日米同盟を本音で語る

21日、自民党の石破茂・衆議院議員が日本外国特派員協会で記者会見を開き、トランプ次期大統領政権下における日米同盟について、自らの意見を述べた。

■「共和党関係者が誰一人トランプを知らなかった」

石破氏:そろそろ2016年も終わりでありまして、暮れになりますと、いろんな新聞、いろんな雑誌、いろんなテレビで「来年はどうなる」という特集があります。だいたい当たらない。(会場笑)


私は思うのですが、1年経って「なぜ私の予測が当たらなかったのか」という解説をしてほしいのですが、そういうことをする人はいません。去年の今頃、ドナルド・トランプ氏が共和党の候補になると思った人もほとんどいなかったし、大統領になると予測した人もほとんど居なかったはずです。イギリスがEUを離脱すると思った人もほとんどいなかった。トランプ氏が大統領になるということが決まれば、円はものすごく高くなって、株はものすごく安くなるはずだったが、全然そうなっていない。


このように世界が予測不能になってきた理由は何だろうか。それは人口がものすごく増えたということと、情報のスピードがもものすごく速くなった、この2つが原因だと思っています。


ですから来年も世界は全く予測不能であるということであり、日本は外国からいろんな圧力を受けて政策を変えるのではなく、自ら経済政策であれ、安全保障政策であれ、あるいは金融政策であれ、自ら変えていかねばならない。そのような年になると思っています。


この5月に、私は合衆国を閣僚として訪問し、民主党関係の皆様、あるいは共和党関係の皆様とそれぞれ2時間くらい夕食を共にいたしました。民主党関係のかなり地位の高い方々ですが、トランプの悪口を一生懸命言うがヒラリーを素晴らしいと言った人もいないことが極めて印象的でした。共和党の方々と夕食を共にしたときには、誰一人トランプを知らなかったことが印象的なことでした。


■「今の日米同盟の形は将来的に変わっていかなければならない」

石破氏:大統領選挙の一か月くらい前のことでありますが、この度トランプ次期大統領の安全保障担当補佐官に就任するマイケル・フリン氏と夕食を共にしながら3時間くらいディスカッションする機会をいただきました。実質的にはほぼ一対一の対談の形を取りました。フリン氏は民主党員であります。そして合衆国陸軍の中で極めて信望の厚い有能な将軍(退役陸軍中将)であります。


フリン氏は日米同盟の重要性は極めてよく正確に認識をしておりました。しかし、そのことと日米同盟が今のままの形でずっと続いていいというのは別だ考え方でも一致をしました。多くのアメリカの安全保障関係の枢要な地位にある方々とディスカッションしていますが、非常に充実的な時間であって、最も印象的な中の一つでした。


私はその場において、日米同盟は合衆国が日本を防衛する義務を負う、日本国は合衆国を防衛する義務を負わない代わりに基地を提供する義務を負うという、今の日米同盟の形は将来的に変わっていかなければならないという、年来の持論を主張しました。


これは日本だけの特有の議論で外国の方に理解できないことだろうと思いますが、私は集団的自衛権は日本国憲法9条とは何の関連もないという立場を取っております。日本国が集団的自衛権を行使できないのは、それは政策としてできないのであって、憲法とは何の関係もないと思っております。集団的自衛権の行使、それは安全保障基本法という法律に定められるべきもので、憲法が集団的自衛権の行使を制約しているとは思っておりません。この点が私と安倍総理の考え方の最も異なるところであります。

■「友人に"トランプ氏には気をつけろよ"と言われた」

石破氏:トランプ氏が当選して、どんな演説を最初にするかと非常に関心を持って見ておりました。「同盟国からもっと金を取るぞ」と演説をするのか、「イスラム教徒の入国は制限する」と言うのだろうか。あるいは「メキシコとの間に壁を作るぞ」というのだろうかと思っていましたが、ハリソン・フォードが主演した『エアフォース・ワン』という私が大好きな映画、あの主題曲とともに登場したトランプ次期大統領は、極めて穏健な、抑制の効いた演説をしたと思っています。


全て後から考えてみれば、ということなのですが、トランプ氏が当選をしたのはグローバリズムの進展によって、合衆国における貧しい人々が増えたことが一番の原因だと理解しております。グローバリズムの最も進んだアメリカとイギリスでこういうことが起こっているのは極めて注目に値することだと思います。グローバリズムの進展は国と国との格差を縮める効果はありますが、国の中においては所得の格差の拡大をもたらすことが多いです。つまり、白人のエリートではない男性のみならず、女性であれ、あるいは少数民族の移民であれ、格差の拡大に不満を持つ層がトランプ氏を支持したということでございましょう。


