苦手な人たちとテレビの話 #2稲森いずみ似の恋愛マスター

インタビュー・テキスト:武田砂鉄

写真:長谷英史


 そこかしこで見かける中途半端な自信家に困らされることが多い。なぜって、自分の不安を埋めるように、人に尋ねまくることで自分の自信を高めようとするから。それって、自分に自信のない人よりも、よっぽど自信がないようにも思える。でも、AbemaTVの李孔美さんはそういう半端とは無縁。自信にみなぎっている。こちらがどう思っているかなんて関係ない。「テレビの話」というか、「戦略の話」を聞き続けた気もするけれど、テレビを含めたメディアを達観した上での彼女の戦略はどこまでも野心的だ。


 冒頭にも説明したとおり、今回登場するサイバーエージェント女子は李孔美さん(31)。インターネット広告事業本部にて広告営業を経験し、Amebaにて新規事業プロデューサーに。その後は社長室にて投資事業プリンシパル(藤田ファンド)を担当。現在はAbemaTVにて編成プロデューサーとして活躍しながらも『おしえて!バズポリス~リターンズ』(平日18時15分〜18時30分)に出演中。社内外で「恋愛キャラ」として売り出し中で、anan総研メンバーとして「男をオトス会話術」を連載。似ていると言われる芸能人は、稲森いずみ、新山千春、小雪、アジエンスのCMのシルエット。好きなテレビ番組は『アメトーーク!』『アウトデラックス』『金曜ロンドンハーツ』『しくじり先生』など。


もともと幼稚園の時に二股してたので

――AbemaTVの『おしえて!バズポリス~リターンズ』に出演されていますね。


 はい。(『おしえて!バズポリス』は)今年4月に始まって一度休止して最近復活したんですが、最初は5人だったのが倍の10人になったこともあり、レギュラー争いが熾烈なんです。


――そこからどんどん蹴落としていこうと。


 そうですね。体張らなきゃなと思って、「トランポリンでダイエット企画」とか自分から提案してみたのですが、「汗かくキャラじゃないでしょ」って却下されました。


――10人から5人に絞られていくかもしれない中で、生存戦略というか、こういう部分を突き詰めていこうって戦略は持っているんですか。


 既に「恋愛キャラ」が明確なので、そこで数字を取ればおそらく大丈夫かなって。


――恋愛キャラ、いつ頃からお持ちに?


 もともと幼稚園の時に二股してたので。その頃から片鱗はありましたね。


――あらま、幼稚園の頃から。


 初恋が二股なんです。ケンくんっていうイケメンが好きだったんです。ただ、クボくんが私のことを好きで。


――クボくんはそんなにイケメンじゃなかった。


 いや、イケメンなんです。東幹久さん風。


――東幹久風幼稚園児。


 こうなると2人からは選べないので、もう2人と仲良くしよう、って。2人と一緒に手をつないで帰っていました。


――その2人の男たちは、李さんを独占したいという気持ちは持たなかったんですかね。


 彼らはピュアなので。


――私はピュアじゃない?


 はい、ピュアじゃない。なぜ1人に選ばなきゃいけないんだっていうのは、その頃から抱えている永遠のテーマです。

――昨今の芸能界を見ていますと、清く正しい男女交際が求められていますね。1人に選ばなきゃいけない。違和感を覚えますか。


 不倫騒動については持論があるんです。最初は、「叩くほうが気持ち悪い」と思っていたのですが、ただ叩くほうも叩くほうで大義名分がある。自分の旦那さんがベッキーみたいな女性と不倫をしたらすごく嫌なんですね。つまり、自分と重ね合わせて怒っている。そこから分かったのは「意外と妻って旦那を愛してるんだな」ということ。自分に置き換えるからこそ、あれだけ怒るわけですよね。旦那を愛しているからこそ、これだけ何度も炎上してるのかなという仮説を立てました。


