レディー・ガガ、新作は大きな変革を迎えた問題作

 レディー・ガガのニューアルバム『ジョアン』がリリースされて約1ヶ月が経過した。ここ数週間、大統領戦後に真っ先に「反トランプ」を発した急先鋒としてクローズアップされ、アルバムが脇に追いやられた感はあるが、この数年音楽シーンを席巻して来たポップスターが大きな変革を迎えた問題作である。

 『ジョアン』というアルバム・タイトルは亡くなった叔母であり自らのミドル・ネームを冠したもの。リードトラックとなった「パーフェクト・イリュージョン」こそサウンド的には”らしさ”全開といえるが、歌っていることは「完璧に彩られた幻想」=過去との決別ともとれる歌詞の内容だ。


 さらにアルバム・タイトルとなった「ジョアン」や「ミリオン・リーズンズ」に至っては朗々と歌うフォーク調、その他にも「グリージョ・ガールズ」のようなカントリー風の曲など、欲言えば多彩、悪く言えば取っちらかっている。作品を聴いた一部のファンから「思っていたものと違う」という失望の声が聞かれたのも理解できるが、これが紛れもなく現在のレディー・ガガなのである。


 「若い時のような音楽の再体験がしたかった。皆にどう思われるかを心配するよりも、とにかくこの作品を作るだけだったの」という言葉を聞くと何故このような作品になったことも頷ける。


 リリース前に彼女は長い休暇をとっている。先日エッセイを寄稿したハーパース・バザール誌のインタビューでも「体と心を酷使していた無限の仕事の列車から降りることができ、静寂とゆったりとした自分の場所を得ることが出来た」と、余り記憶も無いと回想する綺羅びやかな世界よりも「自分の明確な視点を持っている。私は真実のために戦う者になりたい、もう注目も名声も名誉も必要ない」と発言している。


 この作品には現在の彼女が人生に求めているものを垣間見ることができる「名声は最高のドラッグ。その一方で、あなたが誰なのか、何に気をとられているのかを理解すると、より多くの無駄なものが無くなる。大事なものは素晴らしい家族がいること。自分の大好きな人のために働き、自分が作りたい音楽を作って世界に良いメッセージを送ること」。


 2008年のデビューから激流の日々から、一度降りることを選択したレディー・ガガ。ファッション、言動、音楽とヴィジュアルと凄まじい勢いで世界気に拡散されていったあのスピード感から、いきなりのスローダウン宣言の向こう側には変わらず強い意志を持って前に進む姿がある。


 「第2章」「自分らしさ」「人間宣言」・・・色々な言われ方をするがこれもまた変わり続けて来たレディー・ガガの新たなる「変化」なのである。

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