ノーベル平和賞の設立背景に女性の影? 専門家が解説する平和賞の意義とは

今年のノーベル平和賞は、コロンビアのサントス大統領が選ばれた。サントス大統領は、2010年に大統領に就任し、現在2期目。長年、コロンビアでは反政府の左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」との武装闘争が続いており、これまでに少なくとも22万人の命が奪われたと言われている。サントス大統領は今年8月、この内戦に終止符を打つ和平合意をまとめ、9月に調印式が行われた。

ノーベル委員会は、50年以上続いた内戦を終わらせようとした断固たる努力を評価すると受賞理由を説明。しかし、サントス大統領がようやく取りまとめた和平合意は、実は今月2日に行われた国民投票で反対50.2%と僅差で否決されている。平和が実現したと思われたが、反対が上回った国民の意思としては、「ゲリラ側により過ぎた和平ではないか」という思いが理由としてあると考えられている。コロンビアの和平への実現は、いまだ不透明なままなのだ。

■何故、サントス大統領が「ノーベル平和賞」を受賞したのか

AbemaTV『AbemaPrime』では、東海大学文学部准教授でノーベル賞をめぐる政治的背景などを研究している羽生浩一氏を招き、話を聞いた。

――今年のノーベル平和賞について。このタイミングでの受賞についてどう思いますか?

羽生)ノーベル平和賞受賞は、世界的なニュースになります。今回、(コロンビアが)国民投票に向けた動き、当然これは(ノーベル平和賞委員会でも)“読めた”と思うんです。

(実際に)和平にいくかわからないけれど、52年間も安定しない状況が続いていたなか、ようやく交渉ができる“同じテーブル”についたと。ようやく、お互い向き合ったんだから、国際社会が支えなくてはいけない。そもそも(委員会の考えとして)ノーベル平和賞は「すでに平和ですよ」という状況であげるものではない。国際社会から注目してもらって、今あそこにあげたから、そこがどうなっていくのか見守っていきましょうという意味合いと、(サントス)大統領、ちゃんとやってくれよというメッセージだと思います。

■何故、ノーベル平和賞だけ「ノルウェー」の委員会が選考しているのか

――ノーベル賞は、物理学賞、化学賞、経済学賞をスウェーデンの王立科学アカデミー、文学賞をスウェーデンアカデミー、医学・生理学賞を、カロリンスカ研究所という、こちらもスウェーデンの機関が選考している。一方で平和賞だけ、ノルウェーのノーベル賞委員会の選考だ。

羽生)歴史的な理由がひとつあります。ノルウェーは独立国ですが、4、500年くらいずっとデンマークの属国だったんです。そこからスウェーデンに変わる。そのあとしばらくスウェーデンの支配が続いたのですが、民族主義っていうものが台頭してくる。そのなかでノルウェーはもっと自治するんだという機運が高まってきたときに(賞を設立した)アルフレッド・ノーベルに非常に近い女性がいたのです。もともと彼の家政婦さんで、ジャーナリストで平和活動家としても活動していた。(その女性の影響もあって)ノーベルが今の価値で500億以上の遺産で賞を作ってくれというときに、平和賞については、これからはいがみ合わずにということで、スウェーデンがノルウェーの国会に委託しているんです。

――ノーベル平和賞の希望と、今後の課題は?

羽生)「ノーベル平和賞」が生まれた背景に、当時のヨーロッパの民族主義、民主主義の台頭というものがあります。そしていま、民主主義自体が世界で問われている時代。「ノーベル平和賞」もこれからどういう意味をもちうるのかということを考えたとき、「ノーベル平和賞」はすごい発信力をもっていて、これと同じ価値をもつものはない。ある種、平和のかがり火として、いつもそこにブレずにあって欲しいと思いますね。

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