「ハンデだと思っていたものが全部武器になっていった」父親そしてラッパーとして生きるZORNが語った最新作『生活日和』

昭和レコード所属。般若SHINGO★西成に続く、第三の男・ZORNから届いたニューアルバムは、前作『The Downtown』に収録され、MVの再生回数が140万回目前というヒットを飛ばした「My Life」で見せた、結婚し家庭を持った現在の環境を包み隠さず歌ったその姿からさらに踏み込んだ1枚。普段仕事をしながら、父親そしてラッパーとして、精一杯日々を生きる中から生まれたトピックスは派手さがない分、シンプルでいてとても力強い。


ーー今日も仕事が終わってからですか? 

ZORN:仕事終わりです。 

ーー今も週6でやられているんですか? 

ZORN:そうですね。  

ーー昭和ツアーも今まさに行われていますが、仕事と上手く兼ね合いはつけられるんですね。

ZORN:まあ、ライブなんで休ませてくださいって言って。  

ーー職場は理解してくれているんですね。 

ZORN:社長がおじさんで、父親と弟と4人でやってるんで。 

ーー家族だけでやってるんですね。じゃあ割と自由が利く感じで。 

ZORN:そうですね、ある程度。  

ーーただ休んでるとはいえ、ツアーやって働いて父親業してって。寝てる暇なんてないんじゃないですか? 

ZORN:ありますあります(笑)。寝る間も惜しんでみたいなことは一切ないです。

ーーそうなんですね。ちなみにリリック書いたりするのは、いつも子供を寝かしつけてから始める感じですか? 

ZORN:そうでもないですよ。リリックとか仕事中に頭で書いたりするんで。

ーー普通に生活しながらって感じですね。今回はLIFE”をテーマにしたコンセプトアルバムですが、それは前作に収録された『My Life』が取っ掛かりになったと思うんですがどうですか? 

ZORN:その通りですね。  

ーー『My Life』を構成していたピースを分けて、それぞれのトピックを掘り下げていくように作られている今作は、曲によっていろんな面を見せてきたこれまでのZORNさんの作品とは違う作り方かと思うんですが、こういった絞り込んだテーマにしたのはレーベル側だったり、誰かの意見などがあったからですか? 


ZORN:『My Life』があって、そこで僕なりにいろいろ発見があって、一人で思い立って一人で始めてるっていう感じですね。あの曲で僕は初めてラッパーとして僕になれたような感覚をつかんだので、それを突き詰めていきたいっていうのが最初にあって。  

ーー“ラッパーとして僕になれたような感覚”っていうのは、具体的にどういった感覚か聞かせてもらえますか?  

ZORN:全く飾らないでいい。それが逆にかっこいいものだという風に自分の価値観が変わっていったっていうのが大きいですね。それまで出してこなかった等身大でいるっていうことを出したんですよ。普通に現場で仕事してたりとか、父親とかお袋とかもMVには出てるんですけど、そういう部分を出してしまったことによって、ハンデだと思っていたものが全部武器になっていったっていうか。

ーー今作はアー写からその辺りが全開ですもんね。 

ZORN:はははは(笑)。そうですね。 

ーー昭和から出した1枚目は般若さんが全面的にディレクションに入ってそうですが、今回はどうだったんですか? 

ZORN:ディレクションは全くなかったですね。 

ーーレーベル側からはどうですか?  

ZORN:全然、何も言われずに100%好きなようにやらせてもらってますね

ーー今回はテーマ的にフィーチャリングが少なくなるのは当然だと思うんですが、逆にトラックメイカーは幅広いと感じたんですが、そこは意図しましたか? 

ZORN:自分が好きな人に声をかけただけですね。相性とかも考えたりして。EVISBEATSさんとは面識がなくて、レーベルからコンタクト取ってもらって、やったことがあるOMSBとかYakkleとか、OKAWARIさんとかは個人的にやりとりして作っていった感じです。  

ーー制作を進める段階で、どの曲が軸になったとかってありますか? 