—―例えばフランスのサルコジ前大統領なんかは平気で不倫するし、その事について国民がキレるわけでもない。でもこの前の宮崎謙介議員がそうだったように、日本では不倫がその人全体の評価にのしかかってきますね。


 キャラにもよりますね。以前、とある不倫キャラの芸能人とご飯を食べたんですけど、「俺はそういうキャラ付けができてるから、最悪、バレても大丈夫」みたいなことを言ってて、確かにそうだなと思ったんですよね。


――そんなに都合良くキャラって作れませんよね。


 いや、意外とそうじゃないと思っています。私、半年でキャラ変できると思います。


Wikipediaに載っていない人しかいない合コンには行かない

――こちらがどうやってキャラクターを変更しても、基本的に世の中って、まだまだおじさんが最後にハンコを押しますよね。物事を決める「ハンコ押す系おじさん」からプレッシャーを受けることってないんですか。


李 そういうおじさんにむしろ好かれるんですよね。


――何かテクニックが?


 あります。おじさんの中でも2パターンあって、イケてるおじさんと、イケてないおじさんがいるんですよ。


—―元も子もない区分けですね。


李 イケてないおじさんは、いずれ勝手に消えていくので、相手にしません。


—―イケてないという判断にもうちょっと輪郭を持たせてもらってもいいですか。後学のために。


 Wikipediaに載ってるか、載ってないかっていうのが、一番分かりやすいですね。私、Wikipediaに載っていない人しかいない合コンには行かないんです。やっぱり載ってないと、最初のエンジンかかる時間が遅いんですよね。Wikipediaに載ってる方って、俺のこと知ってるでしょうみたいな感じなので最初から面白い。これを基準すると合コンで失敗しませんね。基本的につまらない人とは会わなくなりました。


—―でも、Wikipediaって自分でも作れるみたいですけどね。イケてるおじさんと、イケてないおじさんを2つに区分けをしたとして、イケてるとされるおじさんが全員イケてるわけじゃないですよね。そこから更に分類していくわけですか。


 イケてるおじさんって、はっきりモノを言われるのを喜びます。普段は必要以上に持ち上げられているからです。顔が笑ってないのに、無理やり笑ってくれるみたいな。だからこそ、私はとにかく厳しく突っ込んでいきます。私みたいな若い女の子が毒を入れると、すごい喜ぶんですよ。


—―「そのネクタイの柄、変ですよ!」とか。


 そうです。「ださっ」とかよく言います。ちょうど昨日の某社長がそうでした。これまで色々とPDCA(Plan[計画]/Do[実行]/Check[評価]/Act[改善])を回してきたんですよ。こういう人相の人にはこういう態度をとったら、どういう感情を持たれるだろうかとか、繰り返し実証してきたんです。


—―そのデータは、エクセルか何かにまとまっているんですか。


 頭の中にあります。アルゴリズムをまとめてあります。大体、顔に出ますね。性格というか、考えてることが似てるんですよね。

—―『バズポリス』でも今回のインタビューもそうですが、ご自分で蓄積してきた経験や情報を外に出しているわけですね。そうすると今度会う人は、それを見た上で作戦を練って、あの人に接する時にはこうふうにしようと頭に入れた上で目の前に現れます。作戦を開示しすぎなのでは?


李 いや、全く。そんなに見られてないだろうなって思っています。よほど私のことが大好きすぎない限りはそんなに研究されていないだろうって。他人に対してもそうじゃないですか。よほど好きでも一言一句覚えてないし、何となくしか覚えてないものです。『アメトーーク!』ってすごく好きな番組なんですけど、じゃあ翌日にどこか面白かったかなんて、1個ぐらいしか覚えてない。人の脳って、そんなものなので。