選挙の直前、政府のある高官が私のところをお訪ねになって、「ヒラリーになってほしいと個人的には考えているがが、トランプが当選するとしたら、多分世論調査に自分の考えを正確に伝えない人が多い場合にトランプが当選することがありうるだろう」と言っていました。すなわち世論調査の質問が来たときに「私はトランプ支持です」と言うことは女性を非常に蔑視しているのではないかとか、民族差別主義者ではないかとか、そのように思われるのではないかと考えて、「ヒラリー」と答える人が多かった。でも実際はその中でトランプに投票した人がかなり多かったのではないかと思われます。

私が子どもの頃、合衆国大統領はJ・F・ケネディ大統領でありました。それから多くの大統領が登場しましたが、軍人の経験を持たず、政治家の経験を持たない大統領ということはかなり大きな意味を持っていると思います。不動産業で財産を成した方ですから、そのやり方は不動産業のビジネスにかなり近いやり方を行うのかもしれない。


私の友人の、ある日本の有力な財界人が、今から十数年前、ホノルルにあるトランプ・タワーのセールスのためにトランプが日本に来た時のことを話してくれました。トランプ氏はスクリーンに色んな映像を映し「トランプ・タワーの部屋を買うと、こんなに綺麗な景色が見えるよ」と一生懸命セールスをしたそうです。私の尊敬するその財界人は、やはりホノルルに部屋を持っておりまして、彼は「あのトランプタワーの位置からこんな景色が見えるはずがない」と思ったそうであります。(会場笑)


「トランプ氏には気をつけろよ」と彼は私に言いました。


■トランプ氏との交渉、「心して臨まなければならない」

石破氏:トランプタワーの最上階に我が安倍総理を招待し非常に友好的な雰囲気で時間が経過したと報じられております。そのことは誠に素晴らしいことであり、安倍氏とトランプ氏の間で信頼関係ができ、日米同盟がさらに強固になることを望んでいます。


しかしこれからトランプ氏との間で行われるであろう交渉は非常にハードなものであり、我々は心して臨まなければならないと思います。アメリカから言われてこうするということではなく、日本から色々な提案をする、そして日本の外交安全保障上の改革せねばならないところは早急に改革する。そうでなければ厳しい交渉に臨むことはあってはならないと思います。


かつて合衆国は第一世界大戦後に自ら提唱した国際連盟に参加することをいたしませんでした。その結果として国際連盟は力を持たず、第二次世界大戦を避けることはできませんでした。第二次世界大戦後、国際連合をつくるにあたり、合衆国は他の国がいかに決定をしようと、合衆国が反対したら何も決まらないという仕組みを作るよう要求しました。その「拒否権」は、ソビエト(いまのロシア)、イギリス、フランス、中華民国(いまの中国)が行使をできることになっております。「United Nations」とはそういう仕組みであります。


集団安全保障としての国連は今までもワークしたことはないし、これからも極めて難しいでしょう。そうであるがゆえに、わざわざ集団的自衛権というものが国連憲章に定められている。国際的な常識であります。


もし民進党をはじめとする野党の皆様方が、集団的自衛権を「アメリカと一緒に世界中で戦争をする悪い権利なのだ」と本当に思っておられるならば、民進党が政権を取った時、国連総会において日本国は「国連憲章から集団的自衛権条項を削除せよ」と発言をしなければ理屈は通りません。整合いたしません。

■天皇陛下の退位問題「全身全霊を挙げて取り組んで答えを出す必要がある」

石破氏:日本が抱えておりますもう一つ大きな問題は、天皇陛下の生前のご退位の問題でございます。


日本国憲法の一番トップの部分に天皇陛下についての条文が載っているのであり、日本国憲法、日本国、日本人にとって最も重要な部分であると私は思っております。"天皇の地位は国民の総意に基づく"、国民全ての気持ちが日本国天皇の地位を定めているのだ、と書いてあります。もともと原文の英語ではなんて書いてあったんですかね…?そして、憲法には天皇の位は世襲、すなわち子どもたちに引き継がれていくものだと書いてあるだけで、生前に陛下が退位をされることを日本国憲法は禁じておりません。


しかし天皇ならびに皇室に関するいろいろな細かい規定は「皇室典範」という別の法律に記載されております。そこには天皇が亡くなった後にその子どもが後を継ぐと書いてあるので、亡くならない限り次の天皇が即位をするということは予定されておりません。