ZORN:一番最初にできたのは「スイミー」って曲なんですけど、軸というよりはぼんやり全体像があって、それに雰囲気とか全体のフィーリングを合わせていったという感じですかね。  

ーー全体的にメロウなトラックに統一されていますよね。  

ZORN:コンセプトの等身大であることと普遍性いつまでたっても褪せないようなものを作ろうっていう意識が凄いあったんで、トラックも必然的に今の流行を追うっていうのは念頭になく、10年後とかに聴いてもいいであろうトラックをチョイスしていったら、自然と派手さとかじゃなくて落ち着いた感じになりましたね。 

ーー普段の生活の中で鳴ってるBGMに近いというか、そこへ寄っていってる感じがしました。その中でも一番最後のEVISBEATSが手掛けた『Letter』、この曲がまぎれもなく今作のハイライトですよね。自分にも娘がいるんですがそれもあって凄い共感できました。 

ZORN:そう言ってもらえるように作ったんで嬉しいです。  

ーー最初から娘たちに向ける曲をアルバムに入れようと思っていたんですか?

ZORN:最初はぼんやりでしたね。ただ『Letter』は前作で言う『My Life』みたいな、アルバムの中でガンっていうネタだと思ってるですけど。

ーーそう思います。  

ZORN:そういうのを作ろうって思った時に、何が言えるのかなって。

ーーさっき言われてた自分がハンデだと思っていたものこそ最大の武器だと。

ZORN:そうですね。踏み込まざるを得ないトピックを持ち出す持ち出さないと本当のいい曲にならないっていうのはわかってるんで。それに『Letter』で僕が言ってることは、僕にしか言えないことだと思ってるし、それを言ってるラッパーなんて聴いたことないですし。っていうところで、純粋にずっと残るいい曲を作ろうって思ったら、ああいうトピックになりましたね。  

ーーちなみに、EVISBEATSさんとの作業はどのように進めて行ったんですか? 

ZORN:最初はストックのトラックをもらって、それも良かったんですけど。EVISBEATSさんと一緒に凄いクラシックと呼ばれるような曲を作りたいなっていうのがあったので、僕が先にこれを言うって決めて、それをお伝えして。 

ーー多少リリックを先に書いてって感じですかね。  

ZORN:リリックというかトピックですね。それをお伝えしたら「キーボーディストと一緒に(メインのリフは鍵盤を弾いて)作ります」みたいに言ってくれて。そしたらめっちゃヤバいのが来て、ラップ乗せて返してみたいなのを何往復か繰り返してできました。子供がいる人とかに普通に聴いてもらって、いいなって思ってもらえればそれでいいですね。

ーー昭和レコードに入ってリスナーに向けて曲を書くことを意識するようになったと以前おっしゃっていたと思うんですが。  

ZORN:そうですね。人のことはより強く考えますね。ただ、作っている時点では凄い限定した人に向けてるんですよ。例えば子供がいる人みたいな。でも『My Life』もそうなんですけど、そうじゃない人もいいって言ってくれるから、そこが不思議というか。今っぽい格好してる10代の人たちが、凄いいいって言ってライブに来てくれたりっていうのが不思議でもあり嬉しくもありって感じですね。  

ーー娘さんたちはお父さんがラッパーってことは認識してるんですか? 


ZORN:はい。してますよ。 

ーー一緒に曲を聴いたりもするんですか? 

ZORN:聴きますね。わかりやすいフレーズとかがないとあんまり口ずさんだりしてくれないっすけど、たまにライブにも来るんでわかってますね。フリースタイルも一緒にやるんで

ーーそれはやばいですね。完全にサラブレッドじゃないですか。

ZORN:普通にDJ Premierとかかけてやります。できるからって言ってやらせてみたら結構楽しんで「ラップやろうよ」みたいな言ってきますね。上も下の子も。

ーー『Letter』はまだ聴かせてないんですか? 

ZORN:聴かせてないです。僕が本当の父親じゃないっていうか、血が繋がってないってことは二人とも知ってるんで、いつ聴かれてもいいっていうのもあるんですけど。

ーー凄いですね。  

ZORN:まあ、まだ小さいですからちゃんと曲を理解できるかはわからないですけどね。

ーー他の曲についても聞いていければと思うんですが、一曲目『Life Size』は狭いテーマに反して壮大な雰囲気のトラックっていうギャップがおもしろいなって。そして一曲目からパンチラインだらけですよね。その中でも“アナ雪の下着をたたむ”っていうラインはキラーワードだなと。

ZORN:(笑)。そういうことラップに入れてる人はいないと思うし。 

ーー“洗濯物干すのもヒップホップ”から、さらに踏み込んだ流れなのかなと(笑)  

ZORN:それを畳んでるっていう(笑)。意図してなかったけどそうかもしれないですね。滲みすぎちゃってて。洗濯物干したりするっていうことが。  

ーー他にも“休みの日ママチャリで娘たちを送る”とか“スーパーに野菜買いに行ったら高かった”とか“お風呂掃除、玄関掃除”って、同じ父親としてこんな完璧な父親って本当にいるのかって思いましたよ。 

ZORN:本当ですか!? 全然普通にやってるって感じですけどね。 

ーー洗濯物とかは嫁がやるもんでしょみたいな…。  

ZORN:やらないとね、立場っていうのが狭くなってくるんで家の中での。  

ーー実はフィクションを少しは混ぜてるんじゃないのかなって思ったんですけど(笑) 

ZORN:やってますね(笑) 

ーーリアリティーではなくリアル? 

