機動隊員が沖縄で「土人」発言 沖縄が差別され続ける歴史的な背景とは?

沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設現場で、1人の機動隊員が建設反対派住民に対して発した「土人」という言葉が波紋を呼んでいる。土人(どじん)とは、その土地に生まれ住む人や、未開の土着人という意味の言葉であり、差別的な意味合いを持つこともある。そのため、テレビ放送はもちろん、一般社会でも使われない言葉である。

高江では、米軍ヘリパッドの建設に反対する住民らが建設資材を運ぶ車両を止めるため、連日、座り込みを続けている。国は警備のため、全国からおよそ500人の機動隊を投入。反対派と機動隊との小競り合いが相次いでいた。

そんななか18日、大阪府警から派遣された20代の機動隊員が「触るなクソ!触るなコラ!どこつかんどんじゃこのボケ!土人が!触るな、こら。」と言い放ったのだ。

この模様を撮影した動画がネット上にアップされると大拡散された。翁長(おなが)知事は「そのような発言は一県民としても沖縄県知事としても言語道断であり到底許されるものでなく、強い憤りを感じております」と怒りをあらわにし、また菅官房長官も「(発言は)許すまじき事」「警察庁においてしっかり対応する」とコメント。一方、大阪府警を所轄する松井知事は、会見でこう語った。

「確かに言ったことは悪い、反省すべき。でも、現場において、相手からもさんざん言われる中で職務しているわけで、売り言葉に買い言葉で言ってしまうのでしょう。現地の状況の中では、ついつい、口がすべると。」

「反対派の行動も過激だった」と、機動隊員を擁護するかの発言。しかし会見後、「沖縄県民の方々を傷つけてしまったことについては、誠に遺憾なこと」とのコメントを出した。

若い機動隊員はなぜ差別的意味合いの言葉を使ったのか。AbemaTV『AbemaPrime』では、差別やヘイトスピーチ、沖縄取材の経験も豊富で、現地にいるジャーナリストの安田浩一氏に中継にて話を聞いた。

――今回の発言について、どのようにお考えですか?

安田氏「明確に差別発言だと思っています。どんな文脈でこれまで使われてきたのか、歴史的背景を考えれば、とても口にできる言葉ではない。沖縄ではそうした言葉をぶつけられてきた経緯があるんです。」

安田氏が指摘する歴史的経緯とは、1903年、大阪で政府主催の内国勧業博覧会が開催されたとき、会場の近くに建てられた「学術人類館」というパビリオンのこと。そこでは、「学術研究資料」の名目で、沖縄のほか、北海道のアイヌの人、朝鮮の人、台湾の先住民など、およそ20の民族を「見せ物」として展示。しかもここで展示されたのは、人形ではなく、本物の人間。「琉球の貴婦人」と銘打たれた沖縄からは、2人の女性が連れてこられたうえ、陳列品のように扱われた。このとき沖縄は差別的な展示だと激しく非難し抗議。2人の女性は沖縄へ帰ることになった。

――当時どうしてこんな展示を企画したのでしょうか?

安田氏「そもそも19世紀末に、琉球が強制的に日本に組み入れられたって言う経緯があるんです。つまり日本から低く見られていた、見下されていた部分があったんです。そういったことから琉球人“見世物”としてみせるということが、本土の人にあったんだと思います。

パビリオンを作る説明書をみると、(沖縄の人たちを)本土に住んでいる人たちとは違う、 “未開の民族”として捉えている。そうした感覚が、今でも連綿と続いているんじゃないかと思いますね。」

――今回の機動隊員には沖縄の人に対する差別感情が下地にあったということになるが、現代の若者が人類館事件を知っていたとも考えにくい。これについては?

安田氏「確かに個人が人類館事件を知っていたとはとても思えません。こうした歴史的経緯があって、日本社会のなかに沖縄に対する差別と偏見が根付いていたと思うのです。例えば、この機動隊員が東京都民、大阪府民に対して『土人』という言葉は使わなかったんじゃないかと思います。

人類館事件から連綿と引き継いできた沖縄に対する差別と偏見、蔑視というものが、ネットを通じて、あるいは大人たちの口から発せられてきていて、沖縄を蔑む視点、視線みたいなものが日本社会の一部にあるのではないか、そうした空気が確実に流れているのではないかと思います。」

日本人が今、沖縄を“下”にみたりするような感情があるということについては、番組メインキャスターの小松靖やレギュラーの石井てる美らが疑問を呈するが、安田氏はこう反論する。

安田氏「2013年に、現在の翁長知事、当時は那覇市長だったんですが、オスプレイ反対のデモ行進を東京でやったとき、沿道に在特会の人たちなどがきて、日本から出て行け、売国奴、半日といった言葉をぶつけました。これは本土の人は殆ど知らないけれども、沖縄では大きなニュースになりました。

今でも在日米軍の専用施設の74%が沖縄に集中しています。現実に沖縄の人々はシンプルな問いかけをしているのです。沖縄に基地が多すぎませんか、と。でも、みんな無関心です。沖縄の海、音楽を好きな人はいくらでもいるけれども、沖縄が置かれている現状にはほとんど関心を示さない人のほうが多い。そういったことに対する苛立ちは沖縄にはあると思いますね。」

――警察官が差別的発言を言う状況になってしまった経緯は?

安田氏「地元の人が感情的になるのは無理もない。ただ口喧嘩であれば、『下劣だよね』で済むわけです。差別やヘイトスピーチっていうのは、非対称的な関係、絶対的に乗り越えることのできない不平等、不均衡な関係のなかでこそ生まれてくるのです。」

――反対派住民のために、機動隊まで集めなくてはいけなかった理由は?

安田氏「市民運動や社会運動を敵視することによって、警察が成り立っている場合があるわけです。単なる警備、安全誘導だけでなく、明らかに弾圧するためにいる、ということは間違いなくある。」

番組レギュラーで東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏は、「メディアの役割って重要だなと思うのが、こういうことが起きているという事実を伝えていくということ。どれだけ多くの人が関心を持つかということが問われているんだなと感じました」とコメント。また経済評論家の川口一晃氏は「教育だと思います。しっかりとした教育。沖縄でどんな仕事をするのかわかったら、沖縄でどんなことがあったのかを学んでいくべきだし、小さい頃からもっともっとそういう教育をすれば、こういった差別的発言は減っていくのだと思います」と意見を述べた。

MCの池澤あやかは、自身と同世代と思われる若者がそういう発言をしたことにショックを隠しきれない様子をみせながら、「そもそも感情的になって住民の方にあたることをしなければ、そういうこともなくなるのではないかなと思います」とコメント。機動隊員の一言から、様々な年代や立場の人間が考えさせられる事件となってしまった。

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