少なくとも陛下が生前にご退位することを認めるならば、皇室典範の改正か、もしくは特別な法律の制定が必要であります。そうしますと法律ですので、衆議院において過半数の賛成、参議院において過半数の賛成があれば改正ができます。しかし憲法には"天皇の地位は国民の総意に基づく"と書いてあるのであって、これをどうやって矛盾なく解決するか、実は大きな問題だと思っております。この問題は我々国会議員が解決をしなければなりません。"天皇様の問題で畏れ多いことであるので距離をおきたい"なぞという姿勢は許されるものではありません。


私は大臣を務めておりますときに、今上陛下の近くで仕事をさせていただく機会、あるいは近くでお話をさせていただく機会に何度も恵まれました。日本国でたった一人、自分の事を一切考えず、国民のために色々なお働きをなさっておられる、そして祈っておられるのが陛下であります。そして世界190数か国ありますが、陛下にとっては大きな国であれ小さな国であれ、それは全て同じ国、との扱いをなさっておられます。


これは日本国のまさしく本質そのものが天皇制なのであって、これが続いていくように、我々国会議員は綺麗事ではなく全身全霊を挙げて、この問題に取り組んで答えを出す必要があると思っております。

■日ロ交渉「そんなに簡単でははない」

石破氏:政治家なんてあまり信頼されないロシアでプーチン大統領が高い支持率を得ているのは、クリミアであれウクライナであれ、領土に非常に強い姿勢を持ち、成果を上げている大統領であるということが強い支持につながっているのだと考えています。


ソ連の時代もロシアの時代も、オホーツク海に潜水艦を潜らせ、いつでも核ミサイルが発射できる体制を整えておくことは、ソ連、ロシアにとって死活的に重要であり、領土問題はその視点抜きして語ってはならないものだと思っております。


中国が南シナ海を非常に重視するのも同じ理由によるものと思います。日ロの交渉が順調に、成功裏に終わることを願いますが、事はそんなに簡単でははないということを我々日本人は強く認識する必要があるでしょう。


■日本経済は「頭痛薬を飲み、栄養剤を飲んでいる状態」

石破氏:いま日銀が行っております大胆な金融緩和は、頭が痛いので頭痛薬を飲もうということによく似ていると思います。頭の痛いのは収まりますが、頭の痛い原因が取り除かれたわけではありません。機動的な財政出動というのは、ちょっと元気になったので、栄養剤を飲むのに似ているのではないかと思います。まあ、ユンケル飲んでるようなもんですね。その2つとも非常に効き目があり、日本の経済はかつての絶望的な状況から気分的には脱しつつあると思います。


金の流れをよく分析しなければなりませんが、家計から政府に、あるいは家計から企業にお金が移転をしているとするならば、経済が良くなるという道理はございません。景気が良くなったからインフレになることはよくありますが、インフレになったから景気が良くなるわけではありません。


頭痛薬を飲み、栄養剤を飲んで、マインドはチェンジしました。まさしくこれから先、残った短い時間で本当に潜在成長力を上げることができるかが問われていると思います。そのために今の金融政策をどこで変えていくかということについては、政府と日銀の間で真剣な議論が行われることでありましょう。その多くはグローバルな経済ではなくローカル経済の部分が占めているのであり、その生産性向上は一にかかって国内的な問題なのであります。


私は日本にとって残った時間はそんなに多くはないと強く認識をしております。そして真面目に考えれば、そんなに政策の選択肢の幅は広くありません。


日本国民は、政治が真実を誠意を持って語れば理解してくれる国民だと思います。そこから逃げたくないと思って日々過ごしているのだと思います。

■大臣を辞めたから言える事

記者:日米同盟の"相互性"について今後何が予想されるか。南スーダンで"駆けつけ警護が実際に発動され、自衛官が"殺し、殺される"とき、日本政府としてどう対応するか。


石破氏:こういうことにお答えできるのが大臣を辞めた一番のメリットかもしれないなと思います。閣僚であれば勝手なことを言って政府にご迷惑をかけてはならないですから。


ご存知かもしれませんが、1955年、敗戦から10年経った時に、ミズーリ号で1945年に降伏調印をした重光葵が鳩山一郎内閣の外務大臣になったのですね、そしてアメリカで当時の国務長官ダレスとの間で非常に厳しいやりとりをしたということが記録に残っております。


そこにおいて重光外務大臣は「日本は集団的自衛権を行使して、グアムまで合衆国を守るのである。よって日本国に駐留している合衆国軍隊は全て撤退すべし」という主張をしているのですね。ダレス氏は「いつから日本国憲法はそのような解釈になったのだ、いつから自衛隊はそのような実力を持つに至ったのだ。そんな法律解釈も力ないだろう」ということで、重光の提案は実現することはありませんでした。いまから61年前の話です。