ZORN:リアルです(笑)  

ーーですよね(笑)。着色なく今の自分の生活全般を歌っていると。

ZORN:そうですね。日常的なものでパンチラインを作っていくのは楽しいし、トピックというか世界観を縮めてはいるけど自分の独壇場な気がしているというか。

ーー決して派手ではない普通の日々をサイクルしている人が圧倒的に多いですしね。

ZORN:そうですね。毎日同じことの繰り返しでって自分も思ってるけど、そこに価値とか幸せを見出して肯定していったほうが早いっていうか。

ーー確かに今作は全体を終止ポジティブなトーンで通していますもんね。ただ、それでいうと2曲目の『マイペース』だけベースが効いた異質な感じですよね。 

ZORN:これは単純にトラックがカッコイイとまず思って。僕の中でこれは強い口調でいってる方で。 

ーー自らのスタンス証明、セルフポースティングものですもんね。

ZORN:はい。あえてやるならっていう位置付けというか、あってもいいかなと。

ーーなるほど。ちなみに制作期間はどのくらいで作られたんですか?  

ZORN:9ヶ月か、10ヶ月ぐらいだと思います。一曲、二曲できたらスタジオ行って録ってって感じで。

ーー普段からスタジオにはコンスタントに入って録ったりしてるんですか? 

ZORN:できなかったら2週間とか3週間とか行かないですね。そこを決めないっていうのが僕の中で凄い大事で。曲ができなかったら行かない。曲ができて行く。それを許してくれる昭和レコードの環境も良いっていうか。ホントにいつまでみたいな締め切りとかもないんで。  

ーー良いものができるまで待ってくれるみたいな。

ZORN:っていうことさえも言われないぐらい、好きにやらせてもらってますね。 

ーーいい環境ですね。アートワークについてもお聞きしたいんですが。 

ZORN:あれはポラロイドカメラで撮ってるんですけど家の近所のスーパーですね。飛沫(シブキ)っていう僕の友達のカメラマンで『My Life』のMVとか今作のMVも全部そうで、これからずっと一緒にやっていきたいなって。

ーーリリックでも言われてる、広く浅い付き合いより、狭く深くというか近い人と作品を作り上げていくってことですね。 

ZORN:近くにあるもので作るのは楽しいです。

ーーそっちのほうが、自分の伝えたいことが明確に伝わるっていうこともあるんじゃないですか? ZORN:そうですね。なんでそうしてるのかって聞かれたらあれですけど、なんかそうなんですよね。 

ーー素顔に迫ったオフショットが収録されているという特典では、そんな普段の生活が見れる感じですかね。 

ZORN:割とライブのステージ裏とかそういうのなんで、僕がアナ雪の下着を畳んでるところとかは入ってないです(笑)。  

ーー入ってないですか(笑)。あと特に気になった曲として『雨ニモマケズ』があるんですが、これは曲名の通り宮沢賢治の詩のリミックスと言ってもいい曲ですよね。  

ZORN:そのままフックにしてますからね。 

ーー1stアルバムの『心象スケッチ』っていうタイトルも宮沢賢治から引用したものですよね。やはり宮沢賢治からの影響は大きいんですか?

ZORN:そうですね、好きで。『雨ニモマケズ』で言ってることを僕なりに言い換えようと思ってたんですけど凄い難しくなっちゃったんですよね。だからそのまま言おうと。

ーー1stの時から好きだったということは、10代の頃から読んで影響を受けてたりとか?

ZORN:昔、国語の教科書とかで「注文の多い料理店」とか「銀河鉄道の夜」読みましたね。

ーー学校とか行っても全く教科書とか読んでなかったイメージがあったんで意外ですね。 

 

ZORN:そうですね。その果てで少年院とかそういう施設に入ると、読書っていうものが非常に心の拠り所になるというか。宮沢賢治の詩集とかもあったりして、読んでいいなって思ったりとか。

ーー今作の出来上がりを自身としてどう見ていますか? 

