行定勲監督、熊本地震後の映画続編製作へ 「未来への布石、出発点となる『今』の熊本は撮る」

熊本地震から半年が経過。熊本県では、住宅や道路など被害総額をおよそ3兆8000億円と試算。解体が必要な家屋は2万8000棟にものぼる。被災者の生活再建にはまだまだ大きな課題が残る中、地震直後からボランティア活動などにも取り組んでいる熊本県出身の映画監督、行定勲(ゆきさだ・いさお)氏が14日、熊本県が舞台となった短編映画「うつくしいひと」の続編の制作を発表した。

熊本にゆかりのある俳優陣を集め撮影された映画「うつくしいひと」は、熊本にロケハンに訪れた映画監督が若い女性と出会い小さな旅に出るストーリー。阿蘇山麓の草千里、熊本城や菊池渓谷などを舞台に撮影され、熊本の美しい風景や情緒、そして地元の人々の穏やかさなどを映した作品だ。

本震があった4月16日、行定監督は新作映画のため、熊本市内のホテルに宿泊していたという。その後、全国100カ所以上で映画「うつくしいひと」のチャリティー上映会などを開催。募金活動も精力的に行った。そこには、行定監督のある思いがあった。

行定監督「震災の時に、ある高齢の女性から『映画を作ってくれてありがとう』って。『私が生きているうちには、きっともう元通りの熊本城は見れんけん。美しい城を撮ってくれてありがとう』って言われたんですね。この時、映画の力を知った思いでした。」

この映画「うつくしいひと」の第2弾「続うつくしいひと」の制作にあたり、行定監督は「復興の途上を見て、熊本にふれてもらい距離を縮めたい」という。準備はすでに始まっており、監督ら制作スタッフは14日、舞台の候補となっている益城町(ましきまち)を下見した。

■「ありのままの今の熊本の風景を撮らないと、現状が見えない」

行定監督を制作に駆り立てたのは、予想以上に進む人々の記憶の風化と、進まない復興についての認知度の低さ。そんな思いから、どんなアングルなら「今」が最も伝わるのか…様々な角度から見直し、吟味を重ねていたとのこと。

大切にしている事のひとつに地元のひとたちの「ことば」がある。それを登場する俳優たちが演じ人々の思いを伝える。撮影は来月から始まり、来年早々にも完成する予定だ。

14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』には、Skype中継にて行定監督が出演。故郷・熊本、そして映画にかける想いを語った。

——地震から半年。熊本の現状について、どう思われますか?

行定監督「地震が随分昔のことのように思える半年でしたね。『うつくしいひと』はちょうど一年前に撮影して、完成お披露目というタイミングで地震が起こって。義援金をたくさん出していただくという状態が続いた。この半年間、濃密な時間を過ごさせていただいたと思っています」

——映画が、どのような影響を与えると思いますか?

行定監督「前回、震災が起こるとは到底思っていない状態で、熊本の美しい姿を純粋に撮りました。熊本県以外の人に見てもらって、熊本県に興味をもってもらおうという目的だったのですけれど、地震が起こって、熊本県の人が傷ついてしまって、落ち込む状態だったのです。でも、失われてしまいそうな記憶や思い出が映画によって繋ぎ止められたと。そういう力が映画にはあるんだということを、お客さんの反応を見て思い知らされることが多かったですね」

——「うつくしいひと」は、監督のこれまでの作品とは、角度がちがうものでしょうか?

行定監督「そうですね。これを撮影したことで、映画のポジションというか見えかたが変わってきたんですね。今度は地震が起こったあとの半年後の熊本が舞台。そこに生きている人たち、復興に前向きな人、逆に絶望を感じている人、そういう人たちの姿をフィクションを通じて…本音の部分も含めて、ドキュメンタリーとは違う、セリフに書き込んで見せる映画になると思うので」

——なぜ「続編」をつくろうと思ったのでしょうか。

行定監督「阿蘇大橋が崩落しました。僕の実家は南阿蘇にあって、阿蘇大橋は何度も渡っている橋。地震が起こった2ヶ月後くらいに行ってみたら、地形がかわっていて、橋はもちろんない。風景も変わっている。

今の熊本は、震災があって、傷ついてはいるんだけれども、新しいスタートを切っている。その風景を風化させちゃいけないと思いました。未来の人たちが見返したときに、“ここから始まったんだな”という、県民のみなさんにエールを送る気持ちで撮りたいなと思っています」

——蒲島県知事と面会されたそうですが、いかがでしたか?

行定監督「県知事も、すごく前向きで、最初の作品がすごく『うつくしい』熊本。次は『一番傷ついている』熊本。ということは(その先は)“未来”があるということ。知事は「創造的復興」という言葉をよく言われます。ただ元に戻す、復旧するのではなく、その先があるのだと。

熊本の人たちは気質上、非常に頑張ります。頑張って大丈夫だっていう感じで動くから、それが伝わると、もう復興してるんじゃないのって思われてしまいがちだけど、内情はそうではないですよね。例えば益城町で、老人に話を聞いたとき、長年住んだ家が全壊して、余生をどこで過ごすんだと思うと不安な気持ちですよね。でも、それでも熊本で生きていくんだという力強さを描いて欲しいと。今、僕は、熊本の人たちっていうのは、普通の日常を取り戻すのがとても大変で、こんなに大切なんだということをすごく知っている人たちだと思うんですよ。絆が生まれるんですよね。そういうものが映画に映ると嬉しいなとおっしゃっていました。

ドキュメンタリーで、状況に寄り添っていくということは、今までにもあった。僕はフィクションの映画監督ですから、寄り添っていきながらフィクションを作りつづけるのも面白いだろうなと。未来への布石、出発点となる「今」の熊本は撮っておかなくちゃと思いました。」

映画「続うつくしいひと」のストーリーは、高良健吾が演じる探偵が、人探しをしている人たちを助けることによって、被災地・熊本の今の状況が浮き彫りになっていくという物語だ。

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