ダレスはその時にある手紙を書き残しています。それが公開されているのが合衆国の面白いところですが、なんと書いてあるかというと「日本がとうとうフィリピンのようなことを言い始めた、困ったことだ」と。つまり、アメリカとフィリピンの安全保障条約を念頭に置いての発言だと思います。彼はこのようにつづけます。「合衆国にとっての利益は、日本国に合衆国を防衛させることではない。日本にある基地を自由に使う権利を持っていることこそが合衆国の利益なのだ」と。


それが61年も前のことであって、今も同じ日米関係ですか、今でも同じ自衛隊ですか、今でも同じ安全保障環境ですか、ということを我々はもう一度問わねばならないのだと思います。


どういう場合に集団的自衛権を行使するかは、憲法上の制約ではなく我が国の政策上の選択であります。


例えばベトナム戦争に参戦した時にアメリカは「集団的自衛権を使った」と説明しました。しかし、あのような集団的自衛権の使い方は正しくないと私は思います。ソビエトがチェコ・スロバキアに侵攻したのも「集団的自衛権だ」と説明しましたが、それも誤った行使だと思っております。集団的自衛権の行使は極めて抑制的でなければなりませんが、私は今回の安全保障法制で決められたものもより広いものが認められて然るべきだと思います。同時に重要なのは、地位協定は安全保障条約と一体のものですので、安全保障条約が改定されないで地位協定が改定されることは極めて非現実的なものだと思います。


日本国が合衆国の基地を受け入れるということが合衆国に多大なメリットがあるということを、例によってお示しすることができると思います。


合衆国海軍が日本に備蓄しております燃料は、海上自衛隊が2年活動できるだけの量です。原子力動力艦はアメリカでも極めて少ないのであって、治安の良い日本において燃料を備蓄しておくことは、合衆国の国際戦略にとっても必要不可欠なものであります。また、合衆国の航空母艦をはじめとする大きな艦船を修理できる能力を持っているのは、合衆国以外では横須賀の設備が最も能力の高いものであります。


そのように日本が基地を提供しているということが合衆国に大きな役割を果たしているのであり、トランプ次期大統領もそれは即座に理解されるものだと思います。


しかし問題は、日本人が日本の安全保障の法律、あるいは装備、あるいは運用、あるいは人員というものについて、ほとんど理解もなければ関心もないのは、「いざとなったら合衆国がなんとかしてくれるのではないか」という期待があるからだと思います。いざとなったら合衆国がいつでもなんでもしてくれるかっていうと、それは違う場合もあるのではないでしょうか。自分の国の能力を知らない、正確に認識しないことは、かえって不合理な行動に出る危険性が高いと思っています。太平洋戦争は日本の能力を見誤り、そしてまた、合衆国の能力を侮ったというところに大きな原因があると思っています。


日米が本来の意味での双務性を確保するということは、日本国にとって必要なことであります。我が国は核兵器も大陸間弾道弾も持つつもりはありませんが、日米同盟というものは、日本国にとって必要不可欠なものであるがゆえに、相互の信頼性、双務性を高めることが必要だというのが私の考え方であります。


南スーダンにおくるミッションは、駆けつけ警護は必要なことだと思います。その地域に展開する日本人の生命・身体が危難に遭遇した時に、日本の自衛隊が駆けつけて警護しなければ、一体どの国が駆けつけて警護するのですか。国家として国民の生命・身体を守るのは当然のことであり、それが日本人だけに限られるべきだという考え方もすべきではないと私は思います。


自衛隊をイラクに出したときに私は防衛庁長官でありましたが、その時にミッションは非常に危険なものであるがゆえに、能力、装備、そして運用は考えられる限りの高度なものを付与して派遣をいたしました。そして結果として1人も傷つくことなく、1人も傷つけることはありませんでした。


世の中に絶対ということはない、絶対ということで物事を考えて計画を立案すると、不幸な結果を招きかねない。そのようなことは起こらないと信じますし、起こさないということが日本国にとって求められることですが、それでもなお起こったとき時に、なぜ起こったのか、日本国として、あるいは自衛隊として本当にこれ以上のことはできなかった、ということをきちんとご説明するとともに、国民に対して理解と納得を求める努力は必要なことであります。そういう努力を必要であります。そういう努力をしておくことでそういう自体は回避できるだと思っておりまして、ありとあらゆる自体を我々は目を背けることなく対応を考えなければなりません。


南スーダンにおいてそういうようなミッションを実際に行うかどうかはこれから政府が決定することであり、一議員である私が発言することではありませんが、どのような場合にも、自衛官の生命・身体を最も安全な状況で守り、なおかつその状況の下でミッションを完遂する、という困難なこれから任務に我々は挑んでいく可能性が高いのだと思っております。能力を最大限高めることでリスクを相対的に低下するという管見に立っていると思います。


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