ZORN:納得はしてますね。満足はできないですけど。これ以上もこれ以下もないっていうか。

ーー今までの作品も基本的にはそういう感じなんですか?  

ZORN:今までは作り方がバラバラだった気がしますね。でも今回は徹底してたというか一貫してましたね、何もかもが。 

ーー当初決めていた着地点に計画通りに着地できたという。 

ZORN:そうですね。絶対にブレないっていうのだけ強く決めて。だから今の僕とリンクしない不穏なトラップとか、ノリがいいトラックは避けましたね

ーーマイク一本で家族を養うみたいなことは考えたりしないんですか? 昭和レコードの他のメンバーはそうだろうし、できないことはないと思うんですが。  

ZORN:僕は普通に仕事しながら音楽をやりたいですね。その方が生活も安定するし。それに家を建てて、あと34年のローンがあるんで。  

ーー“新築の広いリビング”ってリリックにもありましたもんね。それにしても34年のローンは長いですね。 

ZORN:そうなんですよ。普通に仕事しながらラップもやって安定して平穏に暮らして。それでラップも成功したらかっこいいかなって。よく言ってるんですけど武道館とかでライブできるようになっても次の日現場に行きたいというか。それぐらい軽くやりたいというか。今の生活を崩さずにどこまでいけるかって。どちらか選択が迫られる時が来るとしたら、それはその時考えようかなと。 

ーーただ、今は今で幸せだし、このまま続けれることをやっていきたいっていう。 

ZORN:そうです。 

ーーちなみに今後の予定はどんな感じですか? 

ZORN:ワンマンライブを12月に。 

ーーあのワンマンライブのフライヤーは娘さんが書いたんですか? 

ZORN:いや。あれは僕が(笑)。  

ーーマジですか!? わざと子供が書いた風にしたってことですか? 

ZORN:いや、娘が書いたんでしょって言われるんですけど、全然意図せず。保育園の先生が描くマインドで書きました。 

ーー半端ないっすね(笑)。それ今日一番びっくりしたかもしれないです。これ載せてもいいんですか? 

ZORN:全然いいですよ。結構みんな僕が書いたって思ってないですから(笑)。  

ーーそりゃ思わないと思いますよ(笑)


                            インタビュー・テキスト:YAMINONI

                                      写真:大野隼男

TITLE : 生活日和 (セイカツビヨリ) 

LABEL : 昭和レコード 

 ●通常盤CD 税抜価格 : 2,315円 

 ●完全生産限定盤CD+DVD("生活日和"的映像収録) 税抜価格 : 3,241円  

CD収録曲 

01. Life Size [Track by Estra] 

02. マイペース [Track by Estra] 

03. DIY [Track by dubby bunny] 

04. Brand New Day [Track by DJ OKAWARI] 

05. コインランドリー(Interlude) [Track by dubby bunny] 

06. 夕方ノスタルジー feat. WEEDY [Track by dubby bunny] 

07. スイミー [Track by A-KAY] 

08. ワンシーン [Track by Yakkle] 

09. グッナイ(Interlude) [Track by OMSB] 

10. 雨ニモマケズ [Track by OMSB] 

11. シャウエッセン [Track by A-KAY] 

12. Letter [Track by EVISBEATS] 

 初回店頭特典: 未発表曲「どうでもいい」収録のシングルCD。

 ※注意 : 特典付与店舗に関しましては無くなり次第終了致します。


12月18日 ZORNワンマンライブ 「おゆうぎかい」 】

OPEN/START 17:00 / 18:00

 ADV./DOOR 

前     売 ¥3,800(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング) 

おみやげ付前売 ¥4,800(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング) 

※おみやげ付前売は限定数に達し次第、締め切ります。

LINE UP:ZORNとDJ TATSUKIとゆかいななかまたち 

TICKET 一般発売: 10/26(水) チケットぴあ[P:312-916] / ローソンチケット[L:73890] / e+ INFORMATION  WWW X 03-5458-7688


ZORN / 夕方ノスタルジー feat.WEEDY

ZORN / 葛飾ラップソディー feat.WEEDY


LostFace (feat. ZORN & ZEUS)でも、やっぱ / Dream Stalker(feat. SMITH-CN)

ZORN / Reverse

続きを見る

0コメント

  • 1000 / 1000