—―誰かに対するイメージも、それぐらいのものでしかないのだと。


 そうです。だからこそ、こういう自由なキャラになれたんです。会社に入った当初、そんなに遊んでなかったのに、めっちゃ遊んでるみたいなキャラ付けされて、でも彼氏ができた途端、真面目キャラになった。人の印象ってこんなもんなんだと思ったんですよ。他人の人生である私のことなんて、たかが1分しか考えないはずなのに、その意見に影響されて自分を変えてしまうのなんてどうなんだろうと思ったので、だったら他人にどんな悪口を言われてもいいから自分の好きなように生きようと思いましたね。


—―誰かに何か言われて、ショックを受けるとか、引きずることってないんですか。


 基本的にないですね。人並みに傷付きはするんですけど、寝たら忘れます。言われたことに対しては「何でそう思うんですか」と聞くようにします。その代わり、私も言いますけどね。じゃあ、言わせてもらいます、って。

—―この間、宇多田ヒカルさんが「私が人生のパートナーに求めるものランキングの最下位:経済力」とツイートして話題になりました。その質問をされたら何て答えます?


 最下位は分かりませんが、最上位は器の大きさです。


—―器の大きさとは。


 何をしても怒らない。


—―人は本心を隠しますよね。ここにいる編集者が李さんをどう思ってるかなんて分からないし、僕が、今何を思ってるかも分からないはずです。相手がどう思うかは気になりますか。


 気にならないですね。でも、大体好かれてるだろうなと思ってます。


—―なぜそんなにポジティブなのでしょう。


 なんでだろう。人を初対面でめっちゃ嫌うってなかなかないし、かつ、私は人とちょっと違うエピソードをいくつか持ってたりするので、最終的に「何だこいつ面白い」になる自信があるんですよ。めっちゃ好きか、めっちゃ嫌いかを分類するのは、そのあと。初対面の時点はそんなにビクビクしないですね。


真剣佑さんの目、今田耕司さんの唇、松本人志さんの頭脳

—―似ていると言われてきた芸能人は稲森いずみだそうですね。『ビーチボーイズ』の頃でしょうか。「誰に似てる?」って聞かれることも多いでしょうが、どう答えるのがベストなんでしょうか。


李 「いやいや、他には?」ってならないように、最初から一番いい人を出すようにしています。落とす時は、『アジエンス』のCMと言って、笑いを取ります。長い髪の女性の後ろ姿が似ているんです。最近の課題は、自分を落とせないことなんですよ。この前、心理学者が言ってたのが、「心に余裕がないから、自分のことを落とせないんだよ」と。


—―落とせるのは落とせるだけの余裕があるからだと。余裕がないんですか。


 こういう時にネガティブなことを言って自分を落として、誰かから褒められるのを待つってのが、日本人のスタイルじゃないですか。


—―下手に出ることで、周りに乗せてもらう。


 そう。あれがとにかく昔から好きになれないんです。例えば「もう若くないんで」って言葉、大嫌いです。自分では絶対に言うまいと決めています。人を不快にさせない自分の落とし方ってどういうものがあるのか研究しています。高校生の時から脳科学に興味があって、その頃「男と女は脳が違う」という内容の本を読み、それまでの発想が覆されたんです。そもそも構造が違うんだからしょうがないって割り切れたんです。


—―じゃあ、今だと『ホンマでっか!?TV』なんて、お好きなのでは。


 めっちゃ見てます。


—―自分はああいう番組で示される傾向って全く信じないんです。何もかも性差で分けたり、4種類の血液型や12種類の星座で分けること自体に意味があるとは思わなくて。


 私は信じます。これだけ長い期間、いろんな人が唱えてる説って、そりゃ信ぴょう性あるなって思います。

—―好きな芸能人は真剣佑さんだそうですね。彼のどこがいいんですか。


 目。


—―「おまえ、いい目してるね」って、誰にとっても褒め言葉だと思うんですけど、いい目って何なんでしょう。


李 ちょっと廃れてる目をしながらも、将来、僕はこうなりたい、という希望の目も持っている。その2つが常に同居しているのを見て、魅力的だと感じたんです。目、大事ですよね。でも本当は唇フェチなんですけど……情報は目から取る。唇は今田耕司さんが好きです。


—―真剣佑さんの目で、今田耕司さんの唇。あと、松本人志さんが好きと聞きましたが、それは何ですか。


 頭脳。松本さんの頭の回転って、まだ誰も超していないなと思います。そして、人を傷付けて笑いをとらないですよね。みんなをハッピーにする。かつ、「その視点あるよね」と気付かせてくれる。ずっと色褪せないんです。自分がちっちゃい頃から今まで。


—―松本さんって、大勢の中で積極的に笑いますよね。その場で仕切ってる松本さんが笑ってるってことは、これはめっちゃ面白いことなんだろうという空気に包まれる。


 そうですね。松本さんには絶対滑らないっていう安心感がありますし、逆に松本さんも絶対滑らないっていう覚悟がありますよね。先ほども話に出しましたが『アメトーーク!』も好きで、それは共感から入るからなんです。例えば「ガンダム」って括りがあった時に、基礎情報を教えてくれるじゃないですか。知らなくても、あるあるって共感できるように作られている。


共感と逸脱が必要。まずは共感から。

—―今、どんな女優さんでも、「私、実はこう見えて○○なんです」って欠点を出してくることが多いですよね。それに対して周囲が「そんなことないよ」って言う。これがワンセットになっています。そんなことしなくていいのに、って思いませんか。


李 そういうことを一切言わない人のほうが好感持てますよね。後悔しない生き方に見えるし。私、「明日死にますよ」ってなっても、ほぼ後悔しないと思うんですよ。


—―本当ですか。


 将来の保障なんてないので、いつかあれをやろうとか、いつかこうなりたいじゃなく、後悔のない人生を送ることをモットーに生きています。


—―まだこれはできてない、ということはありますか。


 ちっちゃなことになっちゃうんですけど、ドッキリにかけられたいんです。大掛かりなやつ。


—―それはテレビ番組で、ですか。インタビューを受けている今、この床が抜けて下に落っこちる、みたいな。


 そうです、地面が割れる感じですね。落とし穴に引っかかりたいです。


—―なぜドッキリにかかりたいんですか。


 あれ、誰でも面白くできるじゃないですか。リアクションの上手い下手関係なく。


—―唐突ですが、有名になりたいですか。


 なりたいです。


—―有名になるためには、会社員じゃないほうがいいですよね。


 とは限らないと思います。


—―こういう割と派手な会社にいることで、いろんな人脈を得るってことでしょうか。


 そうですね。今後どうなるか分からないですけど。


—―そもそもですが、なぜそんなにご自分に自信があるんですしょうか。


 小学校の頃、体育や勉強で常に1位だったんですけど、1回だけ、2位になったときがあって、そのときにお母さんに人間扱いされなかったんですよ。


—―1位じゃなきゃいけないって考えが、ご自分の軸にあるんですね。


 どこかしらに、どうせやるなら上位という考えはあります。1位じゃなくてもいいんですけど、上位を目指したいというのはありますね。今は何か表現したいなと思っています。『anan総研』で連載持ってるんですけど、何かいろいろなところで連載持ったり、講演会したり、サラリーマンって枠を一旦超えたいなと。


—―恋愛について書く物書きはたくさんいますよね。恋愛セミナーみたいなことをやる人たちもいっぱいいます。ご自分でやるときに、どう超えていこうっていう作戦はあるんですか。


 今、人と視点が斜めすぎて、面白いけど共感が生まれてないって思ってるんです。なので、いったんは共感を生めるようなものにしなきゃなと思います。『アメトーーク!』と一緒で、共感から逸脱です。説得力があるからこそ、逸脱できるんだと思うんですよね。私が得意なのは逸脱のほうだったので、まずは共感からっていうことを考えてますね。

続きを見る

0コメント

  • 1000 / 1000